ニューヨーク通信 外食ビジネスの新発想(104)スシ-テリア タブレットで注文・支払い

2016.04.04 445号 10面
店内寿司ステーション(写真上)

店内寿司ステーション(写真上)

注文用iPad 7分でマイ寿司を用意

注文用iPad 7分でマイ寿司を用意

 アメリカの寿司店はついにここまで来たかという感のする「スシ-テリア」。ニューヨークの観光名所、エンパイアーステートビル1階という一等地にある。

 店内のiPad、もしくは個人のタブレットやスマートフォン、パソコンで注文、クレジットカードで支払いを済ませると、7分以内にオーダーした寿司が食べられるという仕組みだ。口頭での注文は受け付けていない。ということは、デジタル製品を使えない人はオーダーさえできないが、店にとっては人件費や時間の削減、会計や在庫管理もスムーズに行え、アメリカのファストフードやファストカジュアルでよく見られるようになったシステムだ。(外海君子)

 ●iPadで注文!クリーンで静かな店内

 整然とした、クリーンなインテリア。オフィス街であることからランチタイムは多忙だが、すべてデジタル管理していることから、寿司職人が次から次へと注文をさばいていく。まるで寿司工場といったシステムだ。店内にはiPadが17台並んでおり、これで注文する。使い慣れていない人でも、絵も豊富で、手順も明解であることから、指示に従ってフォローしていけば難なく使える(はずだ)。

 例えば、マグロのにぎり寿司を食べたいとする。絵と文字で示されているマグロのにぎりをタップすると、ガリがより多く欲しいか、それともガリなしか、またワサビがより多く欲しいか、それともワサビ抜きかを選ぶ画面が出てきて、さらに詳細のコメントを書き込める欄が出てくる。ここで最初の注文を済ませると、追加の注文に進む。

 巻き寿司は、さらに選択肢が広くなる。例えば、アメリカン寿司の定番、カリフォルニア巻きを注文するとしよう。写真の下には、「カニ肉、アボカド、キュウリを寿司飯と海苔で巻き、ゴマをまぶしたもの」と説明があり、このほかに、玄米、クリームチーズ、マンゴー、ハラペーニョなど、各1$で追加できる欄が出てくる。ガリやワサビ、醤油は無料だ。

 これで注文を終わるとなると、デリバリーもしくはピックアップの選択画面に移り、時間や場所を指定して、クレジットカードで清算を行う。オフィスで仕事をしている人にとっても、職場で簡単に注文でき、待つことなくピックアップできるし、また配達もしてもらえるので、便利でユーザーフレンドリーなシステムだ。昼時の混雑したときでも、このシステムのおかげで流れがうまくいっているという。口頭での注文がないから、喧噪もなく、店内は静かだ。

 ●質の高い、おいしい寿司を迅速に、リーズナブルな価格で

 オーナーのヴィクター・チャン氏によると、「デュアン・リード」という、日本のマツモトキヨシのようなニューヨークの薬局チェーン店でパック入りの寿司が売られているのを見た時に、「質の高い、おいしい寿司を迅速にまたリーズナブルな価格で提供しよう」と思い立ったと言う。同店は、スシ-テリア二号店で、第一号店は、やはりニューヨークの有名なスカイスクレーパーの一つ、シティグループセンタービル内にある。

 メニューは幅広く、ここ数年人気の枝豆や、ギョウザやシュウマイなどの選択肢のあるアペタイザー類、海藻サラダやスパイシー刺し身サラダなどのサラダ類、マンゴーマッドネスやオレンジドラゴンなどと称したスペシャリティロール類の巻き寿司、グリーンジャイアント、ハワイアンクランチなど、2枚の海苔を使ったオリジナルの超太巻き寿司、寿司ブリトー、そして、味噌汁やサラダ、刺し身などをコンビにした寿司コンボがある。

 また、午前11時30分から午後3時のランチタイムには、好みの巻き寿司を6貫選べる「巻きバイト」がある。定番のカリフォルニア巻き、ミックスベジタブル、エビ天ぷら、スパイシーサーモンなど12種類の巻き寿司から選べ、すべて99¢から1$19¢の低価格。特に女性に人気という。

 ニューヨークのほとんどのレストランが行っているように、ケータリングにも力を入れている。なにしろ、金融、ビジネスの中心地、ニューヨークには数知れない会社があり、会議や商談、パーティーなどを頻繁に行っている。これに目を付けない手はない。特に第一号店は、シティバンク他数多くの会社がオフィスを持つシティグループセンタービル内のアトリウムにあり、昼時はビル内および近隣から多くのビジネス客が詰め掛けるところだ。同店のケータリング用のメニューは、40人前の寿司盛り合わせが480$、25人前が300$、10人前が120$となっており、さまざまな注文に応じる。

 ●外食産業のデジタル化を寿司で実践

 さて、デジタルは、使い慣れた人には便利だが、脆弱でもある。新しくレストランを開店するための投資を募る「レストラン・スタートアップ」という人気のTV番組があるが、1日限りの模擬店でPOSシステムが不良を起こし、厨房では手書きの注文書きも読めず、混乱を来して、投資家からの投資を得られないという悲劇に見舞われたケースがあった。実は、同店でも、先にオープンしたシティグループセンター店で、開店初日にインターネットがダウンして開店休業という憂き目にあった。これを教訓に、二重のバックアップシステムを準備したという。

 これから先、外食産業のデジタル化は、いろいろな形で進んでいくのだろう。それを日本の伝統食、寿司で実践したのがスシ-テリアだ。

 ◆人気メニュー5

 「サーモン・ラバー(Salmon Lover/サーモン・アボカド巻き6貫、スパイシーサーモン巻き3貫、サーモン巻き3貫、キングサーモンにぎり2貫)」(15$95¢)

 「寿司刺し身デュエット(Sushi Sashimi Duet/メバチマグロのにぎり、キングサーモンにぎり、ハマチにぎり、メバチマグロ、キングサーモン、ハマチの刺し身、カリフォルニア巻き6貫)」(18$95¢)

 「クランチー・イースト(Crunchy East/アボカドとキュウリ、スパイシーサーモンの巻き寿司)」(10$95¢)

 「スパイシーカニ味噌汁(Spicy Kani Miso Soup)」(3$95¢)

 「ツナアボカドサラダ(Tuna Avocado Salad)」(7$95¢)

 ●事業データ

 スシ-テリア(Sushi-teria)/所在地=Empire State Building 350 Fifth Avenue New York NY/開業日=2015年5月/営業時間=平日 午前11時~午後9時、土日 正午~7時/床面積=1,400平方フィート/平均客単価=16$

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