スパイス特集

スパイス特集:家庭用=2桁超えの伸長 昨年、練りスパイスがさらに充実

調味料 特集 2021.02.22 12191号 08面

 スパイス類の家庭用は新型コロナウイルス拡大による巣ごもり需要と家庭内調理の機会の増加が追い風となり、市場は大きく拡大している。スパイス全体の市場は昨年12月までの1年間で前年比15.3%増と2桁超の伸長となっている。シーズニングスパイスを含む洋風スパイスは同19.4%増、テーブルコショウや唐辛子など他の粉体スパイスは同10.9%増、練りスパイスが同14.5%増、ラー油などの液体スパイスが同25.8%増とあらゆるジャンルで2桁を超える伸びを示している。

 洋風スパイスの単品スパイスはこれまでも需要は堅調に拡大を続け、着実に市場を伸ばしてきた。この流れに家庭内調理機会が増えたことで市場は大きく伸長した。加えてシーズニングスパイスもさまざまなメニュー展開が進み踊り場を迎えたと思われたが、この機会をとらえ大幅な拡大に転じた。粉体スパイス、液体スパイスも同様の理由で伸長したと思われる。練りスパイスも同様だが、この分野では近年、各メーカーが新たな製品を続々と開発。生鮮の代替品として、刻む手間を省くなどが消費者のニーズをとらえチューバーと呼ばれる新たな顧客層を生み出している。

 エスビー食品の昨年4月から12月までを見ると、市場同様にスパイス全体で2桁超の伸長。粉体、練り、液体の各ジャンルもすべて2桁超と好調だ。ハウス食品もスパイス全体で前年比17%増、洋風スパイスが同19%増、練りスパイスが同20%増と大きく数字を伸ばしている。全体として大きく伸長している家庭用スパイス市場だが、特に最近注目を集めているのが練りスパイス類だ。

 以前は定番のショウガ、ニンニク、わさび、からしの大容量タイプが市場をけん引してきた。この傾向は現在も続いているが、ショウガやニンニクは生鮮の代替品としての地位を確立したといえる。一方でわさびやからしの既存サイズは前年並みもしくは若干の減少傾向であった。大容量タイプは伸長していたものの、ショウガやニンニクと比較するとその伸びは低い水準だった。しかし、最近の巣ごもり需要の拡大に伴い、わさびやからしも2桁近く市場は拡大している。さらに市場を後押ししているのが、バラエティー品が豊富になってきていることだ。エスビー食品の「きざみ青じそ」はチューブ品として異例ともいえるほど売上げを伸ばした。その後はハウス食品の「レモンペースト」、エスビー食品の「きざみバジル」や「きざみねぎ塩」「きざみゆず」などラインアップは大きく増えている。

 今回の新製品発売でもエスビー食品が「紅しょうが」「きざみみょうが」を、ハウス食品が「のっけるかぼす&すだちペースト」「きざみ紅しょうが風ペースト」を発売。チューブのバラエティー品はこれまでになく豊富なラインアップとなっている。さらにハウス食品が発売した「禁断の黒コショウ」に続いて、新たに地中海生まれの唐辛子をベースにした万能調味料「魅惑のハリッサ」を発売。このシリーズはこれまでにないタイプの製品であるだけに、試食による誘導が欠かせない。しかし、現状は新型コロナウイルスの拡大により店舗における試食は現実的な選択肢とはいえない。このため、今後ハウス食品では食べきりサイズの試供品を用意し4月から精肉売場などで配布する予定だ。また練りスパイスは、各メーカーが同一素材の製品を発売する傾向が続いているが、その商品は刻み感を重視するか、ペースト感を重視するかで実は異なる。その物性の特性を生かしたメニュー活用が期待できるため、同一素材の製品ながら、それぞれが消費者の支持を得る可能性がある。

 シーズニングスパイスは今後のメニュー展開が課題となっていたが、今回の新製品でエスビー食品がヨーグルトを使用したシーズニングスパイスの新シリーズ「ヨーグルトでつくる!シーズニング」を発売。さらに話題の町中華の裏メニューを再現した「町中華シーズニング」も投入した。ハウス食品は「スパイスクッキング」に人気中華メニューや食卓登場頻度の高い定番食材で作る新製品5品「サバサンド」、「豚たま中華炒め」などを投入する。さらにワンランク上のシーズニングスパイス「GABANシーズニング」では「海老ソテー」と「ムニエル」の魚介メニューをより作りやすい調理法に変更しリニューアルを図った。

 シーズニングスパイスは急速に拡大した結果、最近は市場が伸び悩み傾向にあった。しかし、巣ごもり需要の増加と家庭内調理機会の増加により市場は再び成長基調に転じた。シーズニングスパイスはその素材の価格が上昇すると売上げが伸び悩むなど、今後の課題は存在する。しかし、手軽に1品のメニューが仕上がる簡便性や多種のスパイスを使用したそのおいしさから、さらなる成長の可能性を秘めている。今後のシーズニングスパイス市場がどのように動いていくかは注目される。

 家庭用スパイス市場は、かつてないほどの追い風が吹いている。今後、この流れを長期的な成長につなげることができるかが問われていくこととなる。

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