外食の潮流を読む(91)連載900回超えの飲食経営者、コラムの動画版で人材獲得図る

2023.01.02 527号 11面

 「飲食の戦士たち」というWeb上の連載コラムがある。内容は飲食業経営者が生い立ちから修業時代、そして創業時の苦労話をまとめたもの。登場する経営者は上場企業から数店舗の社長まで。さまざまな人生模様がつづられている。

 筆者は飲食業分野のライターをしていて、初めて取材をする経営者はどのような人物かを把握するために、まずこの「飲食の戦士たち」を検索するようにしている。するとたいてい知りたい経営者のことが掲載されていてとても重宝している。

 この連載の第1回は2008年2月のこと。そして22年9月に900回を迎えた。飲食の経営者のコラムが900回となると、企業化している飲食業のほとんどが網羅されているといっていいだろう。要するに「飲食の戦士たち」は今、飲食業経営者の貴重なデータベースとなっている。

 この「飲食の戦士たち」はこの度、動画版となる“再現ドラマ”をスタートさせた。これは約10分間のドラマ仕立て。主人公が、おいしそうな飲食店に入り、ビールを飲むと目の前の写真の人物の過去にタイムスリップして、社長になるまでの苦労話や料理へのこだわりを知ることになる–というストーリーである。

 「飲食の戦士たち」を運営しているのはキイストン(本社/東京都港区、代表/細見昇市)。飲食業界に特化した人材採用を中心に事業を展開している。動画制作を行うのは、そのグループ会社で飲食業専門の人材紹介を事業とするミストラル(本社/東京都港区、代表/武田あかね)。ミストラル代表の武田氏は10代からモデルとして活躍していて、現在もミセスモデルを務めている。このような環境にあって俳優や動画制作の専門家との交流があり「飲食の戦士たち」“再現ドラマ”のアイデアはすぐに実践に移すことができた。

 「飲食の戦士たち」のWebコラムは、いわばビジネス書的な立ち位置だ。一方の“再現ドラマ”は、一人称の短編娯楽動画に仕上がっている。ビジネスのマインドで飲食業界を伝えるのではなく「おいしそう」とか「タイムスリップ」といった場面から、視聴する人と飲食業界との接点をつくり出そうとしている。

 Webコラムの「飲食の戦士たち」と同様“動画版”にも一貫しているのは「人と人との出会いの大切さ」(武田氏)である。飲食業の経営者が師匠や同志、パートナーと出会い、ヒューマンビジネスの飲食業でお客と出会うという場面の一つ一つから、若者世代に飲食業へ興味を抱いてほしいと考えている。

 また、キイストン代表の細見氏は「これから制作していくこの一連の動画がテレビや映画の制作者の目に止まり、テレビドラマや映画が制作されることを願っている。すると飲食業界はもっと“働きたい業界”になっていく」と語る。

 細見氏、武田氏共に飲食業のさらなる活発化を支援していこうという姿勢が熱い。飲食業のリクルートの手法にアイデアが凝らされている。

 (フードフォーラム代表・千葉哲幸)

 ◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。

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