ヘルシートーク:女優・南果歩さん

2014.04.01 225号 05面

 『精霊流し』や『解夏』『眉山』『アントキノイノチ』に続き、さだまさしの小説を映画化した『サクラサク』。同居する父の認知症発症を機に、長野や福井を旅しながら家族の絆を取り戻そうとするロードムービーです。家庭を顧みない夫に失望し、孤独を感じている妻・昭子を演じる南果歩さんに、撮影中のお話を伺いました。

 ◆一見幸せそうな家庭でも、家族にしか分からない問題がある

 映画『サクラサク』に登場する大崎家は、一見、平穏に暮らす幸せそうな一家に思えます。ですが、どこの家庭にも家族にしか分からない問題があります。専業主婦の昭子にとっての悩みは、夫婦間の信頼関係が崩れ去ろうとしていること。家族は人生のベースとなるもので、家にいる時間の長い主婦にとっては、家庭の冷たさが一番こたえますよね。日常の生活で少しずつ蓄積していった家族のヒビは修復しがたいものですが、大崎家は非日常の旅に出ることで、閉じていた一人ひとりの考えや思いを知ることができるんです。

 夫・俊介が一生懸命働いているのも家族のため。多忙な日常の中で、いつも家族を優先してほしいわけではありませんが、大事な場面で向き合うことは、とても大切です。家族の誰かにサポートが必要な時は、自分のことはさておき、みんながその人に気持ちを注いで支えてあげる。ここぞ、という時に団結し合える家族でありたいですよね。

 ◆体験や時間を共有することで家族の絆が強くなる

 撮影は東京の家からスタートして、長野県・諏訪市、福井県・勝山市と、ストーリーと同じ流れで進んでいきました。日を重ねるごとに、キャスト間の距離もどんどん縮んでいきました。藤さんが演じる認知症の義父は、旅行中も現実と意識の中を行ったり来たりするのですが、薄れていく記憶の中でも、お互いが一緒に過ごした時間はきっと刻まれていると思うんです。旅行を通じて大崎家の5人が共有した時間や景色は、家族のかけがえのないものになるでしょうし、同じ時間を過ごしてともに経験することがとても大事なんだと思いました。この映画をきっかけに、家族を見つめ直す機会が持てたり、「両親に会いたい」「次の休みは家族旅行に行こう」と思ってもらえたらうれしいですね。

 高齢者の方の可愛らしさには、赤ちゃんとは違った“無垢さ”を感じます。年を重ねて多くのことを経験し、辛苦をなめてきたからこそ、余計なものがそぎ落とされた状態に近いということでしょうか。さまざまな経験が何層にも積み重なってろ過されているぶん、無垢できれいな心をお持ちなのだと思います。そのように可愛らしさを持てるのならのなら、年を重ねていくのが楽しみになりますね。

 ◆手打ちそばや「へしこ茶漬け」などロケの炊き出しが印象的でした

 撮影の時はロケ弁が多いのですが、『サクラサク』の撮影はボランティアのみなさんのご協力のおかげで、長野でも福井でも、作りたての温かい食事をいただける機会が多かったんです。

 勝山市では、手打ちそばを現場でゆでていただき、にんじんやたまねぎなどのかき揚げと一緒にいただきました。おいしすぎて、皆でおかわりしたほどです(笑)。

 福井は「へしこ」が有名ですが、美浜町ではへしこ茶漬けやふぐのみそ汁、いか焼きなどを出していただきました。へしこはお店によって味に変化がありますし、血圧を下げる作用があるそうで、身体に配慮した食事なんです。

 私は水をよく飲むのですが、長野のロケ中に通っていた和食屋のご主人に、おいしい湧水の場所を教えてもらってペットボトルで汲みに行きました。湧水は全国に多くあるので、現地まで行ってその場で飲むのも好きですね。

 ◆夏はゴーヤやきゅうりのグリーンカーテンを自宅で!

 ロサンゼルスに住んでいた時、よくファーマーズマーケットに通っていました。植物のパワーにあふれていて、そこにいるだけで元気になれますし、生き生きとしたファーマー(農家)が作った野菜なら、間違いなくおいしいと思えますよね。スナップえんどうがとても安いので、グリーンサラダを作ることが多かったです。軽くゆでたスナップえんどうにグリーンピースを加えて、ごま油や薄口しょうゆ、時には柚子こしょうやマスタードで味付けしたり。野菜に甘みがあって、グリーンの色味もとても綺麗ですよ。

 自宅では毎年夏に、ゴーヤやきゅうりの苗を植えてグリーンカーテンを作ります。ゴーヤはチャンプルーなどの他に、切って塩もみして、しょうゆとかつおぶしであえていただくことも。若いゴーヤは苦みが少ないので、ゆでなくても十分おいしいですよ。今年もゴールデンウィークが明けたら、プランターを用意する予定です。

 ●プロフィール

 みなみ・かほ 1984年、映画『伽〓子のために(かやこのために)』のヒロインで映画デビュー。『夢見通りの人々』(1989)で日刊スポーツ映画大賞助演女優賞、日本映画・テレビ制作者協会エランドール新人賞、第32回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞。近年は映画『阪急電車』(2011)や『わが母の記』(2012)のほか、NHK連続テレビ小説『梅ちゃん先生』(2012)、『斎藤さん2』(2013)などに出演。著書に『瞬間幸福』(文化出版局)など。

 ◆『サクラサク』(東映)2014年4月5日(土)より全国ロードショー

 Story:大手電機メーカーの有能な部長、大崎俊介(緒形直人)は、妻・昭子(南果歩)と息子・大介(矢野聖人)、娘・咲子(美山加恋)、俊介の父・俊太郎(藤 竜也)の5人暮らし。周囲からは何不自由ない暮らしに見えるが、俊介は仕事を優先するあまり、家族の問題から目をそむけ続けてきた。そんな中、父が認知症を発症したのをきっかけに、崩壊寸前の家族の姿を目の当たりにした俊介。父の思い出の場所を探そうと、強引に家族を連れて旅行に出る。迷いながら、ぶつかり合いながら5人がたどり着いた場所とは…。

 原作・主題歌:さだまさし

 監督:田中光敏 脚本:小松江里子

 出演:緒形直人 南果歩 矢野聖人 美山加恋 藤竜也ほか