話題の飲食施設 「ガネーシャ(東京・銀座)」
プロの飲食ビジネスであれば、味、サービスの追求は当然のことで、特別に取り上げることもないが、しかし、外食ビジネスもすでに成熟化している現状をみれば、味、サービスに加えプラスアルファーが求められてくる。とくに、個性的で多様な業態の集積が進む都心の繁華街などでは、より他店との差別化が求められ、個性の主張がなくては集客はおぼつかなくなる。この店、銀座「GANESA」(ガネーシヤ)は二年前のオープンだが、高級クラブからファストフードまで、好感度、ハイグレードの飲食施設を集積する銀座にあっては、時代のキーワード「癒し」を取り入れて、リラクゼーション(やすらぎの空間)を店の主張とし、強い集客力を発揮している。料理はとらわれない“無国籍料理”としているが、店のコンセプトは“ヒンズー教”の装飾とオリエンタル調の“パオ”を一体化させており、幻想的な空間を演出することに成功している。客層は若い女性を主体にサラリーマンなど。客単価四二〇〇円で、月商二三〇〇万円。粗利六〇%以上。
この店の経営主体はビービーエーインターナショナル(株)(本社=東京・銀座)。同じ業態の姉妹店が渋谷(道玄坂)にもあり、銀座店同様に集客力を発揮している。
銀座店は地下一階、地上八階建て、六階での出店で、平成7年9月オープン。今年9月で満二年になるわけだが、ビービーエーがビルオーナーで、地下一階クラブパスタ、四階和処からおけ銀座すぷらっしゅ、五階江戸前寿ぷらっしゅ、七~八階のGINZA SPLASH(中国料理とカラオケ)の事業主体でもある。
銀座ガネーシヤは店舗面積約七〇坪、一二〇人収容で、ワンフロアでの展開だ。「ガネーシヤ」とは聞き慣れない言葉だが、これはインド・ヒンズー教のシバ神に由来し、シバ神の息子、知恵と財産の神様「GANESA」から採った名称。
店はこのガネーシヤのもつ“宗教的雰囲気”と、オリエンタル情緒ゆたかな住空間“パオ”を一体化させており、非日常的な空間を演出している。
この店には“食台”はあっても、一般にみる“テーブル”“イス席”はない。
「ガネーシヤには大小七つの部屋があります。イス席は一つもありません。有史以前人は大地や洞窟の中で、座って食事したり、くつろいでいたのです。床に直接座ること、寝ころんだりすることは、体が最もリラックスする“安息の姿勢”だと思うのです。ですから、ガネーシヤは単なる飲み食いする場所ではなく、心身を癒す空間でもあると自負しているのです」(ビービーエーインターナショナル企画広報室)
ガネーシヤの七つの部屋は、フロア中央に位置する形で、四つのパオが連なる“親睦の包”、そして時計回りで1時から5時の方向に“くつろぎの間”、一段床が高くなった二つの部屋が隣り合わせの“団らんの床”、VIP席を感じさせ“仏具”に囲まれた“貴人の房”がレイアウトされている。
7時から11時の方向にかけては、ひっそりとした雰囲気の“やすらぎの間”、その隣りが店内最大キャパシティ(約三〇人収容)の“語らいの包”、その上11時の場所に団らんの床同様に一段高くなって、外の景色が見える“おちつきの間”が展開する。
パオは不燃性のカーテン生地で、女性のインナーウエア(ランジェリー)を連想させるような半透明で、どこかなまめかしく、神秘な雰囲気を訴求している。店内のルックス(照明)は落とされており、食台のローソクが静かに灯る。
この店のもう一つの演出にローソクの光があるということだ。エレベーターホールから部屋の角かどに燭台があり、弱いローソクの光が陰影を作り、幻想の世界へと誘う。
BGMもまた心を落ち着かせる。単音でソフトな響きのシタール(インド音楽)の音。徹底して“癒し”“リラクゼーション”の空間を集客装置にしていることが理解できる。
料理は“無国籍料理”が基本だが、どちらかといえばエスニック風の料理に傾くという印象を受ける。
一品料理(六〇〇~九〇〇円前後)からコース料理、パーティーメニュー(二五〇〇~六〇〇〇円)までを提供しているが、アルコール類もビール、ウイスキー、バーボン、カクテル、ブランデー、ワイン(各グラス売り六〇〇~一〇〇〇円)とあり、豊富な品揃えだ。
おすすめメニューは、シンガポール焼きそば七〇〇円、ナンカレーピザ七〇〇円、ベトナム皇帝春巻き八〇〇円、ダチョウのカルパッチョ一一〇〇円、激辛豆腐六八〇円など。
パーティーメニューは二五〇〇円(六品)、三五〇〇円(八品)の二本立て。貸し切りのコースメニューは一人六〇〇〇円で、フードメニュー一〇品のバイキング、アルコールは生ビール、ウイスキー、カクテルなどが飲み放題というシステム。
店の持つハードの雰囲気はスタティック(静的)だが、料理は香辛料の効いたエスニック風のメニューや激辛メニュー、ヘルシーメニューと注目されてきているダチョウの肉料理ありと“過激”な面もある。
いわば“静”と“動”のバランスを取っているということか。客層は若い女性客を主体にしてサラリーマンやカップルなど。
◇施設メモ
・店名 Cocktail、Food&Relax「GANESA」(ガネーシヤ)
・経営主体 ビービーエーインターナショナル(株)(本社=東京・銀座、羽生田健介社長)
・店舗所在地 東京都中央区銀座七-二-二〇パシフィックビル6F(電話03・5568・4312)
・オープン 平成7年9月
・店舗面積 約七〇坪
・客席数 一二〇席
・客単価 四二〇〇円
・客層 二〇~三〇代のOL、サラリーマン(女性客七、八割)
・月商 二三〇〇万円
・営業時間 午後6時~午前5時、土曜日は午後11時まで、日・祝祭日は定休
・店舗設計(内装デザイン)スペラデザイン事務所
・施工 インテルナ東洋
・装飾(オブジェ) オフィスデコインターナショナル