ガチで語ろう!業務用食材卸覆面座談会 給食を知り尽くした裏方が一刀両断!

2014.06.02 423号 07面

 ◇超保守的な学校給食

 かつては児童の栄養補給のためにスタートした学校給食。今では教育の一環としての食事と変わってきている。誰もが体験したことのある学校給食だが、その裏側はよくわからないのが実態だ。学校給食を得意とする業務用食材卸の3氏に学校給食をテーマに語っていただいた。(司会・編集部)

 ◆参加者

 ・A氏(45歳) 大手給食系卸・部長

 入社17年目。産業給食をはじめ学校給食、メディカル・シルバーなど給食業態全般に精通。外食、中食など取引業態の拡大を狙う。

 ・B氏(52歳) 中堅給食系卸・営業本部長

 入社30年目。スーパー惣菜、学校給食で活躍。得意分野は学校給食。学校給食の裏も表も知り尽くすたたき上げの営業マン。

 ・C氏(35歳) 大手外食系卸・支店長

 入社11年目。ある地方都市の外食、学校給食、産業給食とすべての分野を担当。20代にして支店長に抜擢された若手リーダー。

 ●事務処理、年々煩雑に 食材使用基準バラバラ

 司会 学校給食の現状の問題は?

 A氏 現状の問題は予算(給食食材費)。天候不順で野菜の高騰などがあると、われわれが納入する加工食品のコストが圧縮される。消費税に関しても必ずしも増税分がプラスされるということにはなっていない。

 C氏 給食費が上がらない状況でありながらチャイナフリー(中国産食材不使用)はいまだに求められている。

 B氏 東日本大震災後は、東北を盛り上げるために東北の食材を使おうという機運があったが、原発事故以降は、福島の食材は使わない、北海道を除く静岡以東はダメというように広がった。

 これは市町村によって大きくばらつきがあり、その地域のものは一切ダメ、放射能検査で基準値以下であればOKというようにバラバラ。中国産は相変わらずNG。しかし、中国産を使わなければ成り立たない製品はメーカーの安全証明書の提出が求められるなど、われわれとしては非常に事務処理が増え、煩雑になった。

 司会 給食費は、消費税分は転嫁されるのが当たり前?

 A氏 市町村によっては異なる。据え置きの市町村も多い。8%では据え置き、10%になった時点でと様子見のようだ。

 B氏 消費税だけでなく、食材費、物流費も上がっているので、みんな頭を悩ませている。

 C氏 本当に行政によってバラバラ。中には給食費は無料というところもある。一方で未納入の問題もある。

 司会 未納入の場合はどこが負担する?

 B氏 きちんと払っている家庭の給食費で賄っていると聞く。

 ●中国・東北産には過敏 ゲーム感覚でクレーム

 司会 東北・チャイナフリーについて?

 B氏 原発事故以降、東北はダメだけれど中国はOKというところもでてきた。

 C氏 教育庁が問題ないといっても、親からクレームが来る。栄養士さんは、予算が限られているのでチャイナフリーといっている場合ではない。だが、親に学校給食の原材料などの情報公開をしているため、中国産、東北産の材料があると親が過敏に反応する。それを考えると出せない。

 B氏 問題があると市役所に電話する。それが教育庁に回り、栄養士におりてくる。そういうことを考えるとトラブルは避けたい。

 司会 クレームがあるというより、クレームがこないようにということ。

 B氏 クレームの数はすごい。よく見つけたなというのもある。

 C氏 児童が探すようになった。

 B氏 児童が先生に手柄を見つけたように報告し、ゲーム感覚で探している。

 ●一般ゴミまでも回収 悪しき慣習でしかない

 司会 アレルギーについての対応は?

 A氏 栄養士さんが、求めるアレルゲンを除いた商品を提案している。最近では、ピッキングルームでのコンタミの可能性まで指摘される。

 B氏 コンタミについては任意だが、関心は高まっている。学校給食だけやっているわけではないので卸としてはまとまった物流ができず、高コストになる。

 C氏 コンタミはホントに最近。

 A氏 保健所からも言われる。

 司会 卸でコンタミが発生するリスクは?

