シラカバのがん・チャガに奇跡の効用

2000.07.10 58号 7面

白くて細く気高いその姿から、ロシアでは「貴婦人」と称されるシラカバ。その貴婦人に何年も寄生してエキスを吸い取り、最後には枯らしてしまうことから“シラカバのがん”といわれるキノコが、実は人間のがんやエイズに効用があるとして脚光を浴びている。ロシア名でチャガと呼ばれる“シベリア霊芝”である。

黒くゴツゴツしたチャガの見た目はいかにも不気味で、キノコのイメージとはほど遠い。貴婦人のエキスを吸い取るドラキュラのごとき生態からは、まさに悪玉という言葉がぴったりだ。ところがその実体は、がんやエイズなどの難病に苦しむ人を救う“天からの贈り物”というのだから、外見での判断は禁物の最たる例である。

ロシアのノーベル賞作家ソルジェニーツィンの小説『ガン病棟』の一節「チャガをお茶代わりに飲んできたロシアの百姓はがんにかからない」により、その名は日本にも紹介され、当時はサルノコシカケとして一大ブームを巻き起こした。 ロシアでは、古くから民間薬として使われていたが、ソ連全盛時代の一九六〇年代に国を挙げて科学的研究がなされ、一九七六年には医薬品として認可されている。

しかし、生きたシラカバにのみ寄生するという特異な生態である上、冬はマイナス四〇度以下、春は雪解けでぬかるみ、夏は蚊やブヨの大群が襲うという悪条件により採取が極めて困難ということ、さらには旧ソ連政府による厳重な管理のために海外に流出しなかったため、チャガは長い間“幻のキノコ”とされてきた。

最近になって、やっと日本にも入ってくるようになり、その成分が詳しく解明され始めたところだ。

チャガには、霊芝が持つがん、糖尿、動脈硬化、脂肪肝、心臓病の予防、血中脂肪の軽減などの効能がすべて備わるが、最大の特徴は、そもそも健康や美容に効能が認められてきたシラカバのエキスが丸ごと詰まっている点だ。

シラカバの樹液には、各種の多糖類、サポニン、アミノ酸、ミネラルなど、身体に良いとされる成分が多く含まれる。雪解け期のわずか数週間のみ採れるという“シラカバのジュース”(樹液)は健康の元として重宝されてきた。また、サウナの本場、フィンランドやロシアでは、シラカバの枝で身体を叩くことで、肌や身体にそのエキスを染み込ませてきたという。解毒作用や抗炎症作用によって漢方薬としても使われてきたし、最近は必須アミノ酸を豊富に持つことから、日本でもスキンケアの方面で注目されている。

霊芝とシラカバの特性を併せ持つチャガは、例えばがんに対しても二つの効能を持つことが大きな魅力だ。漢方でいう 血(血の滞り)や膿などの固まりであるがんそのものを退治する働きと、がんによる体力の衰えを補う働きの二つである。さらに、免疫促進作用によって自然治癒力を高めたり、苦痛が軽減されて気分も明るくなるため意欲が高まるという間接的な効用からQOL(生活の質)の面でも注目されている。

チャガの抽出成分には、フラボノイド、トリテルペノイド、イノシトール、アガリチン酸、アルカロイドリグニンなどの存在が明らかになっているほか、βグルカンなど多糖類も多量に含まれていることなどが分かってきたが、その何がどのように機能しているかは、まだ研究段階にある。

しかし、がん手術後の養生に効果があった、がん転移が防止されたなどのほか、アトピーや花粉症に効いた、リウマチやゼンソクが良くなった、筋腫やポリープが小さくなったなど、利用者からの声は日増しに多くなっているという。また、エイズウイルスの増殖を抑制したという学会発表もなされている。“奇跡のキノコ”として、さらなる研究が待たれるチャガである。

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