デリカの「今」がわかる中食通信:売れてるご当地デリカ惣菜弁当100選(13)埼玉県 みどりスーパー

“森スギ”シリーズで人気の「そこらへんの草こえて森スギポテト」(340円・税込み)は、「普通量の商品も欲しい、とよく言われるのですが“たっぷり”だから良い。この分量は譲れない(笑)」(みどり部長)という。

そこらへんのプリンパン 264円(税込み)/132g そこらへんのプリプリケツぷりんパン 372円(税込み)/120g そこらへんのみたらし団子クリームパン 172円(税込み)/103g POINT:ユーモラスなおやつパンのビジュアルは強い

ドンねぎとろ 648円(税込み)/331g POINT:真一文字に美しく引いたイクラで商品価値3倍増 ぶり大根 648円(税込み)/277g POINT:同店では「家で作るのは面倒だけど、でも食べたい」惣菜を追求
◆独創性光る“ミュージアムなスーパー” 「面白くておいしい惣菜」で観光スポットに
個性的な惣菜がSNSで話題を呼んだのを機に人気が爆発し、週末には全国から観光目的で足を運ぶ人も多いという異色のスーパーが、埼玉県の「みどりスーパー」だ。1972年の創業当時は惣菜を手がけておらず、生鮮、加工食品を主に販売していた。時代と共に付近に大型スーパーやコンビニ、ドラッグストアの出店が増えたのを受け、2010年に惣菜販売をスタート。惣菜部門の立ち上げは食品スーパーの中では後発になるが、2020年に「春日部ぷりんパン」が大ヒットし、同店の惣菜が人気を呼ぶようになった。さらにその翌年に発売し、SNSでバズッたのが「そこらへんの草天ぷら」。遊び心あるネーミングだけでなくオリジナル惣菜としての完成度も高く、メディアに数多く取り上げられたことで、「みどりスーパーの独創的惣菜」の評判が全国的に広まった。現在では、同じ市内にある観光スポット「首都圏外郭放水路」のツアーで立ち寄るコースにも組み込まれているのだ。
惣菜の商品開発を一手に担っているのは、創業者の長女で店名そのままの“みどりさん”こと惣菜部・河内みどり部長だ。同店の惣菜商品は常時約30アイテムを並べているが、何といってもみどり部長考案のユニーク過ぎるセンスが持ち味。商品開発に当たっては「見た目のインパクトとネーミング」を重視し、「『見て食べてハッピーになる惣菜』を目指している。うちの惣菜を見て笑い、たっぷり食べてハッピーになってほしい」と、みどり部長。その上で、「とはいえ、ただ面白いだけじゃない。地産地消で地場の食材をなるべく使うようにし、おいしさにはこだわっている」と言う。
ユニークな惣菜を起爆剤に注目を集めたが、一過性のブームで終わらせず、日常的な惣菜として人気が定着した「みどりスーパーの独創的惣菜」の底力を探った。
◆あの迷台詞から爆誕!「そこらへんの草」シリーズ増殖中
2019年に公開された埼玉県を愛を込めてディスる映画「翔んで埼玉」に出てくる迷台詞「埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ!」。これにちなみ、21年のエイプリルフールに「そこらへんの草天ぷら」を発売したところSNSで拡散され、人気が爆発した。「エイプリルフールに何か仕掛けたい、と考えていた時に、近隣に住む農家のおじさんが明日葉を持ってきてくれたのがきっかけ」(みどり部長)という。当初はエイプリルフール企画の単発商品だったが、大きな話題になったことで「そこらへんの」と冠を付けた楽しい惣菜が続々と誕生。「そこらへんの草」から拡大したシリーズなだけに、野菜が摂れる惣菜が多いのも特徴だ。
●「そこらへんの草天丼」 334円(税込み)
POINT:ネーミングの破壊力だけじゃない「野菜だけ天ぷら」の吸引力
「そこらへんの草天ぷら」を天丼に仕上げた。埼玉県では年間を通じて良質のケールが採れることからケールをメインに、フキノトウ、大根、ニンジン、ナスなど、埼玉県産の季節の野菜を使用。「天ぷらにすると何でも大概はおいしい」とのみどり部長の力強い言葉通り、そのおいしさと現代の健康志向からも同店ナンバーワンの人気商品になっている。
●「そこらへんの草こえて森スギイカマリネ」 540円(税込み)
POINT:「イカマリネ」でありながら野菜も主役
「そこらへんの草」が進化した“森スギ”シリーズも人気が高い。同品は確かに「イカマリネ」としては野菜が多い=森スギ(盛り過ぎ)。「家で作るのは面倒だけど、でも食べたい」「少しずついろいろ楽しめる」というのも同店の惣菜の特徴とか。
●「そこらへんのくさんが焼き」 421円(税込み)
POINT:商品名に違わず“草(野菜)”も入っているのがうれしい
埼玉愛にあふれつつ、すぐお隣に位置している千葉県とのコラボ商品も数多い。同品は、アジのなめろうを焼いた千葉県の郷土料理「さんが焼き」。“そこらへんの草”との単なる語呂合わせで「くさんが焼き」という商品名にしたのではなくケールを混ぜ込んだ辺り、野菜に対するこだわりが感じられる。
●「そこらへんのクサーリックシュリンプ」 324円(税込み)
POINT:ハワイアンフードも地元産野菜を合わせると、愛すべき“みどりスーパーの惣菜”テイストに
