大豆イソフラボンで骨がため、大豆で更年期を明るく過ごす
日本人の平均寿命は女性八三歳、男性七六歳と世界一長寿だ。その最大の理由は日常の食生活にあることが、世界保健機関(WHO)が十数年にわたり実施してきた国際共同研究によって明らかになった。さらにその詳細をみると、大豆食品を豊富に食べていることが上げられている。確かに大豆は日本人の食生活に古くから重要な地位を占めてきた。しかし近年食生活の欧米化が進み、残念ながら若い世代を中心に大豆食品の摂取量が減少してきている。長寿国日本とまでなった一因である大豆。身体に良い食べ物として伝えられてきた伝統食を現代の研究が明らかにした結果と照らし合わすと、再び熱くリクエストしたくなるはずだ。
日本人女性の更年期障害は欧米人に比べると症状が比較的軽微であるといわれてきた。この要因には大豆食品が由来すると考えられている。大豆製品のトップメーカーであるフジッコ(株)では大豆に含まれるイソフラボンについての研究を行い、結果を次のようにまとめている。
「大豆に含まれるイソフラボンには女性ホルモンに似た働きがある。更年期に入った女性は女性ホルモンが欠乏状態になり骨粗しょう症を引き起こしやすい。しかしイソフラボンの作用によって更年期障害を緩和し、骨粗しょう症を防ぐことが期待できる。
また、二四時間採尿が完全であった女性四八例についての調査結果では、骨密度の高い群ほどイソフラボンの排泄量が有意に多くなっていることが明らかになった。これは骨密度が高い人ほど大豆食品を食べており、それに伴って尿中のイソフラボン排泄量が多くなったためである(表参照)。さらに、メスのラットの卵巣を摘出し調査した結果においてもイソフラボンの投与群では骨密度の維持が確認できた。
以上の結果より、大豆に含まれるイソフラボンはホルモンバランスの崩れを緩和し、更年期に起こりやすい疾病についても抑制する。また骨強度の低下を抑える作用が期待できるといえる」
イソフラボンについては欧米でも盛んに研究が行われている。近年の研究ではガン、脳卒中や心臓疾患などの予防効果が認められ、栄養・嗜好性のある食品としてだけではなく生体防御機能の観点からも注目を集めている。具体的にはイソフラボンの一つであるゲニステインには乳ガン、前立腺ガン、肝臓ガン、胃ガン及び白血病に対する抑制効果が確認されている。
研究が進み明らかになったもう一つに大豆レシチンがある。レシチンとは大豆などに含まれる油分の一種で、レバーや卵黄、鰻などにも含まれるが、これら動物性食品ではレシチンと同時にコレステロールも取ってしまうので常食には向かない。植物性食品の大豆やピーナッツから摂取することをおすすめしたい。
また、レシチンは「ボケを予防する」としても一時マスコミを賑わした。実際にレシチンは不飽和脂肪酸、コリン、グリセローズ、リンといった物質から構成されているが、このうちボケ防止に効果があるのがコリン。コリンは脳の命令を神経に伝える時に必要な大切な物質だ。老人性痴呆症や自律神経失調症の起きる原因はコリン不足ともいわれている。また、肝臓の悪い人はレシチン不足から、中性脂肪が増え脂肪肝をつくり肝臓機能が衰えてしまう可能性があるという。
たくさん摂取した方が良さそうなレシチンだが熱に弱いという弱点もある。効果的にレシチンを取るには粉末タイプなどの製品を使用するのも一つの手だ。以前本紙で行ったインタビューで女優の清川虹子さんが「健康を考え愛用している」と話した「カリフォルニア・レシチン」もレシチン商品だ。問い合わせは(株)エリートフーズ、Tel0471・62・2811まで。
市販されている大豆食品中にはどれほどのイソフラボンが含まれるのか。同じくフジッコ(株)で食頻度の高いと思われる市販大豆食品について、イソフラボンの含有量について一五種類の調査を実施している。測定した中で総イソフラボン含有量が最も多かったのはきな粉、次いで納豆、三位に油揚げと煮豆という結果だった。
また、世帯主年齢が五〇歳以上の世帯の一人一日当たりのイソフラボン摂取量に変化が少ないのに対し、五〇歳未満の一日当たりの摂取量は減少しているという。若い年代での大豆食品の消費量が年々減少していることは間違いないと思われ、これは若年層を中心に食生活の欧米化が進んでいることを示している。今後もこの傾向が続けば、日本人のイソフラボン摂取量ももちろん減少し続けてしまうだろう。
(取材協力:フジッコ(株))