アポなし!新業態チェック(80)「ラ・メール・プラール」横浜みなとみらい店

2013.09.02 414号 23面

 ●ダイナック初の海外ライセンス出店

 サントリーグループのダイナックは、フランスの世界遺産モン・サン・ミッシェルに本店を持つ老舗レストラン「ラ・メール・プラール」とライセンス契約を結び、横浜みなとみらい地区に新しく開業した商業施設「MARK IS(マークイズ)みなとみらい」に同社初のライセンス店舗をオープンした。

 同本店は、1888年に宿屋として創業した由緒ある飲食店で、創業者のアネット・プラールは700ものオリジナルレシピを開発したといわれているが、その看板メニューが「伝統のふわふわオムレツ」。銅のボウルで入念に泡立てたオムレツ生地は驚くほど大きくふくらみ表面はさっくりと焼き上がりながら、中は溶けるような独特の食感を持つオムレツが出来上がる。

 同店のメニューは、この「伝統的なオムレツ」または「伝統的なマルミット〈鍋料理〉」をメーンにしたランチコース(各1575円)など、コース仕立てが中心。

 モン・サン・ミッシェルは年間350万人が訪れる観光地であり、本店には世界中から数多くの著名人も訪れている。今回出店した横浜みなとみらい店は、そうした世界に知られたブランドである本店の伝統を踏まえた店づくりを行い、メニューやレシピだけではなく内装や装飾品に至るまで本店のイメージを再現したという。

 ダイナックが海外ブランドとのライセンス契約による出店を行うのは創業以来初めてとのことだが、従来、飲酒業態を中心に展開して来た同社が、今後こうしたレストラン業態を展開する布石として、重要な位置を占めるブランドになることは間違いないだろう。

 ★けんじの評価

 このところ、取材に行く新しい商業施設はどれも近隣の駅に直結している。これは何か経営的なトレンドなのかも知れない。「マークイズみなとみらい」もまた、横浜高速鉄道みなとみらい線のみなとみらい駅に直結した商業施設であり、改札口を出ると、そこはすぐ同施設の地下4階フロアにつながっている。

 今年の3月から、みなとみらい線、東急東横線、東京メトロ副都心線、東武東上線、西武池袋線・有楽町線がそれぞれ相互乗り入れを始めたため、各沿線の商圏にはかなり大きな変化が出ているはずだ。平日であっても、首都圏では有数の観光地である「みなとみらい」エリアは人出が多い。特に開業して間もない同施設はかなりの賑わいで、ランチタイムの同店も店頭に行列が出来ていた。少し時間をずらして再度訪れたが、それでも3組ほど待たされた後の入店だ。

 経営は別の会社だが、同店の日本1号店は東京・丸の内にある。今回、同社が正式に日本国内でのライセンス契約を結んだということなのだろう。看板メニューの「オムレツ」は、ちょっと言葉で説明するのは難しい、何とも不思議な料理だ。「百聞は一見に如かず」とはよく言ったもので、何度も写真で見ていたオムレツがあの大きさなのだとは、目の前に出てくるまで分からなかったほど。

 観光地という意味では、行ってみる価値のある店に違いない。本店の伝統をそのまま再現した店であると紹介されているにもかかわらず、なぜか店内でスタッフがテーブル番号を伝えるために飛び交っているのは英語なのだが、まあそんな細かいことは気にする必要がないのだろう。

 (外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)

 ◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期からFFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。

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