厨房用洗剤 “洗剤は料理の道具”
日本人の食生活が洋風化して、食器をはじめ、調理器具や調理台、シンク、ゴミ容器など厨房全般にわたって、油汚れなどの落ちにくい汚れが多くなった。その上にゴミやほこり、こげつきなどが加わって汚れはひどい。またその汚れには目に見えぬ菌も付着している。一方では、野菜、果物には、農薬が散布されている。私達の食生活周辺には、食中毒をはじめ少し気を抜けば健康を損なう危険が数多く潜んでいる。こうした危険を避ける意味でも厨房で使用する洗剤を正しく理解することは重要なことである。
◇厨房用洗剤とは
①中性洗剤は各社ともいろいろ販売しているが「高洗浄力を持つもの」と「手肌にやさしいもの」がある。②クレンザー(けんま材)。水に溶けない無機微粒子、洗剤で落ちない茶渋、レンジ回り、鍋底のこげつきを落す。③漂白剤。洗剤で落ちない、ふきんの黄ばみ、食器の茶渋、ポリ容器の黒ずみ、カビなどの汚れを取る。まな板、ゴミ入れの除菌と悪臭も取る。
◇形状
洗剤には液状、粉状または粒状と固型がある。
◇洗剤の使い方(悪い例)
洗剤は身近なもので使い慣れているだけにいい加減に扱っている場合が多い。例えば①液状洗剤を別の容器にうすめて使用しているのを見るが、液状をうすめて四、五日間放置すると菌は繁殖しはじめる(規定濃度にある時は菌は活動しない)②スポンジたわしに原液をつけて食器を洗浄しているが、シンクタンクに原液を入れて洗浄した後、二度すすぐのが望ましい。
◇洗浄効果
日本では、野菜、果物の農産物は産地での簡単な水洗いのみで消費地へ出荷される。手元に届いた野菜、果物は十分に洗浄する必要がある。
水洗いよりも、洗剤で洗った方が除菌効果がある。農薬については、食品についての農薬残留量が規制されているが、国で認可されていない農薬の使用や輸送中の劣化防止のために使用する「ポストハーベスト」に注意すること。これは水洗いだけでは洗浄されないので、洗剤使用が望まれる。また寄生虫の卵も農産物に付着している。やはり水洗いだけでは除去出来ない。
◇野菜の正しい洗い方
野菜、果物を洗剤液に浸漬して洗浄する場合は五分以内のこと。その後は流水で三〇秒以上すすぐ。洗うことで鮮度を落としたり風味を損じない注意も忘れずに。しかし洗剤洗浄が破壊されやすいビタミンCに影響を及ぼさないことは実験で証明されている。
◇洗剤の残留量
食品を洗浄する洗剤には、食品衛生法があり、成分規格と使用基準が定められている。
使用規準により、中性洗剤の濃度、浸漬時間、すすぎ条件を定めて、残留中性洗剤量を抑制している。洗剤液の濃度を低くして、浸漬時間を短くすれば残留量は少なくなるが洗浄力は落ちる。正しい濃度で手早く洗うのが良い。洗剤は濃くすれば洗浄効果が大きいと考えがちであるが、洗浄効果は変わらない。かえって洗剤残留量が多くなるだけである。
◇調理器具の洗い方
料理がいかにおいしく出来ても、栄養的に優れていても、盛付けの食器が汚くては食欲は半減する。食器には米飯、芋類、卵と乳製品、そして油性のものなどいろいろな汚れが付く、洗剤はこれらの汚れに高い洗浄力を示す。
ふきん、食器洗浄用のスポンジなどには、常に注意して、洗剤で洗うとともに、酸素系漂白剤の標準使用濃度に三〇分以上漬けて除菌すること。また使用後は十分に乾燥させることがポイントである。天日に乾すのは一番の除菌になる。
◇おわりに
普段は洗剤を使用する前に注意書やマニュアルを十分読まないことが多い。日常使用するものだから安易に考えていることの表れだろう「洗剤は料理を作るための道具」(㈱花王・関根久嗣氏)の言葉と「除菌効果の最高は天日に干すこと」の言葉は印象に残った。