飲食店成功の知恵(81)繁盛編 居心地の良さを追求する

1996.02.05 94号 21面

飲食店で成功するためには、お客の心理の研究が欠かせない。研究なんて大げさな、と思っているようではまだまだ甘い。もちろん、研究などと呼ぶ必要はないが、繁盛店の経営者はみな、お客の心理を深く読み込んでいるものだ。

お客の心理を研究するというのは、お客がどう思うか、どう感じるかも真剣に考えてみることだ。こう書くといかにも当たり前のことのようなのだが、これが意外となおざりにされているのである。お客あっての飲食店としてスタートしたはずなのに、いつの間にかお客不在の運営に陥ってしまうのだ。お客が欲しているのはお客のためのお店なのだから、これでは繁盛などできるはずがない。

ところで、お客のためのお店として認められる条件とは何だろうか。まずこのことを考えてみよう。

答えはいろいろとあるはずだ。料理がおいしいこと。おいしいばかりでなく、他店にはない個性が輝いていること。値段が安く、お値打ち感が高いこと。サービスがきめ細かいこと。清潔感があること。雰囲気がいいこと、などなど。挙げていけばキリがない。

もちろん、飲食店の付加価値は商品(料理のクオリティー)、サービス、そして雰囲気の三つの要素の総合力で決まるのであり、どの要素が大事でどの要素はいい加減でかまわないなどということはない。三つの要素のバランスが取れてはじめて、お客にとって本当に価値のあるお店となる。

ところが、実際にはなかなかこのバランスが取れない。とくに資金的にも人的にも余裕のない小規模店の場合、そういうケースが少なくない。もちろん飲食店なのだから、料理がまずいのでは話にならないが、料理はまあまあでも、サービスがなっていないとか雰囲気に難がある、という例が多いのだ。

サービスも雰囲気も、お客の居心地感にとってなくてはならない要素である。先に商品とのバランスといったが、これらを磨くことは、多少の商品の難くらい優にカバーしてしまうほどの威力がある。ところが、小規模店に限って、このことに気がつかないのだ。サービスの重要性については以前述べたので、今回は雰囲気づくりについて考えたい。

雰囲気づくりでいちばん大切なことは、居心地のよさである。とくに小規模店は、立地としても地域密着型にならざるを得ない。地域の人たちにとってなくてはならないような場所になることが、小規模店成功のための鉄則である。

では、なくてはならないような場所とはどういう場所なのか。たとえていえば、「応接間」である。ただし応接間といっても、堅苦しい場所ではない。床の間付きの八畳間ではなく、ふだんはリビングとして使っているようなリラックスできる部屋、という意味である。お客のほうも、そういう部屋に通されれば遠慮なくくつろげるが、床の間の前では足を崩しにくい。それも同じことである。

逆に言えば、飲食店は「台所」であってはいけないということだ。ところが、小規模店は一般に、大衆店なのだからと理由をつけて、雰囲気づくりの手抜きをするケースが多い。そのため、まるでダイニング・キッチンで食事をしているような感じのお店になってしまう。これではお客は、たんなる利便性でしか利用してくれない。その手軽さを売り物にしたキッチンという業態もあるが、一般のお店では居心地の悪さでしかない。あなただってそういうお店で、家族や大事な友人と会食しようとは思わないはずである。

お客は料理も一緒にその場の雰囲気を楽しみたいのである。このことをもう一度、真剣に考えてみてほしい。

フードサービスコンサルタントグループ

チーフコンサルタント 宇井 義行

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