ヘルシートーク:エッセイスト&イラストレーター 中山庸子さん

2008.12.10 161号 05面

 来年こそ、日記をつけてみようかな。でもまた三日坊主で終わるかも…そんなあなたに、いいことだけ4行を書き込む「いいこと日記」はいかが? ノートや日記で有名な中山庸子さんに、夢がかなう日記のお話を聞いてみましょ。

 ◆1 不思議に「いいこと」が増えていきます!

 「いいこと日記」は、「いいことをメーンに書く日記」の略です。私に「書くこと」がもたらす素晴らしいチカラの存在を教えてくれたのが、この日記なんです。つけ始めてから、それまでより断然明るくラクな気持ちで暮らせるようになりました。その上、確実に「いいこと」が増えてきて、それを日記にとどめておくことが楽しくなって。結果として25年、日記を書き続けています。

 ホントは私、小学生の頃から作文は大の苦手だったんですよ。夏休みの宿題なんかで、日記にトライしても半年も続かずばっかり。そんな私がこの日記をいつどこで始めたのかというと、1983年の2月1日、場所は病院のベッドの上。その日、体調を崩してかかりつけの病院に出向いた私は、切迫流産と診断されました。かなり厳しい状況でしたが、まだ妊娠継続の可能性が若干残されていたので、安静のためそのまま入院に。

 急にぽっかり空いた時間の中で、その年の日記帳を開いてみたんですね。その時点では1月2週目からほとんど空白になっていた日記帳。いま読み返してみると、2月の欄にはこんな内容が書かれています。もしこのまま妊娠継続でいけるのなら、その場合は間違いなく、「いいこと」なので、しっかり模範的な妊婦として過ごす決意をしています。今回は残念ながら…となった時を想定して、その場合は、●買おうかどうか迷ってた春物のスーツを購入●体力をつけるべくテニスを始める●ミニ展覧会を開く-というプランも立てられる、と。妊婦になったら、しばらくは遠のいてしまいそうな「したいこと」「いいこと」を中心に書き記しています。そのプランのおかげで、「今回は残念」な結果になったとしても、ずっと落胆したままの自分にならなくてすむという支えができ、落ち着きを取り戻して、無事退院。その後の9月17日の欄には、「昼過ぎ入院。無事女の子出産」という文字が躍っています。

 ◆2 ヒットの夕飯、自画自賛!

 学校を卒業して15年間、郷里の群馬で女子高の美術の教員をしていました。一番多感な年頃の彼女たちの、いろんな相談に乗りましたね。教師って、卒業しても生徒たちのこと、気になるんですよ。あの子は職場でうまくいってるかな、主婦になって夕飯の献立、子どもの教育問題、悩んでないかなとか。私は彼女たちにとってはずっと先生、先に生まれた分、少しずつ人生を先に生きて、少し早くそういうこと、超えています。ノートや日記の本を書きながら、そんな彼女たちに話しかけているんでしょうね。

 人はついつい他人と比較しがち。でも自分が落ち込んでいる時に人のいいところと比較するのもちょっとしんどいし、逆にうまくいっていない人と比べて「あの人よりはマシ」と思うのもサミシイ。学校の通信簿は確かに相対評価だけど、でもそうじゃなくて自分だけの軸を持って、昨日の自分とか明日の自分と競うのはどうかなって、よく生徒に言っていました。実はそういう私自身が案外そうでなくて、お料理が上手な友だちをすごいと思ったり、いつもオシャレでおウチを綺麗にしている人を見ると、ああ!と思ったり。子どももどうもあちらのほうがよく育ってるかな、うーん、私のせい…なんて。でもそんなふうに他人と比較するよりも、自分を基準にしたら現状にあまり高いものを求めなくてすむ。いまあまり高くないほうが幸せともいえます。金メダル取っちゃった人は、後が大変ですからね。

 誰に見せるわけでもない日記で、たくさん自分を誉めましょう。人に話したら笑われそう、自慢してる~って思われることも、相手が日記ならOK。私は落ち込んだ日、よく前の年の同じ日の欄を読み返します。同じように落ち込んでいる日もあります。そうかと思うと信じられないくらい頑張っている日もあります。不思議なことにどちらも励ましてくれるんです。「なんだ、去年もやっぱりこんな日があったの。でも立ち直って1年たってる」も1つの「いいこと」だし、「え。こんなに頑張れたこともあったの~?」という自分もけなげだし(笑)。

 そうそう夕飯の献立、特に家族に好評だったレシピは必ず書いて自画自賛。1年して読み返すと、「あ、今日、これ作ろう!おでんにカボチャか、もうそんな季節ね」って。迷った時は日記からです。

 ○写真えとき

 最近の日記ですか。では風邪を引いて寝込んだ1日から。「そうだ!読みたかった江戸の捕物帖を読もう!昔の庶民は薬もないし、お医者さんにもかかれない。私はこんな温かい部屋でヌクヌクと、ありがたい。買い物に行けないけれど、家にある根菜を全部お鍋に入れて豚汁とけんちん汁の合いの子に!」そんな感じです(笑)。

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 『書きこみ式「いいこと日記」2009年版』と、楽しいアイデア満載の文庫『「なりたい自分」になれる中山式「いいこと日記」をつけよう!』をセットで、読者5人にプレゼント。詳細は7面に。

 ○プロフィール

 なかやま・ようこ 1953年、群馬県生まれ。女子美術大学、セツ・モードセミナー卒。県立女子高校の美術教師を経て、エッセイスト&イラストレーターとなる。代表作に『「夢ノート」のつくりかた』(大和出版)、『「なりたい自分」になれる中山式「いいこと日記」をつけよう!』『こころの霧が晴れる言葉』(ともにマガジンハウス)

 『中山庸子の本屋さん』http://www.matsumotonakayama.co.jp/

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