飲食トレンド:逆襲する焼き肉業 BSEから1年、売上げ回復急ピッチ
昨年9月、国内で初めてBSE(狂牛病)に感染した牛が発見され、焼き肉業界が大きなダメージを受けてから一年余りが経過した。政府も二〇〇二年6月に「BSE対策特別阻止法」を成立させ、風評被害を防止し業界の復興に励んでいるが、二〇〇二年の夏を境に業界も復興の兆しが見えはじめた。焼き肉業界は二〇〇三年に向けて業績のV字回復を狙おうとしている。
「8月は売上高が前年比九〇%まで回復しました。BSE騒動も一段落ついたと思います」
大手焼き肉チェーン企業の幹部はこのように語る。二〇〇一年9月に一頭目、続いて11月に二頭目、三頭目のBSE感染牛が発見され、二〇〇二年5月には四頭目まで発見されて大きなBSE騒動を巻き起こし、災害にあったとしか言いようがない焼き肉業界であったが、落ち着きを見せはじめ、二〇〇三年に向けての取り組みが着々と進んでいる。
二〇〇一年10月の焼き肉チェーン既存店ベースの売上高が前年同月五四%(日本フードサービス協会加盟店)までダウンし、店によっては八~九割減まで達した焼き肉店はBSEの影響を大きく受けた。
しかも、二〇〇二年春には売上高が回復軌道にのっている感もあったところに5月に四頭目の発見。さらに、食品メーカーによる偽装表示事件や無認可添加物問題など相次ぎパンチが続いた。
帝国データバンクによると二〇〇一年10月から二〇〇二年6月までの間にBSE関連倒産は六四件、負債総額は三九〇億六五〇〇万円に達し、倒産件数の二六・六%が焼き肉店経営企業であった。
外食産業の市場規模は一九九七年をピークに四年連続で下落しているが、焼き肉業界は堅実な成長を見せてはいた。市場規模五〇〇〇億円強、店舗数二万五〇〇〇~二万八〇〇〇店というのが大方の見方である。
焼き肉は敗戦直後の日本で差別と貧困にあえいでいた在日朝鮮人が牛や豚の内臓を商品化したのが始まりといわれ、裏通りの大衆業種から一九八〇年代の無煙ロースター普及、バブル崩壊後の低価格チェーンの台頭とともに一気に表通りの主役に踊りでた。そこにBSE騒動。しかし、各社の値下げキャンペーンやデザート、豚肉、海鮮品などの新メニューの開発、従業員教育によるサービス力向上などの「選択と集中」による努力が実を結びはじめている。
また、5月が中心であったが「焼肉フェスタ2002」(関東近県の各焼き肉店で開催)や、6月の「BSE対策特別阻止法」の成立、7月に発売されたCD「焼肉音頭」、8月29日「焼肉の日」の各種イベント等々。日本フードサービス協会によると焼き肉チェーン店の9月の売上高は全店ベースで前年同月九五・五%、既存店ベースで八八・九%まで回復している。
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(有)マネジメントプロセス代表取締役・三浦紀章(中小企業診断士)/アソシエイトスタッフ・東山世司子(中小企業診断士)