カレー特集、付加価値高めイメージ一新、コンスタントな人気

1994.06.06 53号 10面

外食業界は、ファストフード(FF)、ファミリーレストラン(FR)をはじめ低価格の風潮にあり、大衆的で、なおかつボリュームあるカレーは、実力商品のみならず、コースメニューのメーンディッシュとしても見直され始めている。大手FFのモスフードサービスは昨年からカレーの移動車販売の実験に着手、吉野家ディー・アンド・シーは牛どんの吉野家、ダンキンドーナツに続く柱に育てようと新宿のカレーアンテナショップ「カレー亭」をリニューアルして5月に新装オープンしたばかり。カレーは「スタミナ料理、健康食品料理、美容にも良いと万能料理」(喜楽亭・大久保社長)に加えてクイックサービスも可能だ。時代が求めているローコスト、ハイバリュー商品としても期待ができ、カレーのイメージも一新されそうだ。

「懐石料理のイメージでカレーを作ろう」とつぼ焼きインドカレーを考案した大久保社長は、一五〇人分のカレーが入った大鍋から特注のつぼに移して一人前ずつ直火で温めることにより、テーブルに出してもグツグツと厨房の臨場感を届けることに成功した。

コンセプトは「プライスは中級、イメージは高級」である。成功の秘訣は、「企画、味、見た目、サービス」全部の総合力でお金を支払う時に客を納得させることという。

ヨーロピアンカレー&欧風料理のパセオは「皿盛りで豪華さを演出」(小林店長)し、若い女性の心をつかんでいる。具材もイカの塩辛やめん太子もあり、個性的。喜楽亭とパセオはカレーをコースメニューのメーンディッシュにしている。「カレーだけではお酒が進まないので前菜をつけた」(パセオ)結果である。

JR東日本旅客鉄道が駅構内に展開している「カレーステーション」はスピードを武器にしており、回転率がすこぶる高い。時間の無い乗客にはクイックサービスが何よりの高付加価値となる。ビジネス街にチェーン展開している「ラホール」は、カツやカニクリームコロッケなどボリュームあるカレーが信条であり、よく売れる。

今後の課題としては「不況にあったプライス商品をどう開発していくか」(喜楽亭)、「ビジネス街のため残業需要の減少分をどう回復させるか」(ラホール)などである。インド料理店「ザ・タージ」社長のA・ロイさんは「日本におけるインドの食文化向上のため一九年の店の歴史ある味を守り続けること」につきるという。

流行は、すたりも早い。カレーは爆発的人気はないが、コンスタントな人気を持つ実力商品であり、「良さ、古さ、店の総合力を持続することがトレンド」(喜楽亭)なのである。

昨年突如と湧いたコメ騒動は、米飯メニューを直撃した。

インドネシア料理専門店の「インドネシアラヤ」では、「タイ米をいろいろ研究したが、やはり一〇〇%では店に出せない。国内産五〇%、輸入米五〇%のブレンド米を白飯用とチャーハン・カレー用別々に炊いて対応している」。

「ラホール」は、タイ米二、国産八の割合でオイルを使用して風味を損なわないようにしている。「パセオ」は、タイ米一割、国産ササニシキ七割、ほか輸入米二割。「カレーはご飯が命なので輸入米をブレンドすることになり、国産米のグレードをアップした」という。

「喜楽亭」は、二店舗あるうち、本店は国産米のみ、大森店はタイ米のみと店舗で特色を出すようにしている。「ブレンドは絶対にしない」という。

「タイ米はターメリックのバターライスでタイ米の良さを引き出している。その商品の良さをどこまでひき出せるかが大事。パサパサとした食感には歴史があるとお客さんには丁寧に説明している。それをセールスポイントにしている」。

恒例のカレーフェアを7月から予定しているFRのロイヤルは、「現在はカリフォルニア米二割、国産米八割を使用している。フェア商品にタイ風カレーを二種予定しているので、タイ米使用を検討しているところ。いずれにしろ一〇〇%タイ米は無理。また、店舗サイドで白飯用とカレー用の二種を炊くことは不可能なのでタイ米を使用するとなると冷凍米飯を利用することになる。コスト的にはこのような事情からタイ米を使うと高くなることになる」(商品本部メニュー企画部・栗城実部長)。

タイ米はカレーやチャーハンには追い風のような風潮があったが、各店「日本人のご飯へのこだわり」に知恵を絞っているところで、タイ米によるカレーやエスニックの再燃は今のところむずかしそうだ。

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