72候を楽しむ漢方スローライフ(76)蓮(はす)はじめて開く
まぶしい夏のはじまり(小暑次候 7月12~16日頃)
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蓮が美しい花を咲かせる頃。泥の中でも清らかに咲き誇る蓮は、「苦難を乗り越えてこそ美しく花開く」と人生の悟り、幸せの象徴として愛されています。梅雨が明ければ蓮の見頃。夏空の下、凛と咲く花を愛でながら、涼やかな水辺の散歩を楽しむのも素敵ですね。
●「熱中症」から身体を守る
今年の夏は、厳しい暑さが予想されています。となると、気になるのは「熱中症」。真夏はもちろん、まだ身体が暑さに慣れていない梅雨明けの時期にも起こりやすいので、油断せずにいまからしっかり対策を取りましょう。
中医学(中国の伝統医学)では、熱中症は「気陰(いん)不足」といい、主に体内の「気(エネルギー)」と「水分」の不足によって起こると考えます。主な原因は、夏の厳しい暑さにより大汗をかくことで体内の水分が流失し、同時に気も失われること。また、身体から水分が出ていった結果、循環血流が低下し「気血(けつ)不足」状態になり、少ない血流(液)を身体全体に巡らせるために、通常よりも「心」を動かすことで心拍数が上がり、一層、気の消耗が激しくなります。気、陰(水分)、血不足の悪循環に陥り、心肺機能に負担をかけている状態です。さらに水分不足で身体の熱を冷ますことができなくなり、余分な熱がこもって熱中症を引き起こしてしまうのです。
とくに体温調節がうまくできない子どもや高齢者は熱中症にならないよう、健やかな体質づくりを心がけましょう。
●「気」と「水分」の充実を
熱中症対策のポイントは、不足しがちな気と水分をしっかり養うこと。エアコンを上手に使って汗をかき過ぎないようコントロールし、こまめな水分補給を心がけましょう。コップ1杯程度の常温のお茶や水を、のどが渇く前に取るようにします。
体内の気や水分は、滞らずスムーズに巡ることが大切。そのためにも、朝夕の涼しい時間にストレッチなどで適度に身体を動かす習慣を。睡眠をしっかり取り、暑さで消耗した体力を回復させることも大切です。
食材は、身体の熱を冷ます西瓜、冬瓜、緑豆春雨、オクラ、セロリ、潤いを生むレモン、梅、白きくらげ、気を養う山芋、大豆製品、うなぎなどがおすすめ。漢方では、体内の気と水分を養う『イスクラ麦味参顆粒(ばくみさんかりゅう)』などがよく使われます。
監修:秋本佳媛(中医学講師)
◆ハレの日薬膳レシピ:冬瓜春雨スープ
身体にたまった余分な熱を取り、喉の渇きを癒やす冬瓜を使って
エネルギー46kcal たんぱく質4.9g 塩分0.9g(1人分)
<材料・2人分>
・冬瓜…………………………80g
・緑豆春雨……………………10g
・くちなし…………………1/2個
・カニ(缶詰ほぐし身)………50g
・白きくらげ(乾燥)……………2g
・生しいたけ…………………2個
・オクラ………………………2本
・干し貝柱粉末…………小さじ1
・水…………………………600ml
・塩・こしょう………………適宜
<作り方>
(1)冬瓜は皮をむき種とわたを取り、拍子切りにする。
(2)白きくらげは水で戻し、約30分ゆでてやわらかくし、かたい部分を取り一口大にする。
(3)しいたけは薄切り、オクラは5mmの輪切りにする。
(4)小鍋に200mlの水、くちなしを入れ煎じる。春雨を煎じ液に浸す。
(5)鍋に水、干し貝柱粉末を入れ、冬瓜をやわらかくなるまで煮る。
(6)カニの身と汁、白きくらげ、しいたけ、オクラ、春雨を入れてさっとひと煮立ちさせる。
(7)塩、こしょうで味を調える。
レシピ担当:石崎康江(東京栄養士薬膳研究会)
●冬瓜は熱を冷まします
24節気72候は、古代中国で始まった暦が日本でも取り入れられ、風土気候に合わせ明治まで使われていました。日々の中に少しずつ感じられる季節の移ろいを、楽しみましょう。