だしの素特集

◆だしの素特集:20年ぶり市場回復 健康体づくりを応援

調味 2020.08.07 12093号 05面

 だしの素は、鰹節など伝統乾物のだしを粉末・顆粒にし、軽量・安価でだし取りが簡単と底堅い需要を誇る。20世紀に入ってから漸減していたが、前期久しぶりに規模を回復した。コロナ共存の新社会は自衛の健康体づくりが求められ、低塩・低脂肪で素材の味わいを増す、和食の健康価値を伝える好機。内食率は経済・雇用不安もあって高止まり。野菜などの生鮮品摂取、栄養十分な抗体力身体づくりを体感してもらいたい。(吉岡勇樹)

 だしの市場は19年度、前年比1%増の392億円で着地したとみられ、約20年ぶりとみられる市場回復を果たした。記録的な冷夏、暖冬と気候面で好条件が揃った。さらに、使用率8割とみられる、主用途の味噌汁人気に火が付いた。コロナ対策の内食増も3月の期末ながら追い風になった。

 パイオニアのシマヤが昨年、発売55周年を迎えるなど、家庭の基礎調味料に定着して久しい。超高齢化や人口減、家庭内食と和食調理の減少が直撃する悪環境は変わらない。気候要因の変化は一昨年の暖冬から始まった。

 近年の冬商戦は味付け鍋つゆが毎年成長し、だしの素などの既存調味料は苦戦続きだった。鍋つゆは具材を入れて煮るだけ、心身を温め、家族が喜びそうなメニュー専用の分かりやすさで人気。汎用(はんよう)訴求のだしの素は献立作りや調理に手間がかかると感じられ、敬遠されがちだった。

 18年の冬は前年の厳冬から一転して温かい日が続き、鍋以外の煮物といったホットメニューが増えた。本市場を押し上げて18年度市場は2%減と例年より1ポイント縮小幅を抑えた。続く19年は温暖化による長梅雨と盛夏の遅れ、18年を上回る暖冬。端境期の夏だが、煮炊きが増えたとみえて、通年でだし取り需要が増えた。

 さらに味噌汁の喫食頻度が好転。市場同様に漸減していたが、国内消費のボリュームゾーンになりつつある、子育て世帯を中心にメニュー価値が上昇した。トップメーカーの味の素社調べによると、18年度の味噌汁頻度は久しぶりに前年並みになり、19年度は前年比2%増へ転じたという。

 味噌汁は簡単・手軽に野菜が取れ、栄養価のある主菜へと従来の脇役からステップアップ。18年に「長生きみそ汁」が話題になり、同年から味の素が推進する「うちのみそ汁」応援企画も貢献した。IcTによって健康栄養情報の伝達も加速。伝統的な発酵食品の健康価値が定着した。

 味噌汁増も後押ししたのが内食の急増。新型コロナウイルスの感染を防ぐ休校、外出・外食自粛、リモート勤務によって家庭用市場が3月から増大した。期末ながら特需で市場を微増まで押し上げた。

 コロナ禍は続き、20年度の4月に市場は前年比2桁増。5月から需要がやや落ち着き、家庭内・流通在庫が行き渡りつつある。ただし、6~7月の主要メーカーの販売も増収が多く、特に新規向けのトライアル品種が底堅い。ユーザー拡大が期待できる今、在庫・店頭回転を果たすのは使用メニューを増やすのに尽きる。

 コロナ共存の自衛社会では伝統食の安心感も求められ、味噌汁をはじめとした和食、煮炊きの活躍の場が広がる。寒さの本格化する秋冬でこそ心身を温める情緒・機能メリットも実感できる。

 味の素社はトップブランドの「ほんだし」を8月下旬からリニューアル発売する。需要増の具だくさん味噌汁に合わせ、鰹節やエキスを改良してだしの味わいを向上。9月から「うちの満菜みそ汁」をコンセプトにTVCMやデジタル広告を投下。肉、魚、野菜が一つのお椀で食べられる、主菜になる現代価値を伝える。店頭は地元野菜との関連販売を進める。

 シマヤをはじめとした追随企業は試しやすく、味わいが直感しやすいだしの活用術を各種ネット媒体で紹介。若年主婦や病院に働きかけ、天然・減塩価値を定着させる。

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