メニュートレンド:グルメバーガーの日本的進化 チーズの海にどっぷん
大口を開けてもかぶりつけないほどのボリューミーなグルメバーガーは、日本でもすっかり定着した感がある。そして、多くの店では分厚く肉々しいパティでボリュームを演出し、チーズをとろけさせて、よりアメリカンに仕上げる方向にブラッシュアップをしているが、まったく別のベクトルでチーズバーガーを進化させたのがアメリカンダイナー「ANDRA」である。
2つに割ったチーズバーガーが鉄板上でチーズの海にどっぷり漬かったビジュアルは、ひと目見たら注文せずにはいられない。インパクトあるこの一品は、同店の塩田龍太郎店長が数多くのチーズバーガーを食べてきた中で「途中からチーズが冷めて味が落ちる。手もベタベタになる」との不満があったことから考案した。どのように食べるべきか一瞬悩んでしまうが、「バーガーを手でつかんでチーズをたっぷりぬぐい、豪快に食べるのがおすすめ。チーズをスプーンでかける、という食べ方もいい」と塩田店長。とはいえアメリカンサイズゆえ、食べづらい女性客などはナイフとフォークで切り分けて食べているそうで、そんな食べ方もまた楽しい。
鉄板上にたっぷり広がっているのはただの溶かしチーズではなく、パルメザン、モッツァレラ、チェダーの3種のチーズを牛乳でのばした、ベシャメルベースのチーズソースというのも秀逸だ。バーガーに絡めやすく熱々状態が持続し、味にクドさがないので飽きることなく最後まで食べられる。
バーガー自体も特徴的で、「スマッシュバーガー」の手法で作られている。スマッシュバーガーは米国シアトル、デンバーが発祥とされるバーガーで、ミンチを練って成形するビーフパティではなく、ゴロゴロとした肉の形状を適度に残したミンチを押しつける(スマッシュする)ように香ばしく焼いて仕上げる。同店ではUS牛のハラミと肩ロースを各同量使用し、粗びき75%、細びき25%の割合で混ぜたパティを使用。鉄板に押しつけるように焼くことで、カリカリとした香ばしさと粒が大きいミンチならではのジューシーさが混ざり合い、多彩な食感が出る。食感の変化が楽しめるバーガーというのはなかなか魅力だ。
チーズバーガーの真価をまったく損ねることなく、従来のチーズバーガーの概念を超えた発想で大胆に進化させた同店の提案はあっぱれ、である。
●店舗情報
「American Diner ANDRA」
所在地=東京都台東区東上野5-13-7/開業=2015年/坪数・席数=10坪・15席/営業時間=11時~14時、17時~21時。日曜休/平均客単価=1500~2000円/1日平均集客数=50~60人
●愛用食材・資材
「GABAN セロリーホール」 ギャバン(東京都中央区)
肉によくなじみ使いやすい
同店ではパティに隠し味として混ぜ込んでいる。「うちのパティはハラミを使っていますが、同品の風味と香りはハラミの少し鉄っぽい味を和らげ、おいしさを引き立ててくれる。水分がない乾燥タイプなので、肉によくなじんで使いやすい。生鮮のセロリではなくあえて同品を愛用しています」と、塩田店長。