百歳への招待「長寿の源」食材を追う:朝鮮にんじん

1996.11.10 14号 14面

今回は、その存在の貴重価値ゆえ高価、しかしながらたぐい稀なる卓効を持つ健康食材、水前寺のりと朝鮮にんじんのお話。ともに古くから効能が認められ固定のファンを持つが、さらに最近新たな人気を呼んでいる。

(食品評論家・太木光一)

薬用植物の王者朝鮮にんじんは韓国や日本では高麗にんじんと呼んでいる。原産地は北朝鮮や中国東北部の深い山の中で、ここに自生する。

食用にんじんはセリ科であるが、朝鮮にんじんはウコギ科の多年草である。歴史の古い民間薬で奈良時代に渡来、江戸時代には幕府の御薬園で栽培されたという記録もみられる。

幕府が種子を下賜したことからオタネにんじんとも呼ばれ、現在では長野県、福島県、鳥取県、島根県などで栽培されている。

韓国では錦山、紅華山などで栽培され、高品質で有名である。漢方薬剤用ばかりでなく、各種の食品材料として使用。中国では吉林省、黒龍江省、遼寧省が主産地である。

栽培の土壌は寒冷地を好み、湿潤的な気候が適している。強い日光と高温は不適。土質の適応性は厳しく、排水良好、土層深厚で腐植質が多くなくてはならない。

栽培物の採取は六年以上のにんじんについて行なう。細心に掘り起こし根が切れないように注意。よく泥を落とし製品化する。新鮮なものは園参水子と呼び、天然品は山参水子と呼び分けている。自然物は一本数十万円の高値。

朝鮮にんじんにはパナシキノールを主成分とする精油とサポニンや各種のビタミンが含まれているが、非常に複雑であり、まだ十分解明されていない。

サポニン類は中枢神経の興奮や疲労に効果があり、病気の予防だけでなく、病後の回復促進にも適していることが判明している。

古くから貴重品視され、漢方では気を補う薬物として強壮、健胃、滋養剤とみている。

この薬理と効能を中薬大辞典に求めると、

・血圧降下作用あり、栄養障害を治す

・中枢神経系に対し興奮作用と安定作用がみられ、疲労回復に効果あり

・身体の抵抗力を増す。老人性貧血症に有効

・関節炎とリウマチに有効

・食欲不振、全身衰弱に効果的

・制がん作用もみられる

などと広く効用が評価されている。

また、朝鮮にんじんの加工品は非常に多く、顆粒、粉末・液体など、根そのものを煎じて飲むのが望ましいが、インスタント品が急増中。

ドリンクは韓国で最も人気が高く容易に入手可能。残業など仕事のきつい時に常時愛飲されている。

また、料理、薬膳料理などに欠かせない食材となっている。数多くの傍床(脇膳)に生白にんじんのスライスがはちみつとともに出される。サッパリとして歯ごたえもよく美味である。

スタミナ料理の人気者は蔘鶏湯(サンゲタン)である。若鶏の腹ににんじん一本、もち米、なつめ、栗などを詰めて釜で炊く。

朝鮮にんじんは抜群の薬効のもとに世界の保健食材となっている。アメリカやドイツの健康食品店では、ロングランの人気食材として多くの熱烈なファンがみられる。

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