全国焼き肉繁盛店特集:福岡「大韓苑」
「肉、と聞けば耳が反応する。この仕事の奥深さが楽しくて仕方がない」。若き総料理長・山本栄造さんは、かなりの研究熱心。開店にあたり、いい肉、おいしい肉とは何かを探るために、いくつもの業者を訪ねて回った。「結局、肉の良さはブランドでは語れない。それよりも牛のランクにこだわります」
赤身肉のほとんどは、県内の業者を通して入荷する5Aランクを基準とする和牛肉。
「肉は正直な素材だから、処理や下準備には特に気をつかいます」。ひと手間を惜しまない仕事ぶりで、良質の肉のうまみを丁寧に引き出す。
たれや調味料、キムチもすべて自家製。もみだれ、つけだれ、キムチにコチュジャン…舌に刺激を残すだけの辛さではなく、脂の甘さや上質肉の食感も楽しめるやさしい味付けが、幅広い年齢層にうけている。
店を構えるのは九州の玄関、博多駅の駅ビルの飲食店街。ビジネス街のサラリーマンやOL客にはもちろん、同じ駅ビルに入るゲームセンターやCDショップに立ち寄る一〇~二〇代の若者層に向けたサービスメニューも多種そろえる。
おすすめの「カルビラーメン」(九五〇円)をはじめ、丼や麺メニューの肉も質を落とさない本格派。店の良心を伝える一品一品に、リピーターの数も着実に増えている。
○店舗メモ
◆「大韓苑」(福岡県福岡市博多区博多駅中央街二‐一、福岡交通センタービル八階、092・481・8929)/営業時間=平日・午前11時30分~午後3時、午後5時30分~午後11時(オーダーストップ午後10時30分)、日祝日・午前11時30分~午後3時、午後5時~午後11時(オーダーストップ午後10時30分)/坪数・席数=五〇坪・八〇席
○売れ筋メニューベスト3
〈一位〉カルビ(九五〇円=最高ランクのカルビだからこそ味わえる脂の甘みを堪能したい)
〈二位〉サガリ(一二〇〇円=いわゆるハラミの部分。最高級の和牛のものを使っている)
〈三位〉上ミノ(八〇〇円=皮つきのまま仕入れて店で薄皮まで処理する。鶏肉に近いプリプリとした食感を楽しむ)
○私の愛用食材:韓国の唐辛子
たれはもちろん、コチュジャンなどの調味料もすべて自家製。大韓苑にとって唐辛子は味の要を握る大切な素材のひとつだけに、信頼のおける個人を通して、釜山の市場で種なし、天然干しの上ランクのものを仕入れている。
「韓国産の唐辛子は先に甘みが届き、後から辛さが追いついてくる。それでいて後を引かない辛さなので、次の一口にも手が出しやすいんですね」と総料理長の山本栄造さん。繊細な味覚にこだわる同店らしいこだわりだ。