百歳への招待「長寿の源」食材を追う 「ゆば」不足栄養分の補充に

1998.08.10 35号 20面

ゆばは古くから僧院などで作られていた精進料理の一つで、湯波・油皮・豆腐皮とも書かれていた。中国から伝来したもので腐皮(フーピー)と呼ぶ。腐皮を竹のように細長く干したものは腐竹(フーチュン)と呼ばれている。

ゆばはタンパク質と脂肪が豊富で僧堂生活には欠かせない栄養食品とされてきた。逆に一般的には精進食材として長い間軽視されてきたのである。

しかし最近では認識が高まり、植物性の栄養素はむしろ動物性のものより優れた点が見出され、人気を呼んでいる。特に消化吸収がよく高齢者には最適。貯蔵性がよく周年利用できて便利との声もある。

製法は良質の大豆を一晩水に浸して柔らかくした後、水を切り石臼でひくとドロドロの液体がとれる。これを釜に入れ加熱、頃合いをみて粗い布袋でこし、細袋でさらにこす。ここでとれたのが豆乳で、ここまでは豆腐の作り方と同じ。粕(おから)を取り除き別の鍋で煮る。この鍋は二重底となっている。煮立てていると薄い膜ができ、これを引きあげたものが生ゆばである。

生ゆばは大豆のエキスで鮮度が生命、煮た大豆のかぐわしい香りと柔らかさが身上で、わさびしょう油やポン酢しょう油で食べたり、含め煮・椀だねなどに。乾ゆばは乾物で保存性も高く戻すと弾力があり歯ごたえもみられる。

ゆばはコレステロールの全くない植物タンパク源であり、チーズに優る栄養食品とも呼べよう。さらにカルシウム・鉄・カリウムに恵まれ、現在の日本人の食生活に不足しているものの補充になる。

カルシウムでみれば牛乳の二倍、鉄で牛レバーやほうれん草の二倍強、またカリウムも極めて多い食品である。ビタミンではA・B1・B2が適度に含まれEも多くみられる。

カルシウム不足は神経の過敏からイライラが生じ、また頭の働きも鈍くなる。鉄の場合、不足すると貧血になり疲れやすく物忘れしやすい体質となる。ゆばを食べれば同時に解決する貴重な存在といえよう。また、ゆばの消化率は九五%と極めて高い。病人やお年寄りなどの栄養食品にも適している。しかも伝統食品のため日本人の口によく合うことも有利な点といえよう。

日本のゆばは京都が中心産地で京風料理の食材として欠かせない。関東では輪王寺御用とされている日光ゆばが有名である。

生ゆばの日持ちは冬期で四~五日、密封して冷蔵庫に入れておけば約一週間保つ。乾ゆばでもあまり長くおくと脂肪が酸化して味が落ちるので一カ月が限度である。

中国料理ではゆば料理が多く、麻辣豆魚(巻きゆばのあんかけ)、素火腿(精進ハム)、炸素肉(精進肉)など精進料理も多く、牛肉やえびなどをゆばで巻いて蒸した点心などは美味である。

消費面で関西地区が中心であったが健康的特性やお年寄りなどファン層の拡大で市場は成長をみせる。この傾向は、さらに強まると思われる。

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