ガーリックシュリンプを“そこらへんの草”アレンジした一品。ジェノベーゼで調味したしゃれた一品で、ほかの惣菜と比べて異色の印象だが、「埼玉県には海がないから、みんなハワイが好き」と言い切るみどり部長が商品開発。地元産のニンジン、ゴボウを合わせている点が同店らしい。
◆「みどり」らしさ全開“攻めてる”人気商品
商品名のユニークさだけでなく、ひとひねりの遊び心を加えた商品が多い同店。「ナンバー1の惣菜ではなく、うちでしか食べられない“オンリーワンのおいしさ”を目指している」(みどり部長)と、攻めた商品開発をする姿勢が、数々の“面白くておいしい惣菜”を作り上げている。
●「伝説のキングカツ」 421円(税込み)
POINT:厚みよりも面の大きさに振り切ったカツ
人気ナンバー2の商品。大判の鶏胸肉1枚を丸ごと揚げており、鶏肉の個体差で大きさは微妙に異なるが、どれも二度見してしまうほどの巨大サイズ。ネーミングは「踊りたくなるような大きさとおいしさ」と、“キングカズ”にかけている。
●「そこらへんのプリンパン」 264円(税込み)
POINT:ユーモラスなおやつパンのビジュアルは強い
同店の惣菜が評判を呼ぶきっかけとなった「春日部ぷりんパン」をリニューアル。クロワッサンに大盛りホイップクリームとプリンを丸ごと挟んでおり、喫茶店のプリン・ア・ラ・モードを彷彿とさせるレトロ感が好ましい。
●「そこらへんのプリプリケツぷりんパン」 372円(税込み)
人気ナンバー3の「そこらへんのプリンパン」をさらに進化させ、地元の人気キャラ「クレヨンしんちゃん」のイメージをプラスしたという。お尻風プリンは、ゼラチンを混ぜ、専用の型で仕上げた自家製。プリンの下にはう〇こならぬアンコを詰めており、どこまでも芸が細かい。
●「そこらへんのみたらし団子クリームパン」 172円(税込み)
みたらし団子単品でもクリームパンだけでも「ちょっとさびしい」と考案したという。「コッペパンの長さにちょうどビシッと入ったから」との理由で躊躇なく商品化したその決断力があっぱれ!
●「そこらへんの赤い彗星ハンバーグ」 340円(税込み)
POINT:小サイズ2個を盛り合わせているのがシェアもしやすくて秀逸。無骨な形状も手作り感がある
かつて付近にあった肉屋の主人・赤尾氏が急逝し、店を閉めることに。その肉屋の存在をいつまでも人々の中に残したいと考え、同店のメンチカツのレシピを伝授してもらい商品開発した。赤尾氏の名前とみどり部長が好きな機動戦士ガンダムの「赤い彗星」にちなんで「『赤い彗星』という商品名にしたかったので、トマトソースのハンバーグにした」(みどり部長)という。地元の縁を大事にするみどりスーパーらしいエピソードが秘められた一品だ。
◆毎朝仕入れる鮮魚が自慢 海鮮惣菜のレベル高し!
「みどりスーパー」の鮮魚は評判が高い。「海のない県だからこそ、お客さんにはおいしい魚を食べてもらいたい」と、35年間にわたって鮮魚の仕入れを担当してきた現社長の目利きで、市場から新鮮そのものの海鮮を毎朝仕入れて売り場に並べている。その目利きの確かさから、鮮魚売り場は同店の看板部門になっているのだ。当然、評判の鮮魚を使って作る海鮮惣菜もおいしくないわけがない。
ちなみに同店は食品スーパーでは珍しく、市場が休みの日曜日を定休日に設定している。そうした点にも、仕入れ食材にこだわる姿勢が垣間見える。
●「そこらへんのシーフー丼」 648円(税込み)
POINT:鮮魚部門が強いスーパーだからこそのこのコスパ!
毎朝仕入れる鮮魚を盛り合わせた海鮮丼。ネタはその日の仕入れによって異なるが、新鮮な海鮮が少しずつぎっしり並んでこの価格は驚きだ。「この地域にもはや寿司屋はいらない」といっても過言ではない人気商品。
●「ドンねぎとろ」 648円(税込み)
POINT:真一文字に美しく引いたイクラで商品価値3倍増
市場から仕入れたマグロ3種を店でブレンドして作る完全自家製のネギトロ。
●「ぶり大根」 648円(税込み)
POINT:同店では「家で作るのは面倒だけど、でも食べたい」惣菜を追求
同店の惣菜商品はすべて店内調理。身がしっかり詰まった大きなブリの切り身2つとうまみがしっかり染みた大根の煮物は、家庭で作る手作りの味そのまま。
◆地元の小学生のお楽しみ
中身は謎!日替わり「0円」アラ汁
同店の名物となっているのが、無料でふるまわれる「本日の謎汁」だ。魚を店内でさばいた後に残るあらを使ったあら汁で、お客が味見をして中身を当てる趣向だ。正解は横のキューピー人形の腹巻に隠されている。取材当日の中身は「カニ」。そのほか、鯛、ヒラメなど、中身は日替わり。付近の小学生にも大人気で、「今日、何だった?」と放課後の楽しみになっているようだ。
◆人気惣菜トップ5
1位 「そこらへんの草天丼」334円(100品)
2位 「伝説のキングカツ」421円(30品)
3位 「そこらへんのプリンパン」264円(20品)
4位 「そこらへんのシーフー丼」648円(20品)
5位 「赤玉」(赤飯)133円(20品)
価格は税込み(平均日販数)
※重さは編集部で実測したおよその数字(容器込み)です
◆店舗情報
「みどりスーパー」(埼玉県) 惣菜売上比率15%
社名=(株)みどり/店舗所在地=埼玉県春日部市米島1133番地10/創業=1972年/売り場面積=93坪/年間売上高=2億3800万円/従業員数=30名(パート、アルバイト含む)