国連WFP協会、エッセイコンテスト2019表彰式 最優秀賞は川口ひろみさん
認定NPO法人国連WFP協会は15日、「WFPチャリティーエッセイコンテスト2019」の表彰式を開催した。本コンテストへの応募総数は過去最多の2万1422作品、寄付金総額も過去最高の257万0640円となり、約8万5600人の子どもたちに栄養価の高い給食を届けられることになった。今年は「私のとっておきごはん」をテーマに、小学4年生から大人まで幅広い世代を対象に作品を募集。応募1作品につき、給食4日分に当たる120円が、寄付協力企業(昭和産業、トヨタ自動車、日清食品ホールディングス、三菱商事)から国連WFPに寄付される。
表彰式では審査委員長を務める音楽評論家の湯川れい子氏が「食べることに関してこんなにも考えていただき、誰かを思いやる、その優しさ、気配りがどれほど大切なのかが胸にしみて、読みながら何回もポロリと泣きました」と全体を講評。今年のテーマである「とっておきごはん」として、おにぎりを取り上げる作文が多かったという。
最優秀賞となる「WFP賞」を受賞したのは、埼玉県・川口ひろみさんの「心の栄養」。子育て真っただ中に起きた、息子との心温まるストーリーをつづった。教師でもある川口さんは「世界には食料難に苦しむ人たちが大勢いることを頭の片隅では分かっていたが、そこに目を向けてくることができなかった。今後はチャリティーの取組みにも積極的に関わり、生徒たちが世界の問題にも思いを寄せられるように導いていくことが教師としての使命だと思っている」と語った。当日は、竹下景子氏によるWFP賞受賞作品の朗読も行われた。(三井伶子)
●WFP賞(最優秀賞) 埼玉県・川口ひろみさん 「心の栄養」
育児真っ只中にフルタイム勤務復帰した私は積み重なる疲労の中、毎日の夕食作りが大きな負担となっていた。職業は高校教師。初めての担任業務、それもいきなり高三受験生を担当し、戸惑いの毎日を送っていた。仕事柄、定時に帰れることはない。生徒に何か問題が起これば帰宅予定時間は大幅に遅れる。
あの日も、そうだった。急な生徒指導のために、予定していた帰宅時間を三時間も過ぎた。ハンドルを握り、家路を急ぐ私の脳裏に五才の一人息子の顔がよぎる。お腹を空かせているだろうか。もしかしたら、怒っているかも。いずれにしても面倒くさい。こっちは疲れているのに。申し訳なく思う気持ちがなかったわけではないが、このときの私には「面倒くさい」それしか思えなかった。
車中で予約を済ませておいたほか弁を受け取り、急いで家にとびこむ。「そう君、ゴメンネ。」口先だけの「ゴメン」を叫びながらリビングへかけ上がると、そこには笑顔の息子。「ママ、遅くまでおつかれさま。おなか空いたでしょ。そうくん、ごはんつくっといたよ。たべて。」
とびきりの笑顔で私を迎える息子の手には、おままごとセットで作った夕飯が。メニューは、秋刀魚に目玉焼き、ブロッコリーととうもろこし。パンケーキ、それから、いちごとぶどうもあったっけ。
もちろん、味も匂いもないけれど、疲れきった私の心にたっぷりの栄養と優しさを与えてくれたあの夕食。涙でにじんだあの夕食こそが、一生忘れることのできない私のとっておきごはん。(原文)
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〈各部門の入賞作品〉(敬称略)
▽小学生部門賞=「私の最強とっておきごはん」森脇茉菜(大阪府関西大学初等部4年)▽中学生・高校生部門賞=「思いやりのおにぎり」朝日真結(神奈川県横浜市立南が丘中学校3年)▽18歳以上部門賞=「日本へ留学する前に食べた親と最後のご飯」蘇〓(きん・〓は金が三つ)(大阪府東大阪大学短期大学部2年)
▽審査員特別賞(小学生部門)=「おばあちゃんとわたしのとっておきごはん」大野あかり(神奈川県湘南白百合学園小学校5年)▽中学生・高校生部門=「忘れられない味」牛島優(福岡県久留米信愛高等学校2年)▽18歳以上部門=「忘れちゃなんねえ」感王寺美智子(福岡県)
▽WFP学校給食賞=兵庫県須磨学園高等学校・中学校