惣菜弁当の殿堂(26)神崎屋「松茸ごはん」 秋の挨拶を演出する風物詩
1926年創業の老舗食品スーパー「神崎屋」(京都府向日市)の名物といえば、地域に秋の味覚を伝える「松茸ごはん」だ。誕生はマツタケの収穫が激減した73年。価格高騰でマツタケの入手が困難となる中、「マツタケご飯にすれば安価で多くの人に味わってもらえる」として打ち出した。以来、採算度外視で「生マツタケ」にこだわり続け、最盛期は日販500~600食に達するほどの看板商品に定着。「マツタケ食べはった?」という初秋の挨拶、京都の食文化をいまに伝える、地域の風物詩と化している。
●商品発祥:相場高騰で誕生 思い悩み500円で販売
古くは八百屋から始まり、地域に旬素材を提供し続けてきた「神崎屋」にとって、秋にマツタケは欠かせぬ看板商品であった。とはいえ、昔は現在のように高価ではなく、現会長の布施孝一氏が2tトラックいっぱいに積んでこられるほど毎日取れていたという。
だが、73年に収穫量が激減し価格が高騰。「このままでは一般客が買えない」(布施氏)と思い悩み、考え出したのが「松茸ごはん」だった。そして、マツタケよりも圧倒的に安い500円で売り出した。「秋の味覚を味わってもらいたい」という一念で販売した結果、飛ぶように売れ、以来、地域に欠かせぬ秋の風物詩に定着した。
●調理概要:京都らしく持ち味重視 生ゴメ2.8kgにマツタケ900g
まず、かつおのだし汁でご飯を炊き上げ、醤油、みりん、砂糖で調味と色付けをする。それを大きなおけに広げ、スライスカットして軽く煮付けたマツタケ、細かく切った油揚げを混ぜ合わせれば「松茸ごはん」の完成。これを容器に詰めて、最後にマツタケのしぐれ煮を添える。マツタケの使用量は、生ゴメ2.8kgに対し900gほど。一つのおけで一度に22~23人前ほどを作る。
●販売実績:最盛期は500食越え 赤字覚悟でも販売継続
毎年9月の第1週~11月中旬ごろまでの販売。「神崎屋」での店頭販売を主力に通信販売を含め、平均日販は200~300食。最盛期には500~600食にも達する。ただし、マツタケは収穫量にムラがあり相場も大きく変動する。毎年かならず、赤字が避けられない日や週があるが、「それでも「地域の食文化を思えばやめられない。どれだけマツタケの価格が高騰しても値段は上げられない」(布施氏)と言う。
●ポイント:“生”ならではの香りと食感 700円で「十分食べた!」
一番のこだわりは、マツタケが「生(フレッシュ)」であること。当初から新鮮なマツタケに限り、保存料などの添加物を使わず、持ち味を壊すような味付けもしない。
布施会長の息子で製造責任者の布施亘氏は、「やっぱり生でないと、全く香りと、歯応えが違う。これだけは絶対に守るようにと会長から強く言われています」と胸を張る。
その言葉の通り、700円でも「十分マツタケを食べた!」と実感できる。
「地域の人たちに、今年もマツタケを食べたと言ってもらいたい」という願いから生まれた「松茸ごはん」。そこに込められた願いと品質はこの40年以上変わらず受け継がれている。
◆店舗概要
「神崎屋」所在地=京都府向日市寺戸町東ノ段4
営業時間=1~2月:午前10時~午後6時 3月以降:午前10時~午後7時
◆食材の決め手 愛用食材
ヒガシマル醤油「ヒガシマル本醸造うすくちしょうゆ」
素材を引き立てる色合いと味付け
主役のマツタケの良さを引き出すには、ご飯が主張しすぎず、それでいて味はうるさくなく、しっかりと付いていなければならない。その絶妙なバランスを調整するのが「ヒガシマル醤油の淡口しょうゆ」だ。「いろいろ試しましたが、これが一番塩度を合わせやすく、色合いもきれいに出るんです」と布施亘氏。こだわりのマツタケを引き立たせる工夫は醤油選びから始まっている。
規格=1.8L(常温)