 B氏 ゼロではない。小麦粉が宙に舞っている可能性も否定できない。

 C氏 昔はそんなことはなかったというのが正直な思い。だが、アレルギーを持つ児童が増えているのも事実だし、下手をしたら死もありえるから敏感にならざるを得ない。

 司会 アレルゲンが使用されている商品は納入できない?

 C氏 まったくダメという場合もあれば、アレルギーの児童は別でという場合もある。しかし、学校としてはみんな同じものを食べさせたい。だから一つの商品で対応したいというケースが多い。メーカーさんが開発したアレルゲンを除いた商品を、われわれはチョイスし、それを栄養士さんがジャッジする。

 司会 その他に問題は?

 A氏 ゴミの回収。ゴミの回収業としての免許もないのに現実には回収をしている。

 B氏 空き缶、ドレッシングの空きボトル、段ボールなど行政の回収のトラックが走っているのにもかかわらず、要望はますます強くなっている。

 C氏 一般ゴミで出せるものまで回収している。瓶・缶は廃棄するのに有料になるので状況的にはわからなくもないが、一般ゴミまで回収と言われると……悪しき習慣でしかない。

 ●メニュー変更消極的 地産地消、予算面で無理

 司会 学校給食のメニューの傾向の変化は。

 A氏 地産地消とアレルギー対応の食材が、栄養士さんに好評。ケーキに卵が入っているのは当たり前だったが、今では卵を抜いてほしいという声は強い。行事食はみんな同じものを食べさせたい。

 C氏 使用食材は変わってきたが、メニューはそんなに変わっていない。年に数回の催し物と、ある地域では給食にフカヒレ、伊勢エビが出るなど、昔では考えられなかった食材が使わる。

 B氏 食育の一環として郷土料理、世界の料理を考えられている栄養士さんもいる。

 A氏 大きな市町村ほどメニュー変更をしたがらない。実績があるから安心だとか、新しいことをすると作業オペレーションでトラブルが起きやすいなど、保守的な部分が学校給食は強い。大きなセンターになればなるほど毎年同じメニューがぐるぐる回っているという感じ。

 C氏 メニューを考える部署があるわけではなく、各栄養士さんが考えるので、毎年同じメニューをどこにあてはめるかパズルのようなもの。栄養士さんの異動で新しいメニューになる場合もあるが、それは結局前の学校でやっていたメニュー。

 司会 地産地消については?

 A氏 地産品を使用すると何%補助金が出るという市町村がある。そういうところは地産の食材の使用率が高い。

 C氏 予算との兼ね合い。地産地消になればなるほどコストは上がる。児童数を考えると100食、200食という話ではないので100%使えればそれにこしたことはないが、現実的に予算と物量を考えると無理がある。

 B氏 せっかく特産品があっても加工する場所がないという問題もある。

 ●外部委託はもうからない仕事 メニュー材料コントロール不可

 司会 今後、外部委託は増える?

 B氏 調理員は公務員なので財政的に厳しくなる。委託にすると予算がきちっと決まる。しかし、実際に委託先の話を聞くと「ぜんぜんもうからない」と嘆いている。

 A氏 メニュー、材料のコントロールができれば、ある程度利益率のコントロールできるが、メニュー、材料ともに決まっているためもうからない。利益を出すためには、今まで10人でやっていたことを8人でやるくらいしかない。

 C氏 やってみなければわからないがんじがらめのもうからない仕事。それに市町村がやっている割には、委託先が県内の企業でない場合もある。地域の活性化にもなっていない。

 司会 少子化といってもまだまだ学校給食は安定市場と思っていたが、現実的には厳しい状況。これからの展望は?

 A・B・C氏 給食費を上げてもらうしかない!

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