スパイス特集
スパイス特集:原料事情=コショウ、上昇局面へ コロナ影響で収穫などに不安
昨年後半から主要スパイスの値動きが変化してきている。コショウは15年以降、下落基調が続いたが今年は相場が上昇し始め、今後は価格上昇が見込まれる。また18年ごろから上昇に転じ19年に大幅に高騰したカルダモンも20年に入り下落傾向となったが、今年1月に中東からの継続的な買いなどで反発。今後は価格上昇が見込まれる。さらにショウガも20年は生鮮価格が大きく上昇した。しかし20年産の新物に切り替わったことで昨年末から中国国内のショウガの生鮮価格は落ち着きを取り戻しつつある。
徐々にスパイス価格の原料価格は動きを見せつつある。新型コロナウイルスの影響により島しょ部での収穫要員が確保できないことなど人の移動制限の影響に加え、海上運賃の上昇が今後、スパイス原料購入に影響を与えることとなりそうだ。
●マレーシア産黒コショウ
15年以降軟化していた相場は底を打った。近年の相場安により農家の作付意欲が低下した結果、インド以外の主要産地全てで減産が見込まれる。投機家が在庫を保有していると思われるが、コショウに限りコロナの需要減の影響は少なく相場上昇が見込まれる。世界的にはベトナム産コショウが最大の生産量となっている。マレーシア産の需要は日本がメーンとなっているため、ベトナムなど他産地の相場と比べて高値維持となっている。
●マレーシア産白コショウ
各国で相場が底を抜け、世界最大産地であるインドネシアでの生産量激減により相場は上昇基調だ。黒コショウと違い、産地が限定されていることから供給難に陥りやすく相場高騰幅が大きい。黒コショウで最大産地のベトナムでも白コショウを製造しているが、製法が異なり(外皮を削るだけ)風味の観点から主要産地にはなり得ない。
コロナの需要減の影響は大きく、供給も大幅に上がらないことから今後5年程度は価格は上昇基調で推移すると思われる。
●インドネシア産ナツメグ
インドの主要産地であるケララ州の天候不順で収量は激減した。インド国内需要を満たすためインドネシアに強い買いが入っておりナツメグの相場は急騰している。次の4月の収穫までは価格上昇が見込まれる。
一方でインドネシアの収量は落ち需要が供給を上回っている状況だ。この結果、メースも値上がりを続けている。
●イラン産クミンシード
昨年は増産となり、相場は18年と同レベルまで下落した。米国大統領選の結果を受けて今後イラン産クミンの調達レベルが変化する可能性がある。一部日本メーカーはクミンシードのインド産への切り替えが進んでいる。
●インド産ターメリック
21年産も堅調な収穫量となる見込み。健康食品向けの需要が現在も伸長している。
●グアテマラ産カルダモン
19年のインド産不作により価格が急騰し、過去に例を見ない相場推移となった。20年産のグアテマラでの収穫時期に熱帯低気圧エタの影響で大雨に見舞われた。産地への水害が懸念されたものの、作物への実被害は一部地域に限られ全体収穫量としては前年比で良好となった。加えてコロナによるイベント自粛で需要が減少し相場は下落した。一方で、大雨による物流の鈍化に加え投機家の売り渋りなどにより19年の水準には戻らないと思われる。中東からの継続的な買い活動もあるため、21年1月に価格が反発、今後は価格上昇が見込まれる。