百歳への招待「長寿の源」食材を追う:タラノキ
タラノキ、ツワブキはともに知名度抜群。前者は日本中に分布し高級野菜としてハウス栽培で流通。クセがないのでファンは多い。成分的にも優れ、特に糖尿病や腎臓病にも効果的。ツワブキは料理面ではオールマイティー。シャキシャキとして舌を楽しませて人気が高い。また民間薬として薬効も幅広い。
(食品評論家・太木光一)
ウコギ科の落葉低木。アジア各地、日本でも北海道から沖縄の山地に普通に生えており、枝数は少なく、茎葉に鋭いトゲがみられる。
奈良時代から高級な野菜とされ、近年では山菜の王として需要は一段と高まっている。第二次大戦後、山梨県など各方面での研究が進められ、切断した根を植える根挿(ざ)し法が開発され増殖が可能となった。
また管理を阻んでいたトゲのないものが育成されるとともに、出荷期の幅を広める萌芽の調節法も考えられ、栽培も全国的に拡大した。
果実は球形で黒く熟す。食用にするのは若芽でタラノメと呼ばれている。香りがウドによく似ているのでウドモドキとも呼ばれる。流通するタラノメはハウス栽培が多い。
4~5月頃一〇センチぐらいに伸びた若芽を摘み取る。葉の伸びきらないもの、葉に褐色の毛のあるものがよい。
香りが良く、味にクセがないので重宝される。小さなトゲはゆでると柔らかくなる。メダラと呼ばれる変種は葉の裏に深褐色の毛があり全体にトゲがない。栽培用に適し各地で広く栽培されている。
このタラ芽の若芽の成分をみると、一〇〇グラム当たり(生の状態)で、エネルギー三五キロカロリー、水分八七・四、タンパク質五・四、脂質〇・二、糖質四・〇、繊維一・六、灰分一・四(いずれもグラム)。無機質ではカルシウム二〇、リン一五〇、鉄一・一、ナトリウム一、カリウム五九〇(同ミリグラム)。ビタミンではA効力九五〇国際単位、B1〇・一九、B2〇・二六、ナイアシン三・二、C一二(同ミリグラム)となる。
タラ芽の利用法として、若芽は天ぷらにするとうまい。サッとゆでてゴマ和え、クルミ和え、浸し物などにも利用される。また煮物にも向く。加熱する時は基部に包丁目を入れると火の通りもよくなる。
薬用として樹皮や根部の乾燥したものを煎服すると、糖尿病や腎臓病にもよいとされる。また葉を煎じて健胃剤として古くから用いられてきた。
タラノキの太い幹はトゲの部分を削りとりスリコギとして利用、昔の人はそのすり減った分が薬用として役立ったという。面白い話だ。
ハウス栽培が一段と普及し入手も容易となってきた。早春の山菜として高級感もみられ、香り・味とも魅力的で人気が高く、山菜の中ではトップクラスの春野菜といえよう。