総点検-激震下の外食・飲食業 96年のFF・FR、独自性に拍車
長引く不況下、低価格と品質で市場のシェアを競い、経営面では内部構築に重きをおいていたファミリーレストラン(FR)、ファストフード(FF)がにわかに活況を呈してきた。九五年度決算を見ると、客数の回復が収益に貢献し始めている。一方で、マクドナルドが低価格と出店攻勢で一人勝ちの感があるFFでは、早くもバーガーキング(日本たばこ産業)の森永ラブ買収という淘汰も起こり始めてきた。大手企業の九五年度決算、各社の動向からFF・FRの九六年を展望する。
12月決算の大手ファミリーレストラン(FR)決算によると低価格に走った企業の販管費が増えて大幅減益となり、価格より質に軍配が上がったようだ。次期は従来の業態のテコ入れのほか、すかいらーくは新業態「スカイラークグリル」にすかいらーくとガストからの転換と新店で一一三店(現在二店)にして望みを託し、藍屋は夢庵から一部藍屋に再転換して業績の回復を図る。
すかいらーくのガストは九六年1月は月商で対前年比七%増とし、全社ベースでも昨年11月は二%、12月六%、1月七・三%それぞれ増として回復の兆しも見えてきた。
新業態ではスカイラークガーデンよりスカイラークグリルの方が転換コストが低く(ガーデン五五〇〇万円、グリル四五〇〇万円)客単価はガーデンが一〇七六円に対しグリルが一一五〇円から一二〇〇円とよいことからグリルに注力する。
中華のバーミヤンは相変わらず好調で売上げ一五七億七〇〇〇万円(対前年比五四・四%増)、経常利益一四億一〇〇〇万円(同一一三・五%増)となっている。
ロイヤルは「客単価は回復できなかったが客数は底堅い手応えがある」(稲田直太社長)。経営再構築の一環として出店を抑えて不良損益店を処分、内部固めにめどがつき、「三期連続の減額配当を今期か来期には一株あたり八五円配当が実現できそう」。
内部見直しの結果、ロイヤルホストでは販管比率が改善され総売上高五六一億円中、売上げ原価一六二億円(対前年比同じ)、人件費一六〇億円(同一%増)、諸経費一五〇億円(同〇・三%増)となった。人時売上高も三八三〇円と前年より一〇〇円上がっている。
来期はシズラーとロイヤルホスト併せて一五店舗の新店を出店、品質重視で展開していく。
ジョナスは有機栽培野菜の使用品目の拡大、アイスティーのお代わり自由や本格的な挽きたてコーヒーやサラダバーの設置店舗増設など、品質重視要因とお値ごろ要因をうまく取り入れて客数を伸ばし二桁増収増益と好調だ。
店舗数も順調に伸ばし二〇店出店して一七八店としている。利益面でも円高やすかいらーくグループの共同仕入れなどで原価率を〇・四%改善して三〇・二%にし、来期も二桁成長を見込む。
藍屋は藍屋、夢庵両業態の上半期の不振を下半期に回復できずに苦戦した。藍屋から夢庵に転換したものの藍屋に再転換すると客数はそのままだが、客単価アップ分が増収となるために立地によって一部再々転換を図ったりしているために利益面ではかなりの減益となっている。
夢庵は商品力の強化、藍屋は当初の客単価一八〇〇円台で集客できる業態回復が課題だ。
日本マクドナルドはハンバーガー類の価格改定による大幅な客数増、並びに三二三店の新規出店(期末店舗数一四八一店舗)の寄与により、九五年度は過去最高の収益となった。九六年度は創業二五周年にあたり、顧客還元のプロモーションを中心に一層強力なマーケティング活動を推進して収益を図るとともに、サテライト店舗も含めて五〇〇店の新規出店を行って二〇〇〇店舗体制構築をめざす。
一昨年からのセットメニューによる低価格と平行して昨年は二一〇円のハンバーガーを一三〇円に価格改定したのをはじめ基幹商品八品目すべての単品値下げも断行した結果、既存店の客数は二〇%増(大型店のみは一〇%増)、客単価は五%減で六八〇円、売上げは一四%増(同一〇%増)で、来店客数は七億四四六四万三〇〇〇人であった。
