メニュートレンド:“エロ”くて、“ズル”いメニュー「食堂とだか」
居酒屋業態が低迷する中、3ヵ月先まで予約が埋まっている居酒屋がある。来店客が次回の予約をして、それで予約が埋まるという状況だ。お客さんの大半がリピーターだが、そのほぼ全員が、来店のたびに締めとして注文するメニューがある。「何度でも注文せずにはいられない」とお客さんをトリコにしているのが、「食堂とだか」の「牛(うし)ご飯」だ。
●お客さんのほぼ100%が注文する最強の締めの一品
「レアの肉のロゼ色はエロい」と戸高雄平店主は言う。言われてみると、「牛ご飯」には、どこかしらなまめかしさが漂う。脂が溶け出したロゼ色の肉の表面は艶っぽく、今にも滴り落ちそうな肉汁がお客さんを誘う。この見た目で食べる前に、お客さんは最初のパンチをくらうのだろう。
「店を開業するとき、キラーコンテンツを作りたいと思いました。ステーキで使用するいい肉があったので、肉+ご飯で看板メニューになる締めの1品を考えて、できたのがこれです」と戸高店主。「肉+ご飯」の組み合わせなら、ローストビーフ丼、牛丼、ステーキ丼、すき焼き丼……など他にもいろいろ考えられるが、肉のロゼ色を強調するという点では、「牛ご飯」にはかなわない。
そして、見た目に勝るとも劣らないのが「味」だ。おいしさでお客さんを魅了しなければ、常連客が毎回注文することはない。味付けは、「焼肉のタレをイメージした」という醤油、砂糖、みりん、ごま油と、隠し味に豆板醤。
このタレを煮立たせ、サシの入ったサーロインと特上もも肉の薄切り肉にサッと火を通す。これを温かいご飯の上にのせ、ごま油の風味とほのかにピリ辛の甘じょっぱいタレの付いた肉でご飯を巻いて食べる。
これが、おいしくないわけがない。肉+ご飯の食べ方としては鉄板中の鉄板。人がおいしいと感じるツボをガシッと押さえている。食べた者は抵抗のしようがなく、ある意味、反則ワザの“ズル”いメニューだ。さらに、「『あの店の○○って、うまいんだ』と食べた人が、『他の人にも食べさせたい』と思うようなメニューが、人気メニューのポイントかもしれませんね」と戸高店主。確かに、人に言いたくなる、自慢したくなる……そんな人を動かす力が、「牛ご飯」にはある。
●店舗情報
「食堂とだか」
所在地=東京都品川区五反田1-9-3 リバーライトビル地下1階/開業=2015年9月/坪数・席数=5坪・8席/営業時間=18時~24時。日曜定休/平均客単価=5000~8000円/1日平均集客数=24人
●愛用食材
「タカラ 本みりん 醇良」
宝酒造(京都市下京区)
本みりんといえば、やっぱりコレ
本みりん造りの要である麹づくりをはじめ、仕込み、熟成、充填(じゅうてん)に至るまでのすべての製造過程を国内の自社工場で行った、100%国内醸造の本みりん。「『牛(うし)ご飯』の甘じょっぱいタレのコクとやわらかな甘味を出すのに欠かせませんね」と戸高店主。
規格=1.5L