ヘルシートーク:俳優・内野聖陽さん

2012.07.10 204号 05面

 検視官という特殊な職業を通して人間の機微を描き、2010年の民放ドラマでトップの人気を誇った『臨場』が、テレビの枠を超えて劇場にやって来た!破天荒で豪快、歯に衣着せぬもの言いの男は、しかし家に帰れば家庭菜園に夢中…。そんな倉石義男を演じる演技派俳優の内野聖陽さんに、作品の魅力についてお聞きしました。

 ◆検視官は人の魂の声を聴く“巫女”のような存在

 この作品の検視官は、人の魂の声を聴く「巫女」のようだなって思います。本職の検視官の方に教えていただいたのですが、科学的な分析ももちろん行いますが、実際にはやはり死体に問いかけるそうです。主人公の倉石は、かつて事件で妻を亡くし、その最期の“声”を拾えなかった。その悔恨が、彼の「魂の声を聴く力」をさらに育てています。

 今回の作品も、そこは変わらないテーマですが、「映画はテレビドラマの延長」と感じてほしくないという気持ちが強くありました。連続ドラマを演じていると、キメのシーンがどうしてもひとつの型になりがちです。スタッフのチームワークができあがっているのはとてもやりやすいのですが、『臨場 劇場版』を初めて観てくださる方にも違和感なく楽しんでほしいと思っています。

 なぜ、彼が検視官になり、捜査会議に乱入してまで死者の声を大切にしているのか、根底にあるものを改めて徹底的に探っていきました。テレビ版の『臨場』は人間ドラマの性格が強かったのですが、劇場版はストーリーが濃厚で伏線やアクションも多く、テレビ版とは違ったスリルや迫力を感じていただけるのではないかと思います。テレビに比べてスクリーンは大画面なので、微細な表現が強烈に効いてくる世界。ただでさえ倉石のキャラクターは暑苦しいと言われてるんで(笑)、表現のさじ加減を考えながら、自分の信じるままに演じました。

 ◆こんな男がいたら…倉石は僕の憧れです

 『臨場 劇場版』では、ある通り魔殺人事件の犯人の青年を巡って2つの連続殺人事件が起きます。青年を無罪にした弁護士、青年の精神鑑定を担当した医師が同時に殺害されたことで、さまざまな関係者の思惑や伏線が絡んでいきます。

 台本を読んだ時、事件描写があまりに生々しく感じ、最初は正直「どうなんだろう…」と思いました。けれど今の時代、人災にしても天災にしても、いろいろな意味で“死”が身近にあります。今回の作品のような悲痛な事件のストーリーも、決して作り物の世界の話ではないのかもしれません。だからこそ、捜査一課を敵に回してでも無念の死者の声を拾おうとする、倉石のような存在がいたらステキですよね。検視官という職務の領分を超えて闘う姿に勇気をもらえる。こんな男が本当にいたら、どんなに救われるだろうと思うのです。

 僕の中で倉石は、おとぎ話であり憧れです。だから倉石のキャラクターや演技で、自分なりの想いを伝えたり提案をしたり…。役者の領分を超えて参加させていただいたほど思い入れが深い役です。

 ◆もの言わぬ野菜から感じる、生き物への愛情

 倉石は、一人暮らしの部屋のベランダでたくさんの野菜を育てていて、まるで愛する女性に対するように毎朝優しく話しかけています。「食べてほしい子はだ~れかな」とかね。仕事の現場では無骨で怖いおっさんがね(笑)。そして、もぎ取ったきゅうりやセロリを丸かじりしながら現場にやって来るのがお決まりのパターンですが、実はこれらは原作にないシーン。セリフも僕のアドリブです。

 “死”に向き合っている人は、普段は生き物に囲まれていていいんじゃないか。また、もの言わぬ死体に問うように、もの言わぬ野菜に問いかけることで、生き物への慈しみや愛情、“生”の大切さを表現できるんじゃないかと思ったんです。それで、こういうのはどうかなと提案してみたところ、おかげさまで倉石のキャラクターとして定着しました。

 僕自身も野菜は大好きで、朝食には必ず食べています。特に好きなのは山菜。つい先日、会津の山に遊びに行ったんです。ワラビ、フキノトウ、たらの芽、あさつきなど、取れたての山菜をその場で天ぷらにして食べたのが絶品でしたね。「百歳まで生きられるのでは?」と感激するほどのおいしさでした。「山菜で百歳元気!」、いいでしょう?

 ●プロフィール

 1968年神奈川県生まれ。主な出演作品に『風林火山』(07)、『ゴンゾウ 伝説の刑事』(08)、『JIN-仁-』シリーズ(09~11)、『臨場』シリーズ(09~10)、『忠臣蔵 その義、その愛』(12)などがある。

 ◆『臨場 劇場版』6月30日(土)~東映系で全国ロードショー中

 2012『臨場 劇場版』製作委員会

 出演:内野聖陽、松下由樹、渡辺大、平山浩行、高嶋政伸/段田安則、若村麻由美、長塚京三