だから素敵! あの人のヘルシートーク:料理研究家・ウー・ウェンさん

2006.12.10 137号 3面

テレビ・雑誌で中国の家庭料理を紹介するかたわら、東京と北京の両方で料理サロンを主宰しているウー・ウェンさん。料理を通して伝えているのは、中国の伝統的な暮らし方、家庭のこと、食べること、健康のこと。新刊周辺から、その心持ちを伺った。

「家常菜」とは、中国語で家庭料理のことです。縁あって20代の頃に来日、中国のことが大好きなアートディレクターの主人と結婚し、主人のお友だちに料理をふるまうと、皆に「こんな中国料理は食べたことがない!」と驚かれました。中国の家庭食の味付けは案外さっぱりしてるんです。

家庭料理は世界中、同じ考え方のものだと思います。アジアもヨーロッパも、家族を健康にするのが基本。一つも違いません。ただ気候風土によって、スパイスをたくさん使ったり、生ものをそのまま食べたりしているだけ。子供がお母さんのお腹から生まれ、綺麗な洋服着せて、大きなお家に住まわせて、たくさんのお勉強をさせて、それだけで大きくなるわけではないですね。何が必要か。やはり食べ物。これで人は大きくなります。

気候風土にあった食事で家族を健康にする…それをするにあたり、日本は本当に素晴らしい。この国で生活しているのですから、私、日本料理ももちろん作ります。水は綺麗、魚はある、おコメや野菜、四季それぞれの恵みがある。珍しいですよ、こんな美しい国は。けれどいまは少し豊かになりすぎたのでしょうか。何も努力しなくても、スーパーに行けば手に入らないものはありません。だから、知恵で解決することが少ない気がします。

不便な北京に行くたびに、私は仕事の段取りが上達します。赤・黄・緑、3本の鉛筆を使って準備します。「できた」「途中」「まだ」と分けてね。準備不足で料理を始めてからニンニク1個なかったら、広い北京、探すのに1時間くらいかかります。

便利さが高まると知恵を使わなくなると同時に、もう一つ、失いがちなものがあります。それはリズム。

1日は24時間、それは神様が地球の人たちに平等に与えていることです。けれど便利な社会はそれを無視もできる。だから逆に、意識してリズムを作らなくては。何でできるのでしょうか。そう、食べ物です。着る物や住まいではできません。決まった時間に食べるから、きちんと消化して、トイレに行ってリズミカルに出る物が出る。我が家では、朝は7時まで、昼は12時半まで、夜は7時までに食べるようにしています。リズムを作る規則正しさを大切に、だから忙しいときは外食もアリです。

世の中は、ある時は「スピーディー」と言ったり、「スローライフ」と言ったり、移り気なものです。特に速くもなく、遅くもなく。24時間の自然のリズムで、機嫌よく起きて、機嫌よく食べて、機嫌よく働いて、機嫌よく眠る‐‐こうしていればストレスは少なくなりそうです。

食養生にあたって、もう一つ大切なこと。それは身体の声を聞くこと。テレビや雑誌で「身体にいい」といわれても、私はそれが自分に必要かどうか、まず身体に聞きます。身体が何を本当に必要としているか、そのメッセージに素直に従うんです。

一家のお母さんの仕事は、家族を病気にさせないこと。家族の身体の声も上手に聞き取りたいですね。

◆プロフィル

中国・北京生まれ。北京師範大学卒業。1990年に来日して日本であまり知られていなかった中国家庭料理を紹介し、たちまち人気料理家に。「ウー・ウェンクッキングサロン」電話03・3447・6171

●ウー・ウェンさんの冬レシピ

○鶏手羽の白菜鍋

甘みの増した冬の白菜を、コラーゲンいっぱいの鶏手羽と柔らかく煮て。身体を温めるショウガもたっぷり。

<材料>

・鶏手羽中…4本(250g)

・白菜…1/4個(600g)

・ショウガ(千切り)…………………1かけ

・塩…………小さじ2/3

・コショウ…………少々

・酒……………大さじ1

・水………………4カップ

<作り方>

(1)鶏手羽先中は半分に切り、さっとゆでて水気を切る。

(2)鍋に(1)、水、酒、コショウを入れ、強火にかける。煮立ったらふたをし、弱火で15分煮る。

(3)白菜は縦に2cm幅に切る。(2)に加えてさらに5~6分弱火で煮たら、塩で調味し、ショウガの千切りで香りをつける。

○タラの黒酢あんかけ

タラを鍋料理以外にも使いましょう。

<材料>

・タラ…2切れ(200g)

・片栗粉………大さじ2

・合わせ調味料

しょうゆ…大さじ1/2

黒酢…………大さじ1

砂糖………大さじ1/2

塩………………1つまみ

酒………………大さじ1

・揚げ油……………適量

・しらがねぎ……10cm分

<作り方>

(1)タラは一口大に切り分けて片栗粉をまぶし、170度Cの油で揚げ、油を切る。

(2)炒め鍋に合わせ調味料を入れて強火で煮立たせ、(1)を戻してからめる。皿に盛り、しらがねぎをのせる。

「ウー・ウェンの芯から元気になる家常菜」(光文社・知恵の森文庫)から

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