ヒットメニュー開発講座:カレー特集

1998.06.01 153号 4面

カレーは国民食といってよいほどの人気料理で、その作り方や味は千差万別。飲食店のカレーも専門店から喫茶店、そば屋まで、さまざまな内容のカレーを売っている。極めて日常的に食べつけている料理であるだけに、味の好みも多種多様であり、絶対的においしいという基準がない。そうしたなかで、カレーを人気メニューとして育てるためには、ある種強烈な「個性」が必要になる。味、風味、具材、コメ、薬味、トッピング、食べ方提案など、どこでその個性づけをするかは店の選択だが、本来的な差別化をするためには、カレーソースそのものの工夫が不可欠といえる。

スパイス

第一のポイントは「フレーバー」。カレーの命はスパイス。スパイスの使い方で個性づけする方法は、簡単かつ効果的だ。よく、使用しているスパイスの種類の多さを訴求しているケースを見るのだが、種類を増やせばそれだけ風味は複雑になるものの、逆に明確な特徴は失われてしまう。むしろ、特定のスパイスに偏りをつけて使用する方が効果的だ。

カレーの最も特徴的なスパイスは、クミン、カルダモン、コリアンダーの三種類。このどれかをアクセントとして強調した使い方をするとよい。

辛み

第二は「辛み」の個性化。食べやすい、万人向きの辛さのものではヒットメニューは生まれない。さりとて、普通ではとうてい食べられないような超激辛味にしても、やり過ぎというもの。相当に辛いけれど、普通の好みの人でも何とか食べられるというレベルがよい。

辛みの種類も、唐辛子、カイエン、チリのタイプは口に入れた途端に辛みがくるし、コショウ系は後から辛みが効いてくる。両者をどう組み合わせるかで辛みの印象をかえることができる。

また、辛みの調味料として、インドのピンダルウペーストや、インドネシアのサンバルといった強烈な辛みを持つ調味料を使用するのも一法だ。

風味

第三のポイントは「風味」の工夫。味とともに、カレーソース全体の風味の個性化が必要になる。風味を決める最大のポイントは、ソースの「ベース」にある。

複雑、かつ奥行きのある風味を作るには、ベースを野菜で作るとよい。玉ネギ、セロリ、ニンジン、ニンニク、ショウガ、トマトといった多種類の野菜を煮込み、これをペースト状にしたものをベースにするのだ。

これに加えて、風味の個性化に効果的なものとして、ココナツミルク、ナンプラー、カピ(シュリンプペースト)、レモングラス、バイマクルーといったエスニック系の調味料を隠し味的に使用するのもよい。

また、野菜のベースに加えて、リンゴ、ピーチ、マンゴー、バナナ、パイナップルなどのフルーツを、ピューレ状にして入れると、一層風味が高まるのでおすすめしたい。

具材

第四のポイントは「具材」の工夫。ポピュラーなビーフカレーにしても、使う部位によって味は大きく変わってくる。濃厚な味がでるすね肉やブリスケ、変わったものではテールやタンなどを使ってみるのもよい。

すね肉やテール肉は、煮込みすぎると肉が全部繊維状にばらけてしまうが、その形もむしろ個性的で面白いといえる。

目先を変える工夫として、肉を大きなブロック状にして、ビーフシチュー風のボリュームで訴求したり、骨付きのスペアリブを使うなども人気になろう。

これらソースの工夫に加え、ライスもサフランやバターライスといった手法ではなく、麦ご飯や玄米入りにしてヘルシー感を出したり、女性向きに糸コンニャクを刻んで混ぜた「ダイエットライス」を提供するのも、現代的なし好にマッチした工夫といえる。

薬味も、判で押したような福神漬けやらっきょうではなく、インド風のアチャール(野菜のスパイスあえ)のようなものや、自家製の浅漬けなど、他店とひと味違うものを使いたい。

このほか、トッピングに変化をつけるなど、さまざまな工夫があるが、基本的に「明確な個性」がなければヒットメニューは生まれないと考えて欲しい。

■著者紹介■ 押野見喜八郎(おしのみ・きはちろう)FSプランニング代表。外食企業・食品会社の経営、商品開発コンサルタントとして活躍中。専門である商品政策やメニュー指導では第一人者としての定評がある。「ヒットメニュー全科」(商業界)、「喫茶店経営改善ハンドブック」(柴田書店)など著書多数。業界誌でも健筆をふるう。

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