喫茶特集 プロントの21世紀戦略 プロントコーポレーション・本名正二氏に聞く
プロントは、ドトールコーヒーショップに遅れること七年の八七年、カフェとバーの二毛作店として一六〇円コーヒーを看板にスタートした。サントリーのアルコールノウハウと、UCCの喫茶ノウハウが合体して、数ある二毛作業態の中で唯一多店舗展開(9月末七五店舗)に成功している。二一世紀に向けての喫茶の行方や二毛作店の行方を、(株)プロントコーポレーション取締役社長本名正二氏に聞いた。
‐‐低価格コーヒーショップは相変わらず活況ですね。
本名 低価格というよりは、喫茶業界が世界価格に適応しようとしているということだと思います。喫茶だけでなく、すべての業界が世界価格にアジャストしようとしている。郊外型ファミリーレストラン(FR)は一〇ドルが世界価格ですから、日本のFRは後は内容の問題。コーヒーは一杯セルフで一〇〇~一五〇円、フルサービスで四〇〇~四五〇円が世界価格。ゆっくり商談したり、ゆっくり新聞を読みたいというフルサービスのニーズはあるにはありますが、少ないのでもっと淘汰されると思います。
1杯500円ではただ自滅するだけ
‐‐低価格コーヒーショップの新規参入が増えているのは新業態確率ではなくて、喫茶業そのものが変わる途上ということですか。
本名 そうです。今一番のキーワードは価格です。昨年、グルメコーヒーがアメリカから上陸したと話題になりました。しかし、一杯四五〇~五〇〇円じゃ、自滅するだけです。最近はあまり話題にも上らなくなりました。一〇〇円台のコーヒーを出せない喫茶店は残念ながら潰れます。
‐‐低価格が当たり前という喫茶事情となった時、差別化となるとやはりフードでしょうか。
本名 そうです。フードの充実がキーワードです。ケーキ、パン、スパゲティなど、コーヒー以外の要素で何があるかということです。その提供はテークアウトできるのか、どうかも大切です。プロントは7月から焼き立てパンに加えてスパゲティも導入しました。おかげさまで、昼の客単価が三〇~四〇円上がって三八〇~三九〇円になり、新規の客もつかんで客数も増えています。10月にメニューの見直しを行いますが、その目玉は「ブレンドがおいしくなりました」キャンぺーンです。苦みの強いヨーロピアンタイプから少しマイルドにします。また、夜のメニューを二割ほど減らして四〇アイテムくらいにし、クイックサービスの充実を図ります。
客層28歳で夜の客単価は1850円
‐‐プロントの夜メニューはFR並みに充実していますね。二毛作店の成功の秘訣は何ですか。
本名 自分の得意分野を軸にして夜、アルコールを絡めていけばいい。幸いにしてサントリーはバーの経験がありますし、UCCは喫茶に強い。得意なことをしているだけです。最近繁盛しているうどん屋と居酒屋の二毛作店があると聞いています。
‐‐今後のプロントの展開はどうなりますか。
本名 もっとイタリアンレストラン化したカジュアルレストランを目指しています。食べてお酒も楽しめる店づくりをしたい。よく、サイゼリヤさんと比較されるのですが、あちらの客層は一八歳で客単価は九〇〇円、こちらは二八歳で夜の客単価は一八五〇円です。プロントはファミリーというよりは、ヤングアダルトが対象です。
スタート時のバーとコーヒーショップの発想も、主流からサブにかわりつつあります。現在は食とドリンクの割合が四対六ですが、二一世紀にはこれを逆転させたい。出店は政令一〇〇万都市に五~一〇店舗、全体で二〇〇店舗の展開を目標にしています。年間約二〇店舗のペースで増やしています。