事業所給食 カフェテリア方式が定着、女子社員の利用増える

1994.03.07 47号 11面

不況の長期化にともなう残業カットや、全産業平均で前年を下回った冬のボーナスなど、あまり明るくない世相を反映してサラリーマンやOLたちの昼食事情も変化を見せ、事業所給食や社員食堂で昼食をとるといったニーズが急速に高まっている。

社員食堂というと従来は安かろう、まずかろうのイメージが定着していたが、ここ数年、ほとんどの事業所給食では好きなものを選んで献立が決められるカフェテリア方式を採用、これが定着し人気に一層の拍車をかけている。

カロリーの表示も

一昨年の1月に、優良給食施設として農水省から表彰されたのがニチメン東京本社の社員食堂。会社創立一〇〇周年記念で約五億円をかけ、地下一階を全面改装した一流レストラン風のしゃれた食堂では、デザートの種類を大幅に増やしグラタン、ドリア類が温かいまま提供され、トンカツなども冷凍食品を使わずパン粉をつけて揚げるなどのこだわりも見せる。味に対する評価はもちろん、各メニューにカロリー表示をしているので健康管理の面でも万全。このため従来はともすればあまり利用していなかった女子社員が大幅に増加するなど人気も高まっている。

社員食堂を経営する最大手の給食企業、(株)シダコーポレーション(東京・新宿、03・3344・6969)は、全国で一五〇〇ヵ所の事業所(食堂)に昼食を中心として一日約三五万食を提供している。その中の一つ、「新宿三井ビルSR店」では一日平均約一〇〇〇人から一二〇〇人が利用しているが、その約六〇%は固定客である。

新宿新都心という場所がら、都庁をはじめ他のビルで働く社員なども数多く利用している。近隣ビル同士(事業所給食)の競争もあって、今年の1月10日からラーメン、そば、カレーなど一〇メニューについて一律約三〇~四〇円値下げし、ラーメン類に卵をつけたり、天ぷらの大きさを倍にするなどグレードアップを図ったこともあり、一日当たりの利用客数が二〇~三〇%増えたという。

また、ここでの人気の要因は毎日の日替わりメニューもさることながら、何といってもメニューの豊富さと、サラダ、すし、煮物、焼き物、麺、おにぎり、テークアウト類などのコーナーを設置し、この中から好きなものを自由に選んで組み合わせのできるカフェテリア方式の採用が大きい。

新形態の給食会社

社員食堂は、一般的には委託方式で行われている。光熱費や厨房器具代などは各企業が負担するため、委託を受けた給食会社は、材料費の比率を高めて質の向上を図ることができるのが特徴。ここ数年は大手の飲食企業、商社、それに大手企業の間で、給食会社を設立して事業所給食、社員食堂を運営するといった新しい形態が出現している。

飲食企業のロイヤルと、米国のホテル、食品サービスの最大手、マリオットコーポレーション、住友商事の三社が合弁で設立した「ロイヤル・マリオットアンドエスシード(株)」(江頭匡一社長)、さらにはジャパンエナジー(旧日鉱共石)、アキシーサービス(味の素、ヤグチの合弁企業)の出資による「(株)ボネック」(内藤治夫社長)はその典型といえるだろう。

東京・虎ノ門のジャパンエナジー本社のツインタワービル地下一階にある社員食堂(基本的にはジャパンエナジー、日鉱金属、NTT移動通信網三社テナント社の社員食堂)は、全体で約三三〇坪の広さ。ビル中央の吹き抜けを利用したサンクン広場はテナント企業が共同で利用できる食堂、定食や丼物を提供する「ヤムヤム」(客数二〇四席)、そば・うどんなどの麺類を提供する「葵」(同一〇〇席)、和食系ランチを提供する「ジョリイ」(同六〇席)、テークアウト専門店の「ボン」で構成されている。

定食の組み合わせは四季を通じて約三〇〇種類以上あるランチ、ラーメン、うどん、そば、定番メニューとなっているが、二〇〇〇円から三〇〇〇円前後の「天ぷら御膳」(替皿、小鉢、味噌汁、御飯、香物)、「和風ステーキ御膳」(スープ、サラダ、御飯、香物)は「ジョリイ」。また、これらはすべてボネックの経営。

米国より30年遅れ

いずれにしても、「日本の社員食堂、事業所給食(病院給食も含めて)は米国に比較してメニュー、サービスなどソフト面で二〇~三〇年は遅れている」(江頭匡一ロイヤル(株)会長)といわれているだけに、各職場での福利厚生面の重要性とともに、飽食時代の中で価格・質の充実、強化も大きな課題といえる。

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