食品の新製品情報収集も新スタイルに【日本食糧新聞社アンケート】

コロナ禍で日常生活も仕事のあり方も変化を余儀なくされた状態が続いている。食品業界の中でも、外食店や居酒屋の営業時間短縮や自粛など打撃を受けた分野もあれば、巣ごもり需要の増加や在宅勤務が増え、市販品の需要が伸びた経緯もある。こうした現状の中で、新製品開発に対する視点や手法にどのような変化がおこっているのか、現在の活動の主流はどういったものかといったアンケート調査を実施した。対象は日本食糧新聞社発行メルマガ会員約10万人のうち食品業界関係者122人(経営企画、商品開発、マーケティング、営業、バイヤーなど)。

「オンラインでの情報収集が増えた」が7割

Q:新型コロナの影響で、情報収集について変化がありましたか(複数回答)※クリックで拡大できます

アンケート対象:日本食糧新聞社発行メルマガ会員のうち122人
調査期間:2021年5月10〜31日

新型コロナウイルスの影響で、2020年から続く外出自粛やテレワーク。食品関連ビジネスでも、インターネットを活用しての情報収集が増え、その状況は現在でも続いている。一方、従来のような仕入れ先や顧客への直接訪問など地道に行う商品探しは難しいと感じている声が多かった。と同時に、新規開拓や仕入れ先や顧客からのリアルな声を聞きにくくなっている分、先を見据えた次なるトレンドをとらえることも厳しくなったと感じる人も多いようだ。

また「健康系について調べることが増えた」というように、コロナに端を発したテーマでの情報収集は以前にも増して高まっている。健康志向食品の需要がますます右肩上がりになるととらえる回答も見られ、そのニーズに応えたいというメーカーは多いだろう。ただし、全体として魅力的な商品が減ったと感じる声も少なくない。その情報収集方法に関しては、インターネット上での検索のほか、新聞や雑誌などもオンライン対応しているため、紙媒体での情報収集は減ったという回答もあった。

情報収集先はネット検索がリアルな口コミを大きく上回る

Q:どのような方法や媒体で情報収集しますか(複数回答)※クリックで拡大できます

情報収集先は、「インターネット検索」が「リアルな口コミ」を大きく上回っていることに注目したい。リアルでのイベントや商談会、展示会などは昨年は多くが中止となり、今年もまだまだ再開しているものは少ない。そのような状況下で、やむなくパソコンなどでの情報収集が増えたもよう。

「専門紙/専門誌を読む」というのは、おそらくオンライン版も含めての回答と推察されるが、業界イベントが激減した中でより業界内の最新情報を得たいという気持ちの現れだろうか。次いで、「メルマガ」や「特定のサイト」「SNS」などでの情報収集といった意見もあり、まだ見通しが立たないコロナ禍では、SNSツールをより積極的に利用することが大きな鍵となることが予想される。

情報収集目的は「トレンド調査」が1位

Q:どのような目的で収集しますか(複数回答)※クリックで拡大できます

情報収集の目的は「売れ筋や話題の商品を調べる」が圧倒的に多く、次いで「マーケティングや新製品開発のため」など、リサーチやヒット商品のデータ分析ととらえている回答も数多く見られる。

また「他社製品の評価を見る」は「自社製品の評価を見る」よりも上回る結果となり、競合他社の動向は関心が高いことがうかがえる。「販促用資料の作成」や「レシピ考案のため」といった、旬のトレンドをスピーディに反映させるための情報収集もオンラインならではといったところだろうか。

いずれにしても、このコロナ禍で生まれるヒット商品をアイデアの種として、次なる新製品開発への好機としたいという意欲と試行錯誤がうかがえる。

製品の詳細から開発ストーリーまで幅広く情報収集

Q:どのような内容を収集しますか(複数回答)※クリックで拡大できます

情報収集の内容は、製品の「基本スペック情報(商品概要)」や「販売動向」、そして「製品に関する記事やニュース」など、製品全般に対しての特徴より詳しいデータを求める声が多く挙げられる。次に「口コミや評判」といった消費者からの反応も関心が高い。

また、製品そのものの情報以外にも「開発ストーリー」に興味を抱く人が多い結果となった。開発背景や舞台裏などを調べる人も増えているということは、製品スペックの高さはもとより、製品開発に関するストーリーへの共感が欠かせなくなっているということだろうか。

