’96業態別展望 ファストフード=チャレンジ空しく膨らむ“ガリバー”

1996.01.01 92号 24面

圧倒的な知名度

ファストフード業態は現在、ますます市場を拡大している。そして今年はマーケティングでいうところのリーダー企業がそれぞれの分野で確立し、ガリバーとなり、チャレンジ企業との差をどんどん大きくしていくだろう。

それぞれの分野のガリバーとは、ハンバーガーのマクドナルド、モスバーガー、フライドチキンのケンタッキー、牛丼の吉野家、コーヒーのドトール、カレーのCoCo壱番屋、ドーナツのミスタードーナツなどがあげられる。ハンバーガーでいえば一時ロッテリアがチャレンジ企業らしくマクドナルドを追い上げていたときもあったが、ここにきて全く勝負がついてしまった。それぞれのガリバーたちは、全国展開を行い、テレビCMを大々的に行いますます店数を増やし、規模を拡大していくことになるだろう。

FF業態は、商圏が狭く『わざわざ』行く店ではなく『たまたま』食事時にそこにあれば利用するものだ。同じ駅前に一店だけならともかく、同じ業種でガリバー企業とそれ以外が並んでいれば、もともと味的にはそれほど変わりはないのだから、知名度のあるガリバーの方にお客様は流れていってしまう。そしてガリバーはますます売上げを伸ばし、原材料をスケールメリットで安く調達できるようになり、ディスカウント販売も可能となる。

参入阻む厚い壁

今日本の伝統的な雇用形態が崩れ、リストラと社内失業が報じられ、一流企業でも早期退職勧告が出されている。四〇、五〇歳代の対象者は、会社に退職までしがみつくか、退職して独立するかの選択を迫られている。後者の退職して独立する手段として飲食FCに加盟するケースが増えている。

アメリカでの外食市場の半分以上は、FC企業である。一獲千金の夢に燃えた人が自分の気にいったフランチャイザーと契約しフランチャイジーとなり、数十店を経営するようになっている。日本の場合、契約の概念が不明確でトラブルが多かったが、このような人たちの参入でFC展開の局面が変わってくる。それにしても、さまざまなノウハウを持ったガリバー企業は圧倒的に有利に進めるし、この分野でもますますチャレンジャーとの差は広がってくる。

アイデアで挑む

このようにガリバーが大きくなればなるほど、ニッチ(隙間)が見えてくる。マクドナルド、モスバーガーを完全に否定したフレッシュネスバーガー、立ち食いステーキのペッパーランチ、ちょっと古いが天丼をFF化したてんや、アメリカンサンドイッチのサブウェイなど工夫とアイデアで今後も新規参入がどんどん増えてくるだろう。FF分野では、日本人の大好きなうどん、そば、ラーメンの有力企業がまだ登場していない。モスフードのちりめん亭あたりが名乗りを上げているが、まだ力はない。どんな新しいコンセプトが出てくるか楽しみな年である。

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