だから素敵! あの人のヘルシートーク:作家・エッセイスト 阿川佐和子さん

2005.05.10 118号 4面

“話し上手に聞き上手”の絶妙コンビが織りなすおしゃべり本、『ピーコとサワコ』(文藝春秋)が話題の阿川佐和子さん。対談の周辺、びっくりするほどの若さと元気のヒミツを聞いた。

‐お二人の仲は、石井好子さんのチャリティーコンサートがご縁だったとか。

報道の仕事の頃からお話ししたことはありましたが、「けっこう仲良しかしら」という間柄になったのは、石井さんのチャリティーコンサートがキッカケです。普段シャンソンを歌わない人に歌わせて、その意外性を楽しみましょうというアイデアで、司会のみならず歌うことになっていました。廊下で出くわしたピーコさんが「大丈夫?」。「ぜんぜん大丈夫じゃないですよ。心臓がバクバク言って、さっき食べたお弁当が口から出そうですっ」と答えたのが運のつき。「きったないわね、アンタって。もう何言ってるのよっ」と。ピーコさんって優しいんですよ、根は。私の緊張をときほぐそうと一生懸命、騒いで笑わせてくれたのが伝わってきて…。

ある時の仕事帰り、ピーコさんの世間に対する悪口が小気味いいほどおかしかったので、「それ、本にまとめたら?」とおすすめしました。でもその片棒を私が担ぐことになろうとは…。対談の「語りおろし」ですが、ゲラになってみたら青ざめましたね。ピーコさんの毒舌の勢いがあんまりおかしくて。こんなの出したら私のインタビュアー生命にかかわるんじゃないかしら、お仕事ほされちゃうんじゃないかしらって(笑)。

‐辛口トークも抱腹絶倒ですが、後半のピーコさんの恋のお話、阿川さんの聞き上手でエピソードが満載ですね。

ピーコさんのお相手の男の人はいつも、女性が好きだという人。そういう人にピーコさんは惚れる。それで「自分がいて邪魔になることはしたくない。その人のために何をしてあげられたら一番いいかってことばかり考える」んですって。対談集の中では、「サワコにはわかんないわよ」と言われてますが、そんなことないですよ。切ないですけどね。

私もこの年齢になると、ピーコさんの言っていること、頷けます。恋人の関係でなくても、1週間に1度その人に会えるということを、幸せの糧として生きていく。そういう幸せを大事にするっていいなって気がして。

心身ともに元気よく働いたり、生活したり。自由業ですから特に、これから先行きどうなるか分からないですけれど。そうなるとよけい、ピーコさんの言うような人間関係も大切なんじゃないかと思うんですよ。

‐それにしてもお若いです。その秘訣、ストレス発散法など教えてください。

どうなんでしょうか。一つの理由は背が小さかったこと。大きくなっても小さいんだけど(身長150センチ)。だから若く見えるのかな。それから女性は役割分担で外見が変わってくると思うんだけど、私は妻にも母にもならなかったから。

美容に関しては、この頃になってようやく芽生えたんです。お化粧ちゃんとしなきゃいけないと、この3年くらい。それからね、「あの人の前ではキレイにしておこう」という人を作っておくんです。何人かいますよ、そういう人。

ストレス解消は、寝ること。昔から言ってるんだけど、食べることは好きです。でもね、もしスパイ容疑で逮捕され拷問にあったとして、「食べるな」と「寝るな」の選択を許されるならば「食べるな」を選びます、間違いなく。そのくらい「寝るな」はダメ。眠っちゃえばお腹すいてることは忘れられるけど、その逆はないでしょ。飛行機でもタクシーでも、「いつでも、どこでも、誰とでも」寝れます(笑)。

忙しくても毎日12時くらいには寝ています。7時間くらいはたっぷり。

それから、女性は割合2つの場を持っていると安定する気がします。私の場合、テレビで失敗して怒られた時に、活字に戻ってきて落ち着く。編集者に怒られた時、テレビで発散する。その繰り返しでずっと元気でいられるところ、あるかな。肩書が困るんですけどね。報道の時はキャスターと言われてたけど、インタビュアー、エッセイストも実は気恥ずかしい。「物書き中心」ってどうかなって提案したんだけど…。香港の中小企業マンみたい?

‐相手に本音を話させる、当代随一の聞き手と言われます。

お会いした後は、この人に会えてホントに良かったな、面白い話聞いちゃった! と思うけれど。インタビュー前はいつも苦しい。憧れている人だとなおさらのこと。何年やってもそうです。

長くやれば、ここからこちらに飛ばしてみたいな、ノウハウはつかみますよ。でも相手は生き物だから。ここから引き出し開けて多分大丈夫だろうなんてタカくくったら、大概失敗します。予測は必要だけど、そうじゃなかった時の対応ですね。返ってきた答えに意外な部分があったり。そこをもっとつっこんだ方がいいとカンで動くんだけど、ダメだったりすることも。分からないですね、本当に。

でも分かろうとしている態度、あなたに興味があるんですという態度があれば。あなたの話を聞いて、全部分かることはないと思うけど、でもなるべく分かろうとしてこういう質問をしてるんですという誠意を示す。最低限、私にできることはそれだなと。

◆プロフィル

あがわ・さわこ 1953年、東京生まれ。父は作家の阿川弘之。著書に『走って、ころんで、さあ大変』『ときどき起きてうたた寝し』『きりきりかんかん』『メダカの花嫁学校』『無意識過剰』『タタタタ旅の素』(以上、文春文庫)など。1999年、檀ふみとの往復エッセイ『ああ言えばこう食う』(集英社)により、第15回講談社エッセイ賞を、2000年、初の小説『ウメ子』(小学館)により、第15回坪田譲治文学賞を受賞。『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)の司会などでも活躍中。

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