生協特集
生協特集:進化し続けるロングセラー、ミックスキャロット 「特別な、あたりまえ」を追求
◆素材の味生かし刷新 子どもにもっと野菜を
日本生活協同組合連合会(日本生協連)は1981年末にPB商品であるコープ商品の中で、ニンジンとフルーツをあわせた野菜果汁飲料「ミックスキャロット」を発売、そのミックスキャロットは消費者の嗜好(しこう)の変化に合わせて進化し続けてきた。日本生協連のコープ商品は今年60年を迎え、キャッチコピーとして「特別な、あたりまえ」を採用。「組合員と“特別”を“あたりまえ”にしてきた60年」として訴える。「ミックスキャロット」の歴史を追って「特別な、あたりまえ」を読み解く。
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「ミックスキャロット」は国産ニンジンに7種のフルーツ(リンゴ、オレンジ、ミカン、バナナ、パインアップル、ブドウ、レモン)をミックスした。素材の味を生かした、コープ商品で人気ナンバーワンのジュース。今年春からのリニューアルでは、ニンジンの割合を増加。子どもでもおいしく飲めるフルーティーな味わいで、子どもにもっと野菜(ニンジン)をとらせたい親の思いに応え、国産ニンジンの割合を発売以来最も多い60%まで増量した。
品揃えも刷新し「ミックスキャロットスムージー」を新たに追加する。ニンジン繊維を含んだ果汁やリンゴピューレを使用し、とろっとしたおいしさが楽しめる。また、日本生協連のプラスチック包材への取組みの一環として、紙パック付属のストローを再生可能プラスチック5%使用のストローに切り替える。日本生協連は、2030年までに飲料用ストローをプラスチック以外の素材に100%切り替えることを目指している。
●厳しい評価の野菜ジュース
ミックスキャロットの開発は「野菜嫌いの子どもたちに栄養価の高いニンジンを何とか食べてもらいたい」という、小さな子どもを抱える組合員の願いからスタートした。1980年ごろのニンジンは現在市場に流通しているものと異なり、えぐみが強く、子どもが嫌いな野菜の上位に必ず入っていた。
NB商品にはすでに野菜ジュースもあったが、子どもをメーンターゲットにした商品ではなかった。
飲みやすくするために果汁を使えばいいという考えはあったが、ニンジンから搾汁する技術を持った企業がなかった。ニンジンからジュースがあまり多く搾れず、コストばかりかかってしまい、割高になってしまうので開発はなかなか進まなかった。
ミックスキャロットを共同開発した飲料メーカーはニンジンを搾汁する技術の開発を71年から進め、74年にニンジンを加熱してから搾汁する技術を確立、「人参ジュース」「人参トマトミックスジュース」を上市していたが、市場は厳しい評価を下していた。
日本生協連は、その飲料メーカーに商品の共同開発を求めた。ニンジン自体は甘みの強い千葉県産を原料として使い、甘み用のリンゴ、ブドウ、さっぱり感にはレモンを選んだ。さらにバナナピューレを使うことで子どもに受け入れられやすくした。
9万人の組合員に試飲してもらい、味の微調整、パッケージなどを決めてようやく81年に上市。その飲料メーカーも84年に自社ブランドで上市、同社の代表的な商品にした。
90年代に入ると、NB商品の野菜ミックスジュースの進展、えぐみの少ないニンジンの流通量が増えて子どもの好きな野菜に変わってしまい、00年からは横ばい状態が続いた。
03年にリニューアル。ニンジンの配合比率を45%に高め、甘さ控えめ、さっぱり感を強めた。発売当初にミックスキャロットを飲んだ世代は孫もできるような年齢になってきている。現在は家族全員で飲む商品に変わってきている。
●キャラクター版で通年供給
コープデリ事業連合は独自にミックスキャロットを活用。「コープデリならでは」の商品づくりの一環として日本生協連と協力し、コープデリの野菜果汁飲料人気で1位の「ミックスキャロット」のパッケージに「ほぺたん」を載せた商品を2014年から供給し始めた。「ほぺたん」はコープデリのキャラクターで、配達用のトラック、電子マネー、商品案内などに使われている。
コープデリを利用されている組合員にほぺたんの認知をより広げつつ、「ミックスキャロット」を知らない組合員や未加入の方にも注目されるきっかけにしたいと考えた。当初はどれくらいの販売量になるかわからず、期間限定でテストマーケティングをした結果、通年での供給に発展させた。
加入者用のサンプルとして配布されることが多く、コープデリのキャラクターが掲載されることで職員の評判は良いという。
「特別な、あたりまえ」は先駆的な商品を開発し、消費者の嗜好、競合する商品、販売チャネルの変化にあわせて進化なのだ。
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