おはしで防ぐ現代病:黒豆の煮汁に血圧を下げる効果

2000.12.10 64号 14面

血液循環には、血管の運動性(収縮・弛緩)と血液の流動性(サラサラ・ドロドロ)の両方がかかわっている。血液をサラサラに浄化するといわれる黒豆の煮汁。毛細血管での血液流動性を測る方法を世界で初めて開発し、そうした黒豆の効果を科学的に確かめる研究をしている農林水産省食品総合研究所食品工学部の菊池佑二上席研究官に聞いた。

人間の毛細血管は、組織によっても違いますが、径は約六ミクロン(一ミクロンは一〇〇〇分の一ミリ)程度。そこを約八ミクロン径の赤血球や、それより大きい白血球が変形しながら通過しています。微細な毛細血管を赤血球や血小板、白血球がいかにすんなり通れるか否かが、血液の流れやすさのカギなのです。

実は太い血管よりも、この毛細血管の血液が流れやすいことが健康にはなにより大切。毛細血管こそが、組織の隅々まで酸素や栄養分を供給し、二酸化炭素や老廃物を回収しているもっとも大切な血管なのです。

そこで毛細血管を流れる時間を測ることで、血液の流れやすさを測定しました。方法は、一〇〇マイクロリットル(一マイクロリットルは一〇〇万分の一リットル)の血液を採り、毛細血管モデルに流し、その時間を測定する。流路の径は毛細血管とほぼ同じ七ミクロンとし、実際の血液の速度にするために圧力をかけました。

研究所の職員など九三人を測定した結果、通過時間は男性で平均四五秒くらい、女性で四〇秒くらいでした。通過時間がかかる人ほど、血液がドロドロであるというわけです。ドロドロの血液とは、血小板の凝集性が高く、赤血球が変形しにくく、白血球の粘着性が高くなっている状態。血小板が凝集しやすい人は血圧も高くなる傾向があります。

こうなった人でも黒豆の煮汁を飲む前と後では、血液の流れやすさに明らかな違いがみられます。煮汁を飲む前には通過に一〇〇秒以上かかっていた人が、飲んだあとは四〇秒以下になった例や、九〇秒以上の人が五〇秒以下になった例もあります。

通過時間の長い人の血流画像を見ると、煮汁を飲む前は、血小板が凝集して流れにくい様子が見てとれます。飲んだあとは血液内に障害物がなくなり、スムーズに流れます。

黒豆の煮汁には血小板凝集に関係する物質を生成するアラキドン酸の代謝をブロックする物質があるとみられています。

また黒豆には、悪玉コレステロールを下げるリノール酸・レシチン・リグニンや、中性脂肪を下げるリノレン酸、血管を広げるビタミンE、塩分を出し血圧を下げるカリウム、血液をサラサラにする植物エストロゲンのダイズイン・ソヤサポニン・グリニシンなど数多くの成分を含んでいます。その上、ミネラルとして多く含まれるカルシウムやマグネシウムには、平滑筋という血管の筋肉を緩める作用があるのです。

このように、黒豆の煮汁には、血管の筋肉を柔らかくして血管を広げ、流れる血液の粘りをとり、血圧を下げる効果が考えられるほか、糖尿病・便秘症・白髪・抜け毛・声帯病変にも有効性が報告されています。

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