藤田社長は長期展望として「何とか市場の五%を取る企業にしたい」と語り、「三年後には物価がもっと安くなる。今、マクドナルドは安いと言われるが、三年先のプライスを出していると思っていただきたい」と、低価格を続投すること、店舗数を年間五〇〇店以上のペースでしばらくは急拡大していくことを3月7日の記者発表会で語っている。
創業価格プロモーションは第一弾を1月に八〇円バーガー、一〇〇円チーズバーガーを行い全店の一日売上げ記録を一四億八九〇〇万円(1月14日)と更新したばかり。第二弾を3月中旬にビッグマック二〇〇円で行う。また、2月に出した新商品ペッパー風味の「ジューシーダブルマック」一九〇円は好調で早くも売上げに貢献している。4月には一五〇〇号店を一二〇坪、一八〇席の大型店でマクドナルド発祥の地“銀座”にオープンする。
日本ケンタッキー・フライド・チキンは縮小均衡で内部固めをここ数年行ってきたが「商品面および店舗面でもコンセプトが明確になった」として九六年度はKFCブランドの再創造を行いながら積極的に拡大均衡に出る。
まずは主力商品のフライドチキンを全店、素材の鶏肉をこの4月にハーブ鶏に切り替える。一方でフライのエキスパートとして惣菜市場に参入。コロッケ、豚カツなど揚げ物を既存の店舗でデリバリーする実験に着手する。
従来の商品には新たな価値の創造を図ると同時に新しいビジネスチャンスへの挑戦をさらに積極的に推し進め、当面はケンタッキー・フライド・チキン(KFC)一一〇〇店、ピザハット三〇〇店、菱膳(弁当・すし)一〇〇店の一五〇〇店体制に向けて邁進するとしている(九五年11月現在の店舗数は一一八八店)。
3月6日、大河原毅社長は都内・ホテルオークラで九六年度の経営戦略を発表し、「九五年度は発表の通り、売上高約六九七億円、経常利益約二六億円で着地した。バブル崩壊後の厳しい経営環境下で数年KFCブランドの再創造に取り組んできたが、答えは既存店の中ですることがまだまだたくさんあるということだった。チキンはもちろん、野菜、水、塩などあらゆる素材を徹底的に見直し、質の追求をすること。また、快適な店舗を実現するためにホームキチンコンセプトの店舗を積極的に展開していく。顧客の新しいニーズに応えるサービスの提案としてデリバリーに注力し、CVSとの差別化を明確にしていきたい」など、昨年の総括、今年度の活動計画、今後の展望について語り、金利が低く、競争も激しくなっている中で四年ぶりに積極策に方針転換することを語った。
昨年はテークアウト市場に対してホームデリバリー、イートイン活性化のためにホームキッチン/カーネルバッフェ/ドリンクバー、サービス改善のためにチームチャレンジ(世界的なKFCの技能コンテスト)、品質改善のためにチキンのフレッシュ国産化、新商品としてグラタン/チキンポットパイ/クリスピーサラダを投入、コスト改善のためにメニュー改定/包材の輸入などを行ってきた。
新規事業としてピザハットの積極展開、和風部門として宅配ずしコンセプトの開発(寿司処菱膳)を行い、本社の統合移転、情報システム化の促進、社員ライセンシーの本格的導入を行ってきた。
これらの活動の中から方向性が見え始め、結果が出始めている。
JT(日本たばこ産業)は3月14日、ロンドンのグランド・メトロポリタン社とバーガーキング(BK)・ブランドの共同展開に合意したと発表した。
これを受けて米国のバーガーキング・コーポレーションと共同出資で4月に合弁会社を設立、そしてBK運営会社バーガーキング・ジャパンを4月中にも設立し、日本での事業展開を行う。
早期に立ちあげるため、JTは(株)レストラン森永と「森永ラブ」の営業譲受に基本的に合意、一年程度で森永ラブ店をBKのフランチャイズ店として順次切り替えていく。