飲食トレンド:宅配ピザ「ファーマーズ」、驚異の43cmスーパーラージピザ
デフレ圧力に屈し低価格訴求が恒常化する中、宅配ピザ市場ではプラス・ボリュームアップの新手が現れ、脚光を浴びている。大阪を拠点にチェーン展開する宅配ピザ・ファーマーズのスーパーラージピザ(二四〇〇円)である。半額キャンペーンに追加の増量(ビッグサイズ)戦略は、実質経済の地・大阪で大ヒットだ。
スーパーラージピザは直径四三センチメートル。従来のLサイズ三五センチメートルよりふた回りも大きい。量はMサイズ二五センチメートルの三倍で、価格はLサイズの相場三〇〇〇円に比べて二四〇〇円と破格である。また、客が好みのピザ(トッピング)を四種類組み合わせる“クワトロ方式”も魅力だ。
この特大ピザ、4月に登場し一店舗月商五〇〇枚を突破する勢いで、売上げ構成比の二割以上を占める。
集客強化でSサイズ(低価格アイテム)導入が相次ぐ市場動向に反旗を翻す人気ぶりだ。
ファーマーズは、平成11年、若手スタッフらが経営権(八店舗)を譲り受けて再スタート。半額キャンペーン(Mサイズ二五センチメートル八〇〇~一二〇〇円、Lサイズ三五センチメートル一二〇〇~一七〇〇円)を機軸に事業規模四三店舗(ピザ一八店・すし二五店)に躍進した。
「従来の宅配ピザは高すぎた。われわれスタッフ自らの価値観で値付けしたら半額になった」(宮浩喜専務取締役)
それまでのテコ入れ策で膨れあがったサイドアイテムを削減し、オペレーションの効率化を徹底。ピザ単品に絞り込み、薄利多売のスケールメリット戦略で、売上げ五〇%アップ(月商六〇〇~七〇〇万円)、客数・利益倍増(約一五〇万円)をたたき出した。スーパーラージピザは、その延長線上にある。
半額とはいえ高品質維持で食材原価は二四%から三八%に大幅アップ。だが、「宅配業態は売上げが損益分岐点を超えると、固定経費が低い分、利益率が飛躍的にアップする。すなわち、売りまくって儲けるのが基本。基本回帰が繁盛の原動力」という。
ならば、スーパーラージピザの大ヒットも、宅配ピザがブーム時に開拓したパーティーニーズ復活の兆しか。
ファーマーズは、この半額&ボリューム戦略を踏まえ、新機軸の宅配すしチェーン・漁彩を一気に二五店舗展開。宅配ピザ事業とタイアップするコスト合理化にも着手している。三年後に双方五〇店舗・計一〇〇店舗体制を築く考えだ。