あした天気になあれ:なぜか「特異日」

1999.07.10 46号 5面

6月の半ばを過ぎ全国的に梅雨入りした頃、東北の山に出かけた。秋田駒ヶ岳や乳頭山などブナ林と可愛い高山植物が豊富な山域を三日間歩こうという企画である。もちろん雨に降られることは覚悟していてその準備は怠らなかったのだが、実に三日間ともとても良い天気に恵まれて、めいっぱい山歩きを堪能することができた。その時晴れた山頂から南、山形県方面の空に、いかにも梅雨という湿った重々しい灰黒色の雲が停滞しているのを眺め、私は「してやったり」と、一人納得していたのである。

月平均一五日も山に入っていると、雨に出会うことは珍しくない。雨は雨なりに楽しんで山歩きをすることもできるのだが、やはり晴れていたほうが気持ちいいのが正直なところである。だから日程を組むときもただ闇雲に並べているわけではなく、その時々の気候の特徴、雨の周期などを考慮して四カ月ほど前から計画を立てている。

今回も梅雨入りはしても、この時期秋田なら前線の北上に間に合うのではないか、という予想がぴったりはまってくれた結果の「してやったり」なのである。

気象の特異日というのがある。なぜかその日はある一定の天気が多く現れるという日である。

例えば10月10日の体育の日は、昭和69年の東京オリンピック開会式の日だったのだが、晴れの特異日ということで決められたことをご存じの方もいるだろう。他にも11月3日はやはり晴れの日、7月5日は東日本の集中豪雨特異日、台風の上陸は8月21日や9月26日に多い、などである。もっと身近に、近所の神社のお祭りは毎年雨だとか晴れだとか、これも一種の観天望気で、決してバカにできない貴重なデータになるのだ。

さらに、梅雨や春、秋雨前線時期以外、天候はだいたい一週間くらいの周期で変化することが多いということを加えて日程を組んでゆくと、晴天に出会う確率がかなり高くなってくるというわけなのである。

さて、7月下旬から8月上旬。この時期は梅雨明け10日といって、清々しい晴れが続き、風も弱く、一年中で一番天候が安定する期間である。だから梅雨空になんとなく沈んでいた身や心をぐっと伸ばし、健康を取り入れるために、おおいに山へ出かけようではありませんか。

(日本山岳ガイド連盟

公認ガイド 石井明彦)

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