花かつお・削り節特集
◆花かつお・削り節特集:調理深化にだし取り提案を 市場規模は微増
削り節市場は前期、コロナ下で500億円規模を維持し、わずかながら増加に転じた。巣ごもりで内食が増え、トッピング用の付加価値で選ばれた。だし取りでは多くを関連市場に奪われ、業務用の回復も道半ば。コロナ共存で調理が深まる今こそ、本来のだし取りの可能性を伝えたい。(吉岡勇樹)
花かつお・削り節市場は21年3月期、前年比1%増の516億円で着地したとみられる。20年2月末から家庭用でコロナ特需を得たが、5月以降は漸減。3~4月は2桁成長とする企業が多く、前半戦の貯金で以後の反落を補った。
形態別シェア6割と最大のかつおパックは同3%伸ばしたとみられる。用途がトッピングに集約。3割の花かつお、残りの混合節はメーンのだし取り機会が失われて久しい。花かつおは前期、前年実績並みと健闘したが、混合は引き続き大幅減。徳用・大袋で花かつおの備蓄、トッピング併用が進んだとみられ、業務用の回復遅れも影響した。
パックは家庭用がほとんどで内食増の恩恵を受けた。コロナ感染を防ぐ巣ごもり志向で需要が増えた。特に休校や外出など、自粛を強いられた子どもが喜ぶ、お好み焼き向けが好調だった。パックは4年前のカツオの相場高も契機にして、使い切りの小容量化、単価アップが進行。トライアル購買も得やすい、使い切り内袋1~1.5gへのシフトがコロナ禍で加速した。
主要世帯になった1~2人家族で余すことなく使える簡便ニーズは絶対的。冷や奴やおひたし、お好み焼きなどへの用途も、使い切りだからかイメージしやすいと好評を博している。
鰹節の味わいは酸化してすぐ劣化するが、開けたての香りが毎回楽しめるのも使い切りの強み。パック売場全体でも以前は小袋5gが中心だったレギュラー品も今や半減以下の2~2.5gが中心。人口減の消費減を販売金額の増加でカバーしている。
花かつおは近年、だし取り・トッピングの両用商品が人気。トップメーカーのヤマキが改良を重ね、パッケージ全面での調理提案が奏功した。使用量が調整できる直詰めチャック付きの機能性も生き、用途増の市場回復に期待がかかる。花かつお・混合節は特に数量ベースで業務用市場に多くを頼り、外食自粛による需要減は甚大。500g~1kgは苦戦が続き、従来からの外食向けは2桁減のまま推移している。
制限緩和ごとの復調も見られるが、苦境で数字を追いかけると価格競争に転落。持ち帰り、宅配開拓による穴埋めが実店舗同様に進んでいる。大容量・業務用の蒸発、消費急減は、漁港周辺のカツオ加工業に直撃。相場安定は好材料だが、国産節の業界維持も徐々に不安視されている。
今期は前年特需の反落からスタート。市場は昨年特に伸ばした4月、前年比15%減の反動減に陥った。一昨年比では微増とみられるが、だし取り需要を得ているつゆ、白だしの底堅さに及ばない。
コロナ共存2年目の緊急事態下は、調味料市場が全般に堅調。家庭内料理の深まり、定着が顕在化している。削り節はもともと、長期の製造、発酵によってだし取りを簡単、瞬時にした加工食品。味付けなしのだし取りでこそ広がるレシピ、機能性への支持は最近のだしパック人気で明らか。直販・通販中心の市場を一般、全国化する好機とみられる。