パン特集

◆パン特集:製パン業界、コロナ禍の中総力挙げ商品供給

小麦加工 2020.06.15 12065号 06面

製パン業界は、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、ホールセールからリテールに至るまで、総力を挙げてパン類を供給した。日本パン工業会の飯島延浩会長は、5月21日に発表した同工業会記者発表文書で、「新型コロナウイルスの対応についても、製パン業界の責務を果たすべく、食品の安全および従業員の感染予防対策を徹底するとともに、関連業界のお力添えとご協力を得て、国民生活に必要な食料の安定供給に努める」との考えを示している。(青柳英明)

◆巣ごもりで食パン・食卓ロール需要増

製パン業界は、阪神・淡路大震災、東日本大震災や大型台風など自然災害発生時では、緊急食料供給を社会的使命として認識し、パンや弁当類を供給してきた。自然災害時と違い、疫病対策は経験がなく対応に苦心したが、日本の製パン業界では、AIB(米国製パン研究所)の食品安全管理システムを導入しているケースが多い。日常的に、店舗内の不衛生な状態、管理されていない状態を探し出し、店舗の中にある食品への危害を除去することを行っていることから、衛生意識とそれを担保するシステムが高いレベルにあり、経験のない疫病対策で大きな役割を果たしたようだ。

リテールベーカリー店頭では、陳列商品の個包装化や透明シートで覆うなど、飛沫(ひまつ)感染防止対策やトングなどのこまめな除菌作業、従業員の体温チェックなどの対応を早い段階から実施した。厚生労働省がホームページで公開する、新型コロナウイルスに関するQ&Aで、「食品そのものによる新型コロナウイルス感染症に感染したとされる報告はない」としていることから、ベーカリー店の自主的判断による感染防止策だ。個包装用の資材に関しては、ベーカリーでは会計時、商品ごとに小袋に入れることからコスト増は限定的だ。一方、焼きたてのパンをそのまま個包装すると水滴が小袋内部に付着し品質を保つことができないため冷ます工程と袋詰めの手間が新たに生まれる。小中高校の休校で、ベーカリーを支える人員の確保が厳しくなる中、安全・安心を担保するため難しい判断を下した。

20年1~3月のパン生産数量(食品需給研究センター公表)は、31万9073tで前年比2.3%増。食パンは、同1.4%増、菓子パンは同3.9%増、その他パンは同4.6%増。一方、学校の一斉休校に伴い、学給パンは、同26.7%減。

食パンや食卓ロールは、在宅傾向の高まりで朝食需要が活発化したことから増加したとみられる。菓子パンも増加しているが、主要販路のCVSの客数減少を受け需要は軟調とみるメーカーも多い。ロングライフパンも買い置き需要増を背景に増加。一方、焼成冷凍パンは、訪日外国人観光客の激減や外出自粛に伴う、国内旅行・出張の大幅減を受け、ホテル需要が大幅減となった影響で苦戦した。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら