施設内飲食店舗シリーズ 「アイスビル」(東京・六本木) ホテル・娯楽・飲食ゾーン

1994.02.07 45号 4面

東京・六本木の交差点から防衛庁方向へ。約三〇mほど左手。茶色の外壁が目につく地上一三階、地下二階建ての都市ビル。

㈱アイビス(本社‐東京・六本木、金田鶴一社長)が所有するビルで、一階から四階に日本最大級の都市型アミューズメント・ゾーン「ギーゴ」(GIGO)、また、同じ一階だが場所を異にしてコーヒーショップ「ラ・パンセ」、二階にバー&レストラン「スポルト」、七階から一二階にはシティホテル、最上階の一三階には高級イタリアレストラン「サバティーニ」が出店するフロア構成となっている。

ホテルにアミューズメント施設を併設するというのは例のないことであったが、アイビスの金子社長の発想で、ホテル+アミューズメント+飲食という複合タイプの都市施設が完成したわけだ。

東京・六本木は昼はビジネス、夜はナイトレジャーという二つの顔をもち、また、外国人の来街が多い感性豊かな街として知られているが、アイビスビルはこの立地特性を生かしての施設展開だ。

「六本木GIGO」は一階から四階まで約八〇〇坪の店舗面積を有しているが、ホテル施設との併設といっても、同一空間に位置しているわけではなく、また、出入口も外からのアプローチは分離したものとなっている。

このため、ホテルやレストラン利用の客とアミューズメントの客とが混在することはない。つまり、施設利用の動線が完全に分離しているということだ。

ギーゴは、「何だかよくわからない。けど、面白い」をキーコンセプトにして、「シュールリアリズム(超現実主義)アミューズメントゾーン」を意図した空間づくりを具現しており、一階から四階まで階層ごとのフロアテーマを訴求している。

・一階(七〇坪)/異次元空間への門

入口にはイースタ島のモアイ像をイメージさせる門柱が立ち、来店者をシュールリアリズムの世界へ誘い込む。

マシンはバーチャルリアリティ感覚のCG体感ゲーム「バーチャレーシング」を中心に、「R‐360」などの最新の体感シュミレーションゲームを設置。

・二階(二二七坪)/「閉ざされた無限の空間・宇宙」

無限と有限の交錯するスペースワールドを演出。世界最大級のクレーンゲーム「ドリームパレス」をはじめ、各種カーニバルゲーム、スポーツゲームを設置している。

このほか、同じフロアに併設して日本初の本格的スポーツ・バー・レストラン「六本木SPORT」(スポルト)を開設しており、ゲームの合間にアルコールや食事を楽しむことができる。

・三階(二五二坪)/「古代社会と未知なるもの」

壁に古代文明をイメージした壁画をあしらっており、最新のゲーム機と古代イメージが交錯して、異次元の雰囲気を漂わせている。

マシンはメダルゲームを主体に、ビンゴゲーム、ダービーゲーム、スロットマシンなどを揃えている。

・四階(二五三坪)/「貴族社会と現代社会」

ギーゴの最上階で、カジノゾーンとカラオケゾーンの二つの空間に分かれている。

カジノゾーンでは女性ディーラーが対応するカードコーナーとルーレットコーナーが設けてあり、ブラックジャックやルーレットを楽しむことができる。

また、同じフロアに大型競馬ゲームの「ロイヤルアスコットGIGOスペシャル」を設置してあり、臨場感いっぱいにダービーゲームを楽しむことができる。

これら施設はアイビスの直営およびセガ・エンタープライゼスとの共同経営で展開しているものだが、このほかにはテナント出店で、五階にバーレストラン「エスカイヤクラブ」(大和実業)、一階に江戸前の「おつな寿司」、パブリックバー「もぐらのサルーテ」、フレッシュパン「きしのショップ」、カジュアルショップ「エステール」などの店舗が営業している。

このビルはホテル分野が昭和62年に改装し、全二〇〇室を一八二室に減らして質的充実を図ったほか、商業分野も前記のアミューズメント施設を展開するために、平成4年9月に改装している。

以前このビルにはサンローゼ高島屋をはじめ、ブティック、アクセサリー、飲食店舗が入居していた。だが、ビル側の方針でテナント出店を最少限にして、その分店舗の大型化を図って営業効率を高め、また、直営出店での店舗運営を主体とするという考えから、テナント契約の解除と施設の改装に着手。

この間に七年の期間を要した。最大の目的はセガとの共同経営でアミューズメント施設を展開することにあったわけだが、これは都市の超一等地で、しかも、ホテル施設での展開ということで、関係業界の注目を大きく集めた。

カラオケゾーンは一五室から成っているが、東洋の王室や宮殿をイメージし、高級感を演出するために、「エジプト」「マハラジャ」「イスラム」「モンゴル」などと、テーマごとの内装をおこなっており、エキサイティングな空間をアピールしている。

オリエンタルムードいっぱいのカラオケルームというわけだが、各部屋では本格的なエスニック料理(点心)も食することができ、王候貴族の気分を味わうことができる。

ビルの最上階の一三階には直営のイタリアレストラン「サバティーニ」が出店している。ギーゴの開設に合わせてオープンしたもので、ローマのサバティーニと同じ料理を提供していることで注目されているレストランだ。

店舗面積約一五〇坪、客席数一〇〇席。エレベーターで店に降り立つと、入口前面に巨大な貝のオブジェが口を大きく開いており、その中に新鮮な魚介類をディスプレイしてある。

左手にレジ、その右横は一〇人前後が座われるウエイティングルーム。貝のオブジェを正面にみて右手は、客席ホールにつながる通路だ。通路左手はパーティルーム、その右隣がキッチン、また、通路右手はワイン棚というレイアウトで、客席は突き当たり左右のフロアに拡がっている。

客席テーブルは二人掛、四人掛が主体で、席と席との間にゆとりの空間があること、また、窓も広角度のデザインになっているので、街の景観が広く見え、レストランとしては東京でも有数の雰囲気をアピールしている。

内装資材も家具、調度品、銀食器類、照明などもローマから直輸入したものであるほか、壁面はローマ各地区のエンブレムをデザインするなど、本家サバティーニの造作を再現している。

店舗の内装デザインのみならず、料理や味づくりについても、ローマ本店の伝統を忠実に表現しており、東京にいながらにしてローマ・サバティーニの料理を楽しむことができる。

料理はもちろん、パスタ類から肉、シーフードまでバラエティーに富んでいるが、各種グランドメニューに加えてはシーズンメニューやランチメニューもラインアップしている。

たとえば、1月のディナーメニュー(一万二〇〇〇円)であれば、的矢産生カキキャビア添え、鴨のラグー和えサフラン風味のフェットチーネ、ヒラメのフリット・タルタルソース添え、牛フィレのグリル、ビーツのソースに、サラダ、デザート、コーヒーが付くというリッチなものだ。

ランチメニューはA(二〇〇〇円)、B(三二〇〇円)、C(四八〇〇円)の三種。パスタ類に魚または肉料理が付くというものだが、たとえばBであれば、スープまたはパスタ類、魚か肉料理、サラダ、コーヒーがセットという内容だ。

客層は会社経営者や中堅管理職、外国人、男女カップルなどアッパークラスが主体で、うち、外国人が三割を占める。客単価は昼三五〇〇円、夜一万五〇〇〇円と高い。

消費低迷の時代に高客単価というわけだが、これはそれだけ質の高い料理を提供しているということだ。シェフの野田幸宏さんはローマのサバティーニで一〇年間修業していたキャリアがあり、味づくりはたしかだ。

料理を楽しくさせるワインも豊富に揃えている。サバティーニの自家農園のワインほか、イタリア各地の逸品も多くあり、ワイン通にはうれしいレストランだ。ボトル三五〇〇円、グラス売り七〇〇円。トスカニー、シャルドネなどがよく出る。

もう一つ、六本木サバティーニの売りものは、本場のカンツォーネの歌手たちがいて、夜はその生のカンツォーネが聴けることだ。

ディナーレストランとしての付加価値サービスを訴求しているということだが、このほか、個室利用の会食をはじめ、メーンフロアでの結婚式披露宴、宴会、パーティーなどの施設運営もおこなっており、都市施設としての多面的な機能を発揮している。

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