さらに製品の「肯定的情報」「否定的情報」のどちらもランクインしていることにも注目したい。製品のプラス情報で人気の要因をつかむだけでなく、製品のマイナス面を調べることは、ユーザーや製品、そして製品が属する業界全体の課題解決につながり、よりヒットしやすい製品を生み出すヒントが隠されているようだ。

環境変化に対応するための情報に高いニーズ

Q:新製品の情報について、今後あればいいと思う内容、機能、サービスを教えてください。(回答から一部抜粋)

・パッケージ表示内容
・パッケージやターゲットなど従来品との違い
・広告宣伝の実態
・市場環境の変化に対応するために開発商品
・開発ストーリーやターゲット
・開発やマーケ実務担当者へのインタビュー
・新製品の現状、未来についてのロードマップ、動向
・発売後の反響や売れ行き
・製品に対する購買者の忌憚なき意見
・海外、特にアジアの市場情報
・海外での日本産加工品や日本式現地加工品などグローバルな情報
・地方の隠れたヒット商品
・コロナ禍で売れている商品やSDGsに関連する商品
・食品以外の業界での食品に関係するような情報

回答者の自由記述からは、先述にもあるように、新製品の原材料や商品特徴といった内容はもちろんのこと、開発ストーリーや裏側などが知りたいなど、“ものづくりに対する想い”を知りたいという意見が散見された。また、食品の新しいトレンドや市場の情報といった時流をつかむため、製品に対して購買者の率直な意見や発売後の反応などをもっと知りたいという声もあった。

取引先や顧客からのリアルな情報収集が減った分、どうやって生の声を引き出せるかが大きなポイントになると考えられる。現在のトレンドを追うだけではなく、過去分析からの未来予測など、オンラインだけでは得られにくい情報が欲しいという意見もあり、単に情報やデータを見るだけでは満足できない傾向も見られた。

さらに日本国内だけではなく、アジア含め海外のトレンドなどグローバルな情報を知りたいといったコロナ禍で海外にひんぱんに行くことがかなわない今ならではの意見や、首都圏の流行以外にも地方の隠れたヒット商品メーカーにスポットを当ててほしいなど、リアルでの商談会が減り情報が得にくい現状をカバーしたいという思いも感じられた。

また商品開発に社会的使命を付加したいという意味もあってかSDGs関連の取組み、環境への配慮がなされる製品情報を知りたいという声もある。続くコロナ禍でオンラインでの情報収集が主流になる中でも、広い視野を持ち新製品情報と向き合う様子がうかがえる。

柔軟な発想が新製品開発の鍵に

新型コロナウイルスの影響で、食品業界に限らず、オンラインやSNSを活用した新スタイルの情報収集は定着しつつある。取引先との関係性構築やリアルな情報収集が難しい一方で、オンラインでより詳細に製品の背景やストーリーを調べたり、これまでよりさらに深く掘り下げたリサーチを行ったりする人も多く、その情報収集へのアプローチも進化している。

状況に負けず、逆に順応しながら、コロナ禍で国内外ともにひんぱんに行き来できないこそ生まれるアイデア、ご当地食材を使った新機軸製品、非対面でも可能な新製品の開発など柔軟な発想も生まれているようだ。

新しい生活様式は、食品業界でも少なからずマイナス面も出た分野もある。しかし、新製品の過去、現在、未来と広い視野でとらえたときには今までにはなかった実験的な商品の開発や販売もしやすく、消費者の購買意欲をかきたてる付加価値を生み出すチャンスでもあるだろう。今回のアンケートで、オンラインを中心とした活動へのシフトが顕著に見られた中で、何か今までの活動以上の情報やアイデアを見つけようとする姿勢がその証拠といえる。

■過去のアンケート
コロナ禍で食品バイヤーの活動にも制約 問われた変化対応スキル【日本食糧新聞社アンケート】

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日本食糧新聞社が運営している新製品研究会の会員誌である月刊「食品新製品トレンド」が電子書籍となりました。

・食品の新製品の最新動向がつかめます。
・新製品情報を商品写真つきで一覧にして紹介。

直近 3ヵ月分の月刊「食品新製品トレンド」(POSページは除く)が Webでご覧いただけます。

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1アカウント5500円(税込)

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日本食糧新聞社 新製品事業部
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