新店ウォッチング:クラブラークヒルズ花小金井店

2000.11.06 215号 4面

この7月、外食FR最大手の「すかいらーく」が、店内飲食のほかに持ち帰り、宅配、ドライブスルーなどの機能を付け加えた、複合型の最新業態店「クラブラークヒルズ」花小金井店をオープンさせた。

同店は、東京郊外の小金井街道と五日市街道の交差点近く、広大な住宅地を商圏に持つ外食激戦区に位置するガスト店(旧すかいらーく店)を約六〇〇〇万円かけて改装し、同社一号店の開業三〇周年記念日に合わせてオープンしたもので、バイクでのデリバリーサービスや予約配食サービスなどを含め、これまで同社が蓄積してきた、さまざまな外食サービス機能をフルに活用した店舗となっている。

同社は、昨年から今年にかけてグループ企業である中華の「バーミヤン」や和食の「藍屋」などを相次いで合併したため、和・洋・中という幅広い分野でのメニュー提供が統一したレベルで可能になったという。

実際、店内の作りおき商品の陳列棚には、おにぎり、弁当、すし、惣菜、ベーカリー、カレー、味噌汁、サラダ、デザートなどが所狭しと並べられ、そのほかにも、販売カウンターで注文調理のラーメン、ハンバーグ、天ぷら、スパゲティといった料理をオーダーできる。

メニュー構成は定番商品に加えて、時間帯などに応じてその都度変化する数多くの商品があり、近くの住民が毎日通っても飽きることのないようにといった工夫がなされているほか、欧米では当たり前になっているペットと一緒の外食を実現させるために、店舗外に犬用の食事スペースを設けて、数種類のペット犬用の食事も提供するというサービスで話題を呼んでいる。

商品の価格帯は、マクドナルドの平日半額バーガーに対抗したとして話題となった「おにぎり」が六五円から、「すし」が五〇円からなど、競合する業態と比較しても圧倒的な安さであり、作りおきの惣菜などは、ほとんどが一〇〇g一五〇円という統一価格となっているため、いちいち価格を気にせずに、客が食べたいものを食べたい分量だけ盛り合わせることが可能だ。

また、グループの店舗すべてですでに定番となっているドリンクバーは、単品で一八〇円、料理品と一緒で一五〇円、持ち帰りで一一〇円という細かな価格設定がなされており、同社のノウハウを感じさせる。

店内は多くの一人客を想定して、カウンター席や隣卓と接合できる仕組みになった小テーブル席が配され、店頭入口の脇には、クルマから下りずに注文できるドライブスルー用の販売窓口も設けられているほか、入口の自動ドアやトイレなどにはバリアフリーの設計が盛り込まれている。

同業態は、近隣住民客のリピート比率を向上させることによって、店舗あたりの商圏をより小さくしていく(小商圏化)こと、およびガスト店などで導入済みの「ルームサービス(宅配)」機能を、より強化することを目的とした業態ということだが、これまで同社が行ってきたいくつかの実験業態とは異なり、当初からチェーン展開を意識したものであるとしてメディアなどにも大きく取り上げられ、今後の動向が注目されている。

●取材者の視点

クラブラークヒルズ花小金井店は、多くの人々が外食店に求めるサービス機能を満載した業態となっているが、店舗自体が本来そのために設計されたものではなく、既存の古いFR店(一〇〇坪タイプ)を改装したものであるため、中途半端な使い勝手になっている点が気にかかる。

オープン当初のレイアウトが若干変更されたためか店内の動線はワンウエーではなく、テーブルサービス店と違って、店内客や持ち帰り客、そして従業員が狭い通路を常時行き交うことになるため、さほど混んでいない状態でも、料理を載せたトレイを持って人とぶつからないように歩くのはなかなか難しい。

混雑した通路を避けて人々が右往左往するため、少しでも客が集中すると、この混乱にはさらに拍車がかかる。

ドライブスルーも、車に乗ったまま購入するには少し無理のあるつくりであり、店頭にメニュー表示もないため、すでに購入する商品が決まっている客以外は、結局、駐車スペースに車を停めて、店内に入って購入する方が便利という感じだ。

入口など、いくつかの場所には、同店の利用方法が書かれた掲示があるが、いろいろな機能が複合しているだけに、初めての客には、使い方が分かりにくいだろう。

いっそのこと、店頭に訓練された案内係を配置した方がスムーズに運営できるのではないかという気にもなる。

学生などやお年寄りなど一人住まいの客にとっては、その時の食欲に合わせて必要な量を食べることのできるシステムは画期的であるだけに、FR業界最大手として、圧倒的な商品供給能力を誇る同社の今後の店づくりにぜひ期待したい。

◆筆者紹介◆

商業環境研究所・入江直之=店舗プロデューサーとして数多くの企画、運営を手がけ、SCの企画業務などを経て商業環境研究所を設立し独立。「情報化ではなく、情報活用を」をテーマに、飲食店のみならず流通サービス業全般の活性化・情報化支援などを幅広く手がける。

◇店舗データ

◆「クラブラークヒルズ」花小金井店(すかいらーく、東京都小平市花小金井南町一‐四‐三、042・380・7023)開業=二〇〇〇年7月7日、店舗面積=一〇〇坪、客席数=八四席、営業時間=午前7時~深夜1時(無休)

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら