アポなし!新業態チェック(7)「カフェクロワッサン」品川インターシティ店
外食大手のロイヤルホールディングス(株)は、去る1月、グループの子会社である(株)カフェクロワッサンが昨年12月8日に4年ぶりに出店を再開したと報じた。
出店再開の1号店として、東京・港区のJR品川駅近く、再開発地域内の複合施設「品川インターシティ」に、カフェクロワッサンの新業態モデルとなる店舗がオープン。
この店舗は、従来の赤と黒を基調にした店舗デザインから大きく変わって、白色とナチュラルな自然素材などを組み合わせたカフェスタイルの内外装を持つ。今回は外部のデザイナーを起用して、ロゴマークも新しいシンプルなデザインとなり、これまでのイメージを一新した。
また、営業内容で大きく変わったのはメニュー構成である。メニューアイテムの幅が増えただけではなく、朝食、昼食、ティータイム、夕食という4つの時間帯ごとにメニューを変えるというきめ細やかな対応で、例えばティータイムにはクロワッサンのフレンチトーストが付いたセットメニューや、夕食にはメーン料理になるシチューといったアイテムも提供する。コーヒーはレギュラーサイズで250円から。さらに夜間はビールやワインなどのアルコール商品も提供し、時間帯別に営業スタイルを変えることで、利用者の来店頻度を高めるのが狙いだ。
同社では、今年中に初めての郊外型店舗を予定しているほか、今後3年程度で、既存店の約半数と同じ10店舗程度を新規に出店する計画であるという。
★けんじの評価
持ち株会社制に移行し、天丼の「てんや」などを傘下に収めたロイヤルホールディングスが、子会社カフェクロワッサンの再生に乗り出した。
新業態店舗は、再開発で大きく生まれ変わった品川駅東口エリアの複合高層ビルへの新規出店だ。専門デザイナーに依頼しただけあって、店舗はとてもスタイリッシュで格好良い。店内の分煙の仕組みも無理がなく、内装デザインに巧みに組み込まれている。
何と言ってもメニューが良い。商品の幅が広がり、少し価格は高めだがランチなどのセットメニューも魅力的だ。臨店した際にも女性客が多かったのはうなずける。
ただ、時間帯ごとに変わるメニュー全体の情報がどこにもないのはなぜだろう。そもそも「時間帯別にメニューが変わる営業」というのは、ファミレスが発達する以前の二十数年前には、当時のカジュアルな飲食店の多くが導入していたスタイルだ。
だが、そうした営業形態は、お客が来店した時にあると思っていたメニューがなかったり、価格が異なっていたりして、結局は常に同じ商品を同じ価格で提供する外資系外食チェーンの使いやすさに負けてしまったというのが、80年代以降の外食業界の流れだったはず。
同社の発表では「時間帯別にメニューを変えることで来店頻度を高める」ということらしいが、店舗の利用者に全時間帯のメニュー情報を明確に伝えなければ、他の時間帯を利用しようとする動機にはつながらないと思うのだが。
(外食ジャーナリスト 鷲見けんじ)
●店舗概要
「カフェクロワッサン」品川インターシティ店/開業=2006年12月8日/所在地=東京都港区港南2─15─2 品川インターシティA棟2F 201区画/席数=20席
◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。