この一品が客を呼ぶ・京都:「ムガール」イカスミシーフードカリー
食べるまではどんな味か想像がつかない、イカ墨を使った真っ黒なカレー。イカ墨ならではのなんともいえないコクとまろやかな風味が魅力で、遠方から、この味を求めてやってくるファンもいる。ディナー時だけのメニューで、一日の販売数は多くないが、ランチ時に「どうしても」という客がいるという。
昭和62年創業という、京都のインドレストランでは古参の部類に入る「ムガール」。そんな店で、約一〇年前に始めたオリジナルメニューが、このイカスミシーフードカリーだ。真っ黒なカレーにトマトの赤が映える、見た目も鮮やかな一品。味が想像できないだけに、好奇心で注文する客も多い。
一口食べると、クリームのようなまろやかさと、ピリリとした辛みが広がる。普通のカレーとはひと味違う、それでいてやはりカレーとしか言えない、不思議な味わいだ。「注文される方は女性が多いですね」と料理長のクベール・タンデさん。イカ墨とシーフードから生まれる深みのあるコクと、やわらかい口当たりが、その秘密のようだ。
具材には、イカ、ホタテがたっぷりと使われ、さらにピーマンとニンニクが香りを加えている。
さらに、忘れてはならないのが、彩りのアクセントにもなっているフレッシュトマト。さわやかな酸味と甘みが加わり、濃厚なカレーの味をさらに引き立てる。
独特の味わいのポイントは、イカ墨ソースとスパイスとバランス。スパイスはチリパウダー、ターメリック、インドのカレールーを使用。さらに隠し味として、砂糖ほんの少しとオリジナルのスープストックを加えてうまみを引き出している。
イカとホタテの下ごしらえに少し時間がかかるため、ランチタイムや混雑時は作らない。にもかかわらず、ほかの店にはない味とあってこっそりオーダーする客も多い、人気の一品だ。
◆食材の決め手 讃陽食品工業(株)「いかすみソース」
イカスミシーフードカリーの味の決め手となる食材は、もちろんイカ墨だ。この店では讃陽食品工業の「いかすみソース」を使用している。イカ墨をブランデーとアーモンドでソースに仕上げたもので、パスタやリゾットなどにも使うことができる。
「コクのある仕上がりになるし、生のイカに比べて、衛生面でも安心して使える」のが愛用の理由というタンデさん。一皿につき、だいたい五〇ccほどの分量を使っている。
▽問い合わせ=讃陽食品工業(株)(香川県高松市、電話087・833・7011)
◆ムガール(京都市中京区木屋町通り御池上ル、アイル竹嶋ビル二階、電話075・241・3777)営業時間=正午~午後3時、6時~11時/一日食数=約一〇食