なめ茸・山菜加工特集
なめ茸・山菜加工特集:若年層へアピール メニュー・用途開発が鍵
なめ茸は、エノキ茸を醤油で煮た佃煮の一種。キノコ生産が盛んな長野県内のメーカーを中心に、およそ半世紀前から製品展開が始まった。以降、比較的安定した原料基盤に支えられる形で量産化が進み、高度経済成長期に家庭の食卓で「ご飯のお供」のポジションを築いた。
現在も主な消費シーンは米飯周りだが、「コメ離れ」などを背景にその足元は揺らいでいる。業界からは、「若い世代でなめ茸を知らない人たちが増えている」といった声が上がっており、「得意先のサンプル調査では、なめ茸に対して若年の消費者層から『何に使うの?』といった声が多く寄せられた。課題はこうした世代の認知度向上」(ナガノトマト)との指摘が強まっている。
「なめ茸のシンプルな味付けは和食に限らず、さまざまなメニューに親和性が高い。使いやすさを進化させることで、新しい消費シーンを切り開いていきたい」と話す、ナガノトマトの井垣孝夫社長。同社は、定番のガラス瓶製品に加えて14年秋からプラスチック製ソフトボトル容器のなめ茸を展開している。
ケチャップなどと同じ形状のボトルタイプなめ茸は、使用時にスプーンなどが不要でハンドリングが良い使いやすさが持ち味。瓶詰と比べてカビが発生しにくい衛生面、冷蔵庫のドアポケットに入れやすい収納性、軽量で破損しにくい安全性などにも優れ、“コロナ自粛”で市場拡大が加速する宅配・ECチャネル、海外輸出などへの展開強化も視野に入れる。
「なめ茸といえば、特徴的な偏平型ガラス瓶の形を思い浮かべる消費者は多い」(井垣社長)など、その独特の容姿は市場認知の大きな原動力。ただ、一方では「ご飯のお供」「特売品」といった固定観念を抱かせる要因にもなり、同社はボトルタイプによる旧来イメージの打破、「なめ茸革命」に期待を寄せている。
他メーカーも、用途拡大を消費活性化の最重要課題に挙げる。長野興農は、「さまざまなメニューに使える『食べる調味料』としてアピールしたい」(営業部)構え。今秋冬商戦には、「にんにく入りなめ茸」「ねぎ入りなめ茸」のフレーバー系2品を新たに投入した。
両品とも「ご飯のお供」だけでなく、「和惣菜や中華、イタリアンの味付けにも使いやすい」設計で、メニュー提案を添えて提案していく計画だ。
同社は毎年8月、夏休みの小学生親子らを対象になめ茸などを使ったアレンジメニューの料理教室を開いてきたが、今年はコロナ禍で中止に。「次世代ユーザーにアピールする機会。来年は、事態の収束を待って再開したい。レシピもかなりの数が揃ってきたので、一般ユーザーに向けて発信していければ」と意欲を見せている。
●中国産への再シフト進む ボトルは価格が課題
なめ茸は、エノキ茸の固形分60%が中心のいわゆる「普及品」と、固形分80%が一般的な「JAS特選品」に大きく分けられる。普及品の価格はスタンダードな瓶詰120gで税別100円前後、特選品は170~180gで250~270円で推移しているが、市場構成比率が高いPB製品を中心に3年ほど前から廉価な中国産製品への切り替えが再び強まり、ボリュームゾーンは下振れが続いている。
なめ茸市場では、極端な低価格路線でシェア2位を占めていた小松食品が15年9月に倒産したのを機に適正価格への見直しムードが強まり、多くのメーカーが16年春ごろからNB製品で5~10%の値上げを行った。しかし、PB製品に価格を抑え込まれる格好で、実勢価格は思うように伸びていない。
小松食品の脱落で市場に開いた約20万ケースの穴は大きく、緊急的に輸入品で埋めざるを得なかったことも、中国産再シフトを招いた一因といえる。「小松の穴は結局、同じような低価格の商品でしか埋まらない」(テーブルランド営業部)のが実情だ。
期待のボトルタイプの実勢価格は、家庭用270gタイプで400円弱。同量換算で一般的な普及品より1.8倍ほど高く、「スーパーの、いわゆる『300円の壁』をどう超えていくか」(ナガノトマト営業部)が今後の鍵だ。今春投入した210gタイプの実勢価格は330円前後。今後、製造効率の改善をさらに進め、価格を抑えていきたい考えだ。
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