特集 お好み焼き・たこ焼き・もんじゃ焼き ハナキ・花木久男社長に聞く

1995.02.06 69号 14面

【広島】広島発、広島流お好み焼き。その味を支える広島生まれ広島育ちのお好みソース。今日では、広島流お好み焼きは広島発の一つの食の文化として全国的なブームを呼んでいる。野菜とそばやうどんの入ったボリュームたっぷりのヘルシーな広島流お好み焼き。ここでは、お好み焼き一筋で広島流の普及・発展をつぶさに見てこられた広島市にあるお好み焼き関連材料の専門卸、(株)ハナキ商会(本社=広島市中区千田町、082・241・6135)の花木久男社長に、広島流お好み焼き今昔、広島地区のお好み焼き屋さん事情について、聞いてみた。

‐‐今の広島流お好み焼きの原型が出来たのはいつごろですか。

花木 昭和30年代から40年代にかけてだ。その当時、お好み焼きにうどん、中華そばを入れセットにして焼くのが一つの流儀となり、これが大きな特徴となった。今では、広島でお好み焼きを食べる人の八〇~八五%はそば入りないしうどん入りを注文されている。

‐‐そのころと今ではお好み焼きに入れる素材も違ってきたのでしょうね。

花木 これも特の流れで焼き方も具材も違ってきた。また、店の構えも大きく変わってきた。そのころの焼き方は生地をひき、その上にかつお粉をまんべんなくたくさんふりかけていた。生地にはとりがらスープを入れたり昆布だしを使ったりしてこってりした味を付けていた。その上に、キャベツ、もやし、豚の三枚肉、とろろ昆布、紅かまぼこ、はんぺんなどをのせて焼いていた。値段は一枚一〇円で、豚肉入りは三〇円、これにうどん、そばを入れると五~一〇円が加算されていたと記憶している。

‐‐お好み焼きは大衆商品として普及してきたようですね。

花木 食べるものが不足していた時代に生きるがための知恵を集めて出来たのが、お好み焼きのそもそもの始まりだ。今日のようにお好み焼きが皆に親しまれ愛され好んで食べられ、またマスコミでもたびたび取り上げられるなどして、なおいっそう全国的に普及していることを考えると感慨無量だ。昭和30年、40年代にはここまで普及するとは誰も予想だにしなかったと思う。

‐‐広島で生まれ育ったお好みソースの貢献も多大でしょうね。

花木 非常に大きい。広島で生まれた特産の独特のソースとして、オタフクソースさんを筆頭にした広島のソースメーカー各社の努力の賜物で、その貢献は多大だ。お好みソースがなかったら、今のお好み焼きの発展はなかったと断言できる。

‐‐ここまで、お好みソースが支持された要因は。

花木 低塩、低酸、まろやかさ、うま味といったお好みソースの持つ味が、お好み焼きの野菜をはじめとした素材とピタッと合うように工夫して作られていることだと思う。これも一朝一夕に出来たのではない。お客さんの甘い、辛い、酢っぱい、口当たりが残るとかいった声をもとに改良に改良を重ね、長い年月を経て今の味が出来上がった。現在では、同業他社に一歩先んじて作ったオタフクソースさんのお好みソースの味にお客さんがなじみ、食感で覚えている。他のメーカーが似た商品を作ったとしても、それは違った形としてのソースとしてはおいしいかも知れないが、お好みソースではないとお客さんは判断している。商品分析では分からないものがある。そこにオタフクソースの強味がある。

‐‐今では、広島流お好み焼きは全国区にまで成長してきたが、その人気の秘密は。

花木 お好み焼きは、使った素材の一つひとつのうま味が合わされて一つの味になる。それには素材の持つ最高の味を引き出すことが大事で、使う鉄板と火の使い方が非常に大事だ。どこのお好み焼き屋さんとも焼き方は味づくりの要になるだけに、いろいろと工夫されている。焼きあげた素材とお好みソースの微妙なバランスが、最高の味を引き出している。今日食べて次の日も明後日も食べようという気持ちをお客さんに起こさせ、喜んでもらえることが大事。広島流お好み焼きは、栄養バランス的にも、また手ごろな価格で誰にでも好まれるメニューだ。

‐‐お好み焼きには広島流、関西流、東京流と三つに大きく色分けされるようですが、広島流の良さは。

花木 野菜が非常に多いだけに栄養のバランスがとれている。この野菜を中心とした具材の調和とお好みソースとの合体が自然な素朴の味を醸し出し、違和感のないおいしさと相まってとりこにする身近な食べ物だ。また、広島流は熟練した本職が自ら焼くので、いつでも完璧なおいしいものをお客さんに提供できる。

‐‐お好み焼き屋さんの経営事情も、ずいぶん変わってきているのでしょうね。

花木 今では、広島市とその周辺地域で見ると街のあちこちにお好み焼き屋さんがあり、立地面で新しく適地を探すのが難しくなっている。同地域でのお好み焼き屋さんの店舗数は、一三〇〇~一五〇〇軒と推定されているが、ここ数年間、全体の数は横ばいのようだ。

‐‐繁盛店というと一日どのくらいの枚数を焼かれるのですか。

花木 ちょっとした店で一〇〇枚は焼き、市内ではB級クラスだ。A級はグループ企業としてやっており、そのA級とB級の格差は非常に大きい。大半は家内的な零細規模だが、それだけに堅い面もある。家内的には夫婦とお年寄りの三人で、自己物件で出前も含め一日当たり一〇〇~一二〇枚焼いて商売するのが、理想的と言えるかも知れません。

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