飲食トレンド 増えるガソリンスタンドの飲食戦略、特石法廃止で参入に拍車
集客力アップやリピーター定着を狙い飲食施設を併設、事業多角化を図るガソリンスタンド(GS)が増えている。石油製品の輸入元を制限していた特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)が3月末で廃止、輸入自由化を迎え大手スーパーなどの新規GS参入が相次ぐためで、今後始まる過当競争に備えるものだ。また、GS業界では価格競争が行き過ぎたこともあり、GS事業だけでは小売店の経営がままならぬ側面もある。すでに九年前の消防法の規制緩和でGSの経営多角化は始まっているが、今回の措置でさらに拍車がかかると見られる。飲食施設も多角化のターゲットの一つだ。
大手石油元売りの日本石油系千葉日石は、自社GSの敷地内て焼きたてパン「ツムトーベル」のチェーン展開に乗り出した。無農薬、無添加、有機栽培の小麦粉をつかったドイツ仕込みのエコロジーパンが売り物だ。GSの乱立する状況下、焼きたてヘルシーパンの魅力で集客強化を狙う。開店から一ヵ月、同店の集客に比例してGS事業の売上げも右肩上がりだ。
これと同様に、エッソ石油とゼネラル石油もすでに外食チェーンの神戸屋と提携、FFスタイルの焼きたてパンをGS敷地内に展開している。事業多角化でFF、FR、CVSに触手を伸ばすGSはほかにも多い。
「もとよりGSはロードサイドの好立地を押さえている。GS経営者は地主が多いのでGSの周りにも土地をたくさん持っている。日本のモータリゼーション文化やGSのクリーンなイメージも定着した。飲食併設の事業多角化は今後さらに進む公算が高い」(石油ジャーナリスト)という。
GSが多角化に乗り出す背景には、4月からの特石法廃止による石油輸入自由化がある。自由化で新規GS参入が相次ぐ見込みで、既存GSは来る競合激化に備え付加サービスを打ち出さざるを得ないのだ。
事実、大手スーパーや外食チェーンのGS参入を懸念する声は多い。このほど、大手スーパーのダイエーと総合商社の丸紅が組んだGS事業進出計画は、業界に大きな波紋を与えた。ダイエー駐車場内に給油所を設けるというものだ。
低価格戦略を徹底するダイエーなら、集客の目玉に給油の値引きを打ち出すのは必至、石油の価格破壊に拍車がかかる、という噂がGS業界を飛び交っている。
(2面につづく)