デリカの「今」がわかる中食通信:売れてるご当地デリカ惣菜弁当100選(5):知久屋
◆浜松市のソウルフードは天然由来 「おいしさ」とは「身体にやさしく飽きない味」
静岡県浜松市を拠点に53店舗を展開する惣菜専門店「知久屋」の理念は「おいしさとは身体にやさしく飽きない味」。1977年の創業以来、素材と調理はすべて天然由来を志向。24時間稼働の自社加工場で鮮度抜群の健康惣菜を作り続けている。
地域過密の多店舗化が示す通り、地元客からの支持は盤石。その厚い信頼は「パート従業員の口コミ」に起因する。加工場や店舗で働く多くの従業員が日々の調理現場で「天然由来」を直視、「食の安全」を体感している。そして自らファンとなり購入しているのだ。身内が率先して常連客となり、口コミで内情が広がれば、品質訴求においてこれ以上の説得力はない。まさに作り手と買い手が一体となった「地元の台所」だ。
商品数は年間約600品。季節ごとに旬の素材を生かした約200品の惣菜が売場に並ぶ(サイズ別、チルド包装を含む)。「すべて看板商品」を自負する中から、特に知久屋らしさを象徴する逸品を紹介する。
健康惣菜弁当各種
●「ヘルシー弁当(鯖)」 561円(税込み)※価格は店舗により異なる
素材が際立ち彩りバランスも秀逸
POINT=質実的な健康弁当の手本に
知久屋のコンセプトを具現化した看板弁当。2006年の発売以来、全く同じ内容を継続。野菜が豊富なだけでなく、一品一品、素材の存在感が際立ち、彩りのバランスも秀逸。女性御用達に見えるが、健康に配慮する男性からも人気で、惣菜やスイーツを付け加える購入客が多い。また、本品を手本にしたと思われる健康弁当が各地で見られる。おかずは鯖塩焼き、煮物、卯の花、ヒジキ煮、煮卵、ミニトマト、梅干し。約421kcal。
●「のり弁当」 561円(税込み)※価格は店舗により異なる
鉄板トリオで人気ナンバーワン
POINT=発売から同じ内容を継続
知久屋のおかずの「鉄板トリオ」と評される「鯖塩焼き・コロッケ・鶏唐揚げ」を詰め合わせた人気ナンバーワン弁当。各店とも日販30~40食を見込むエース級の位置付け。ゴロゴロの金時豆とキュウリ漬け、山盛りきんぴらの存在感も抜群。幕の内弁当と名乗る実力がありながら「昔から、のり弁なのでのり弁」(同社広報)という謙虚さもニクイ。1999年の発売以来、全く同じ内容を継続。約733kcalで食べ応えも絶妙。
●「ポテトサラダ」 167円(税込み)/100g S80g・M135g・L210g ※価格は店舗により異なる
酸味と甘口が絶妙な「浜松テイスト」
POINT=自社製造のマヨネーズが決め手
創業時から変わらぬ「ポテトサラダ」。具材は男爵芋、ニンジン、玉ネギ、キュウリ、調味は塩、コショウ、マヨネーズ。一見、ごく普通のポテサラだが、マヨネーズは創業時から毎朝、割卵から調合まで自社製造。「酸味がありながら甘味が際立つ」という独特の味わいは「浜松のソウルテイスト」と評されている。素材はすべて天然由来のため賞味期限は製造後24時間。鮮度厳守で当日製造・出荷され、全店日販約255kg。100g約156kcal。※男爵芋は一部変更の場合あり
○マヨネーズは天然由来の象徴 =フレッシュな味わいが地元に浸透
「天然由来」の象徴でもある自家製マヨネーズは自社工場で毎朝製造する。割卵後、卵・油・酢を合わせミキサーに25分間かければ完成。新鮮かつ甘口の味わいは「浜松の味」と評されるほど地元に浸透している。1日に使う卵の量は約60kg。割卵機で全卵を、手割りで卵黄だけを取り出し、全卵と卵黄の配合により3種類のマヨネーズを作り、「ポテトサラダ」「野菜たっぷりポテトサラダ」「スパゲッティサラダ」の3品に使い分けている。
●「ポテトコロッケ」 130円(税込み)/個 ※価格は店舗により異なる
個人店の手作りを忠実に踏襲
POINT=後味がスーッと消えて、また食べたくなる
昔ながらの個人店の手作りコロッケを忠実に踏襲。具材は男爵芋、合いびき肉。調味は塩、コショウ、バターのみ。調理の効率化を助ける調整添加物類は不使用。男爵芋の持ち味と香りが引き立ち、粗びき肉との相性が抜群によい。北海道産を主とする男爵芋は、倉庫で約3ヵ月間寝かせ、糖度が増してから使用。ポテトコロッケの全店日販は約7,000個。「後味がスーッと消えて、また食べたくなる」という知久屋のおいしさ、天然由来のこだわりを象徴する逸品。※男爵芋は一部変更の場合あり
●「ソーセージ・ベーコン」「玄米パン」「麺類(そば・うどん・中華麺)」
健康探究を誇る自社製造の逸品
POINT=見栄えよりも質実を追求
天然由来の健康惣菜を志向する中で生まれた昨今の注目商品が「ソーセージ・ベーコン」「玄米パン」「麺類各種」だ。玄米パンは小麦の代わりに玄米を用いたビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富な自家製パン。自社加工場で玄米を丸ごとペーストにすることで、滑らか食感の製パンを実現。玄米の豊かな風味と甘味、フワフワかつモチモチの食感が味わえる。トーストにすると風味がさらに引き立つ。ソーセージ・ベーコンは着色料や保存料を一切使用せず、自社加工場で製造したもの。惣菜や弁当の調理材料として開発したが、想定以上の高品質かつ引き合いが強いことから単品販売に昇格。見栄えはイマイチだが、食べれば納得の逸品。麺類は毎日、自社加工場でそば・うどん・中華麺の製麺を行い、各種麺類を商品化。地元客からは「明らかにのど越しがよくなった」と好評を得ている。
●「知久屋の手作りおせち料理」
見出=見栄えはイマイチでも地元客は大歓迎
POINT=理由を明記して納得かつ歓迎
「素材本来の味と、心もからだも喜ぶ一年の始まりを」と銘打った手作りおせち。大晦日渡しの予約限定で3種合計・約4,000セットを販売する人気ぶり。着色料や保存料を使わないため色味と見栄えはイマイチ。実際、とある代理店を通じて販売したところ、購入者から「色が悪く、恥ずかしくてお客に出せなかった」とのクレームを受けた。それを機に自店限定の予約販売に変更。色が悪い理由を明記して案内すると、知久屋の理念に理解がある地元客は即納得かつ大歓迎。予約販売数は毎年、生産能力の限界に達するという。
●店舗情報
「知久屋」 53店舗/浜松市中央区 本社・工場所在地=浜松市中央区桜台1-2-1/創業(惣菜店)=1977年/設立(食料品店)=1957年/年商73億円(2024年3月期)/店舗数=浜松市を拠点に静岡県、神奈川県、東京都で計53店舗を展開