飲食トレンド:ニュー飲食ビジネス「屋台村」毎日が“お祭り”ムード

1993.10.18 38号 1面

ラーメンやおでんなどを売る屋台というのは珍しいことではないが、このところこういった業態を一カ所(同一空間)に集約した“屋台村”といった新手の“業態”が登場してきており、独自のマーケットを切り拓いてきている。

屋台は移動式の路上店舗で、その素朴さと簡便性、ペーソスな雰囲気が、いわば街のアクセントとなって独自の飲食ニーズがなるわけだが、しかし、一台ごとの出店となると事業化は困難で、それなりの「ノウハウ」が必要となってくる。

もちろん、屋台もりっぱな飲食店舗で、個人の独立開業の道としての生き方もあるわけだが、この飲食ビジネスは一方においては、法的規制や場所の確保、また、事業の永続性などの点で、厳しい面があり、個人レベルで開業していくには相当の努力と経営感覚が要求されてくる。

屋台村の出現はごういったハードルをクリアする形態のものだが、この業態には三つの出店形態がある。

まずその一つは、同一の企業体が複数の直営屋台を集積する形態のもの。もう一つはテナント出店による屋台の集合体だ。

前者は自らが事業主体となって、独自の屋台(飲食)ビジネスを展開する形のもので、店舗の運営に一体感がある。後者は不動産事業としての考え方で、あくまでも空間および物件を賃貸する“場所貸しビジネス”で、屋台の寄り合いという形態のものだ。

直営出店による集合体の屋台は出店コストがかかるが、その分同一コンセプトの元での質的サービスが展開できる。この点、寄り合い世帯の屋台ビジネスは、出店コストの負担が小さくなるものの、経営主体が個々に異なってくるので、集合体としての経営にバラつきが出てくる恐れがある。

このため後者の出店形態においては、これを成功させるためには事業主体において、ある程度の飲食ビジネスに関してのノウハウがあり、出店をまとめ上げるプロデュース能力の有無が問われてくることになる。

しかし、いずれにせよ両者においての大きな課題は、消費者ニーズに対応し、消費者に支持されることだ。経営形態や運営形態はどうであれ、結局のところは消費者に支持されなくては、意味を成さなくなる。

屋台は元来が日本の伝統的な食文化の形態であり、気取りのないより身近な飲食形態であるのだが、それだけにホスピタリティがなければ即座に敬遠されてしまう。

屋台売りのよさは対面サービスによる客との会話、開放感、縁日的な風景にあるというのは説明するまでもない。

開放感といえば、屋台村の立地戦略は夜空の下での露地出店が本来の姿で、この形が客にノスタルジアをアピールし、独自の集客力を発揮するのだが、一方においてはビル内出店という形態も見られる。

しかし、この出店形態は小区画の飲食店舗の集合体であり、デパートのレストラン街などと似たところがあって、もう一つ開放感が迫ってこないというハンディが伴う。

ある程度の空間を確保し、そこにどう屋台(ブース)を展開していくかが、この出店形態の成否になるのだが、しかし、露店舗に比べ雰囲気のおもしろさがないのは否定できない。

「やはり、屋台は星空の下、自然の中になくては意味がないと思うんです。暑いときには暑く、寒いときには寒く、床は土間や露地、これがいいんじゃありませんか。

それから、寄り合いのテナント出店ですが、単に不動産的な考えではダメなんです。その場所で何かを生み出すことが大事なことなんです。寄り合い世帯であれば、それぞれの事情や考え方も違ってきますし、一つのコンセプトにまとめることも大変です。場合によっては一つの施設の中で、はやりすたりも出て不満の原因にもなります。

いまは儲かるからと安易にとびついて一種のブームのような形になっていますが、やはり単価の小さい商売ですから、屋台(飲食)のノウハウがあって、確固たるポリシーでやっていかないと、成功しませんし、客に支持されていくのは難しいと思うんです」と語るのは、屋台村のパイオニア(株)一龍グループの三浦愛三社長。

(2面につづく)

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